保健師に必要な能力は「コミュニケーションスキル」
■「保健師に特化した教育が必要」
桑畠氏の報告に対し、村嶋幸代委員(東京大学医学系研究科教授)は「企業で実習すればいいといっても、産業保健師が活躍している企業でなければ駄目で、そういう企業は少ない」とちくり。コミュニケーション能力については、「実習だけで磨かれる訳ではなく、日ごろの生活の中で磨かれるものなので、ボランティアに行けるようなゆとりが大学になければいけない」と述べ、大学の過密カリキュラムを問題視した。
その上で、「分析力を持つというのは、(卒後の)修士課程の能力がないと(4年の)学部教育では無理。やはり保健師に特化した教育が必要で、特化した教育をすると志向性を持つ人が集まるから効率的に教育を行うことができる」とした。
村嶋委員はまた、看護師と保健師の役割の違いに触れながら、現在の仕組みのままでは「国民が被害をこうむる」として、次のように述べた。
「看護師は目の前でケアしてくれるから、その人が悪ければ文句が言える。だけど、保健師は一人ひとりが目に見える訳ではなく、個別にケアした何人かを見て政策化する。政策化できない保健師がいたら、その地域の住民は非常な被害をこうむる。国民の立場からは、質の高い保健師が必要で、それには絶対、『積み上げ』の教育が必要だ」
さらに、桑畠氏の報告について「保健師全体の業務だけではなく、自分が保健師として実施できたこと、自分の専門性をどう獲得したのか、その中身などをぜひ出していただきたかったな」と注文を付け、「自分の成果をどう見せるか、それは保健師が悩んでいるところだが、やはりそういう成果をきちっと出せるようにして、自分の仕事をアピールできるような形で報告していただきたかった」と皮肉った。
これに対し、小山眞理子委員(神奈川県立保健福祉大教授)は、桑畠氏が大学4年間の教育の中で主体的に地域に出て学んだ姿勢などを高く評価した。傍聴席からも桑畠氏の報告を誉める声があり、会議終了後に桑畠氏の席に駆け寄る報道関係者の姿もあった。