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ニュース〜医療の今がわかる

どうなる医療事故調

東京保険医新聞の09年2月25日号に寄稿し、その後、長崎保険医新聞の09年4月号に転載されたもの。医師向けの文章なので若干難解な部分もあるかもしれないが、ほぼそのまま転載する。経過をお知りになりたい方は、医療事故調に関する厚生労働省検討会の傍聴記を漏らさず掲載し続けてきた(記事下方の関連記事参照)ので、それも併せてお読みいただきたい。(川口恭)

 国レベルで何かが決まっていく時には、制度論・法律論といった「理」の部分を考察するほかに、政治状況や社会情勢といった「情」の部分を感じておくことが欠かせない。いわゆる医療事故調問題もそうである。
 現在、議論は錯綜して深刻な対立が解きほぐれないまま止まっており、理屈のうえでは、かなり話を戻したうえで議論をやり直した方がよさそうだ。しかし、この状況を情の面から見れば、今の静けさは束の間のことに過ぎず、きっかけ次第で一気に流れの進む可能性もある。
 
 事故調設置の動きは、2006年度から2007年度にかけて13回も厚生労働省検討会が行われ、08年度に入ってすぐ第三次試案と法案大綱案が出てきた。舞台は行政の場から政治の場へと移ったのであり、民主党も対案も用意したので、本来ならば秋の臨時国会あたりに国会提出され、しかし両院の調整がつかず廃案になっていたはずだった。途中8月20日には、医療側が設置へ前のめりになるきっかけとなった福島県立大野病院事件に一審無罪判決が出て、後に確定している。何が何でも話をまとめねばならないという医療側の推進力は失われ、国会を通る可能性は百に一つもなかった。この経過を辿っていれば、「国会審議を経た」という言い訳が立って、情の面から見ても話を戻して議論し直すことが可能だった。

 ところが不幸なことに、福田内閣が9月に突然退陣し、いつ総選挙になってもおかしくない状況になったため、結果として法案は提出されずそのまま残った。大綱案が依然として生きていることは、厚労省が唐突に10月から12月にかけて検討会を4回追加で開き、地方説明会なるものを全国で行ったことからも分かる。要するに総選挙の結果待ちになっている。

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