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ニュース〜医療の今がわかる

どうなる医療事故調


 そんな訳の分からない話になるならば、チャブ台を引っくり返してしまえという勇ましい意見もありそうだ。大野病院事件を経て、警察・検察もかつてのようには傍若無人に医療に踏み込んでくることはなくなった。だったら、慌てて事故調を作らなくてもよいのでないか、と。かく言う私も個人的には、まずは現行法制をベースに、その運用を皆できちんと監視していく方が合理的だと思っている。

 しかし、そうは問屋が卸さない。今回の法制化の動きが、日本医学会傘下主要19学会による共同声明を受け、厚労省が一肌脱いで始まったという形になっていることを忘れてはならない。このような声明を出すこと自体、医療界が自ら社会に向きあわず対応を官僚に丸投げした非常に横着なことと思う。しかし、それは未だに生きている。声明を撤回して、関与した学会トップが総退陣するのでもない限り、医療界はそんなものを頼んでいないなどという虫のいい話は通らない。
 医療界は、事故調の成立とその円滑な運営とに協力する責任がある。

 もし大綱案が通ったら困ると思っているのならば、この猶予期間の間に、どうしても譲れない点は何なのか医療界の中でコンセンサスを固めて、大綱案から切り分けておく必要はあるだろう。

 医療事故調の議論が錯綜している原因を突き詰めれば、同時に満たすことのできない複数の目標を1つの委員会で実現しようとしていることに行きつく。その目的は、井上清成弁護士によれば、患者遺族側の精神的側面と経済的側面、医療者側の過去を清算する側面と将来を志向する側面の4つに大別できる。
 この中のどの目的に沿った事故調ならば認めるのか、運営に協力するのか、今のうちに考えておいた方がよい。

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