保健師に必要な能力は「コミュニケーションスキル」
■「統合カリキュラムに満足」
2回目を迎えた同日の会合では、保健師の教育にテーマを絞ってヒアリングを実施した。大学での保健師教育をめぐっては、実習を受け入れる保健所が不足していることや、保健師に特化した教育体制が不十分であることなどが指摘されている。日看協の坂本委員ほか、「4+2」を主張する委員らにとっては、「実習受け入れの困難さ」が重要な攻めどころになる。
同日のヒアリングで最初に意見を述べた大阪府健康福祉部の森岡幸子氏は、資料として「保健師教育における臨地実習学生数の推移」を提示した。
森岡氏は、2008年に446人だった学生数が2013年に1073人に倍増するとの見通しを示した上で、「保健師教育としての実習は既に制度的に破綻(はたん)している」と述べ、日看協委員らの期待に見事に応えた。質疑では、森岡氏に対して厳しい質問はなかった。
これに対し、「統合カリキュラム廃止派」の委員から集中砲火を浴びたのは若手保健師の桑畠麻未氏。大学の「統合カリキュラム」で学んだ経験から、現在の「統合カリキュラム」を批判することが期待されたが、桑畠氏は、「自分自身が受けた(統合)カリキュラムは、『この辺はもっと学びたかったな』というところはあるが、トータルなバランスとしては満足がいくもので、とても感謝する教育を受けられたと思っている」と評価した。
桑畠氏は大学を卒業後、東京都江東区の城東保健相談所に入職し、今年4月で5年目に入った。江東区は、東京都の東部に位置する人口約43万人の地域で、マンション開発が進む地域と、古くからの住民が多い下町地域が混在している。
開発地域では、出産を控えた妊婦の健診など「母子保健」が多く、下町では「精神保健」が中心。担当地域は下町エリアの城東で、結核や難病など継続的な支援が必要な住民が多いという。
問題となっている実習先の受け入れについて、桑畠氏は「大学時代に実習で企業に行けたことが現在の仕事に生かせている」と振り返り、企業で実習した経験を次のように語った。
「視野を広げる意味では、『保健師がいるからここ(保健所など)』ではない。他の企業に学生が出向いて、どんな人がどういう考えで、どのような健康問題を持っているのかという『気づき』が大切。どのようなコミュニケーションがあればその人に受け入れてもらえるのか、大学でもっと体験的な学習ができればより良かった。地域に出るといろんな職業がある。『この職業は何だろう』というところから入るので、バックグラウンドを持った人たちとの接点を持てるといい」
桑畠氏はさらに、大学と行政、教育機関らの連携によって保健師を育成していく必要性なども語った。委員の関心が強い「大学に望むこと」の項では、「とても大きなテーマなので、すぐに答えが出せない」と明確な回答を避けながらも、地域の保健師が大学に出向いて、学生に仕事内容を伝える機会をつくる必要性を指摘。
学生と地域の保健師が交流すれば、「こんなはずではなかった」いう思いを持つことは少なくなるとして、「大学で研究の手法を学んだのに研究活動の機会がないため、学んだことを生かせていない。大学に学びにいく機会を増やしてほしい」と求めた。
保健師に求められる能力としては、人の話を聴く能力や、さまざまな健康課題を抱える人たちとの「コミュニケーションスキル」を挙げた。