文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

医療事故調検討会1

曰く、
「まず中立的第三者機関を作れば良いという話ではない。作った後が問題で、何をすれば良いのか指針を与える必要がある。その際に二つのバランスが必要と考える。一つ目の大きなバランスは以下のようなことである。私が考える機関の目的は、1、責任の追及、2、被害の救済、3、再発防止・今後の医療向上であるが、3つのうち前2者は過去に目を向けるものであり、3つめは将来に向けての話である。そして機関が果たすべき役割の「真相究明」というのも、過去に目を向けるか、将来に目を向けるかで方法論あるいは言葉の意味さえ変わってしまう。

つまり、将来に目を向けた場合の『真相』は、『今考えればこういうことが可能だ』となるだろうし、過去に目を向けた場合の『真相』は、『その時点でその立場の人であったらこうなる』になる。厚生労働省において行われてきたモデル事業というのは将来に目を向けた話であったと私は理解している。しかし、この検討会で立ち上げる第三者機関というのは、過去と将来のどちらかだけ目標とすれば良いというものではなく両方のバランスを取らなければならない。しかし、この大きなバランスを取るのは容易なことではなく、機関を作ってしまってから考えなさいと言ってできることでもない。

さらにもう一つの小さなバランスは責任追及の手法についてである。責任追及には、刑事、民事による損害賠償請求、行政処分があり、この3つの方法でうまくバランスを取る必要があるのだが、わが国においては、どの分野でも、このバランスは取れていない。世界的に見てもバランスの取れている国は少ない。このバランスを取るのも至難のわざである。この大小二つのバランスの取り方について、検討会で指針を与えてあげる必要がある」

 ちょっと長かったかもしれない。しかしモヤモヤがスッキリとしたのではないだろうか。すかさず前田座長が
「過去と将来のどちらかでなく両方必要だが、 その両方を一つの組織で全部カバーすることはできないので、 刑事システムなど他のシステムとの並存は検討しなければならない。いずれにしても、中立的第三者機関が欠けているという点には異論がないということでよろしいですね」
と議論を引き取って、元の議題へと戻そうとする。

 本当に両方のバランスを取ることが必要なのか、片方だけではいけないのか、そこも議論した方が良いとは思うのだが、ここからはずっと樋口委員の意見をベースに議論が進んでいく。

 境秀人・神奈川県病院事業庁長
「一連のことを全て一つの機関で処理するのは、スペクトラムが広すぎると感じている。何が起きたか明らかにするのが第一であり、その際、古典的解剖で原因解明できるとは限らず、CPC的解析が行われる必要もある」。

 次に木下勝之・日本医師会常任理事が続いたのだが、これは正直いただけなかった。
「現場の医療サイドから求められているニーズは、医療関連死が刑事事件として扱われることに対する歯止めであり、この点について第三者機関に考えていただきたい」
医療関連死を刑事事件に問うことが何を惹き起こすのか説明せず、こんなことだけ言えば、やはり医師会は医師の特権を守ろうとしている組織でしかないと国民から見られても文句は言えない。

 前田座長からも
「気持ちは分かるし、制度ができることによって、医師が安心して踏み出せるというのも大事ではあるが、国民の側から、医師が自分たちの聖域を作ろうとしているように見えたらうまくない」
と、やんわりたしなめられてしまった。

 1  | 2 |  3  |  4 
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス