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ニュース〜医療の今がわかる

和賀井敏夫・順天堂大学名誉教授インタビュー 

――非常に勇気付けられるお話をありがとうございました。大変ご苦労されたとは思うのですが、一方で先生のころは、医師の努力と患者の利益とが一致する幸せな時代だったのかなとも思います。私、『ロハス・メディカル』という雑誌を発行しているものですから、最近の医療不信についてぜひご意見を伺いたいと思います。

 私自身もその元凶ではありますが、今の医療は高度機器で武装されていますよね。私が入局した当時は、今に比べれば素手で立ち向かっていたようなものです。一方の患者さんも、メディアやインターネットを通じて様々な医療知識を得ることができます。どう考えても我々のころより状況が良い。なのに、医療への不満は今の方が大きいですね。

  "素手"で医療をやる時代がどれだけ大変だったか、医師も患者も分かっていないからでないかという気がします。医師について言えば、私の時代は、たとえば「がん」イコール死刑宣告でしたから、真実を教えないことしか治療手段がないなんてことがよくあったのです。真実を隠し通すのが、どれだけ大変なことか。そして、治療手段がないだけに、本当に患者さんやご家族と一緒になって、とにかくよく話をしましたよ。今は「ムンテラはインチキで、インフォームドコンセントが正しい」なんて言いますけど、画一的なマニュアル医療になってやしないでしょうか。それでは患者さんや家族が誤解するのもある意味仕方ないので、とにかく相手に分かってもらうムンテラこそ医療の基本だと思います。

――マニュアルに頼るのは訴訟対策の面もあると思うのですが。

 確かに、医師は組織で働いていながら個人の責任を問われる特殊な職業で、誰も守ってくれないので、守りを固める必要はあります。訴訟の多い米国の場合、たとえ医師免許を停止されても一生棒に振るようなことはないそうですが、日本では何か起きたら一生台無しになりますので、より守りの傾向が強くなるのは仕方ないかもしれません。ただ、マニュアルが絶対視される医療が果たして理想的なのかは問われていると思います。

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