新人看護師、「辞めてもいい」―日看協副会長
新人看護職員の卒後研修制度の創設に向け、本格的な議論を開始した厚生労働省の検討会で、日本看護協会の坂本すが副会長は「自分の病院に引き留めておくことが一番いいことか」などと述べ、看護師の養成が一つの病院で完結しないことを強調。さまざまな病院を転々とする中でキャリアを身に付ける"循環型"の養成システムを提案した。(新井裕充)
「一人で注射ができない」など、免許を取得したばかりの新人看護師の技術不足が懸念される中、厚生労働省は4月30日、「新人看護職員研修に関する検討会」(座長=石垣靖子・北海道医療大看護福祉学部教授)の初会合を開いた。
同日の会合で厚労省は、「新卒看護師の『看護基本技術』に関する実態調査」(2002年、日本看護協会)や「新卒看護職員の早期離職等実態調査」(2004年、同)などを示しながら、免許取得前の看護基礎教育の内容と、免許取得後に臨床現場で求められる能力との間にギャップがあり、これが新人看護職員の離職原因になっていることを強調した。
その上で、「新人看護研修ガイドラインの素案(たたき台)」を示し、統一的なガイドラインの策定に向けて意見を求めた。
意見交換では、「離職率」の意味を問う意見のほか、統一的なガイドラインを策定する目的に「離職防止」が挙げられていることなど、新人看護師の「離職」に関心が集まった。
北村聖委員(東京大医学教育国際協力センター教授)は、「離職率の定義は何か。全産業に比べて看護師は離職しにくいと考えるのか、あるいは全職種に比べて新人が離職しにくいと考えるのか」と質問。
海辺陽子委員(癌と共に生きる会副会長)は「そもそも(同検討会の)最終的な目標をどこに置くのか。新人看護職員の質の均一化なのか、離職の防止か」と尋ねた。
これに対して、厚労省の担当者は「新人看護職員の離職は『多い多い』と言われていても、全産業に比べれば低いが、それでも全体では1割強、新人では1年以内に1割近い看護師が辞めているのは多い数ではないか」と指摘し、「新人看護職員研修の制度化・義務化」「ガイドラインの策定」などが同検討会の目的であることを改めて強調した。
同日の会合では、「医療安全」や「医療事故の防止」といった言葉は一度も出なかった。
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