「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会」第3回―文科省
看護系大学の教育カリキュラムの見直しに向け、文部科学省は5月11日、「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会」(座長=中山洋子・福島県立医科大看護学部長)の第3回会合を開催した。(新井裕充)
この検討会は、保健師、助産師、看護師の3職種の免許取得に必要な教育を大学4年間で行う「統合カリキュラム」の見直しなどについて話し合うため、今年3月31日に設置された。
3回目を迎えた同日の議題は「統合化したカリキュラムに関する有識者ヒアリング」と、「統合化したカリキュラムに関する意見交換」の2点。
ヒアリングでは、平澤美恵子委員(日本赤十字看護大教授)が助産師教育について、村嶋幸代委員(東京大医学系研究科教授)が保健師教育について、南裕子・近大姫路大学長(国際看護師協会長)が今後の看護学教育の在り方について意見を述べた。
平澤委員は、文科省の「平成20年度大学評価研究委託事業」として特定非営利活動法人・日本助産評価機構が実施した「助産分野における就職3年未満の実践能力評価―大学院修士課程と大学課程の比較―」と題する資料を提出。
学部卒業生と比較した大学院修了生の特徴として、▽旺盛(おうせい)な探究心▽助産という仕事への専心▽調整し焦点化する力▽職業人としての人間関係スキル―を挙げた。
村嶋委員は、「保健師教育課程修了時の到達度からみた看護系大学統合カリキュラムの問題点」と題する資料を提示。「保健師に特化して教育する課程が必要である」と主張した。
その根拠となる資料として、大学の「統合カリキュラム」で学んだ保健師と、「積み上げ1年課程」で学んだ保健師を比較した調査結果を示した上で、「積み上げ1年課程」の方が優れているとした。
ただ、村嶋委員が示した「積み上げ1年課程」とは、3年制の養成学校などを修了した後の1年であり、「4」と「3+1」とを比べたものだった。このため、調査の基礎となるデータについて他の委員から疑問の声が上がった。
一方、南裕子・近大姫路大学長は「国際的動向および教育経験からみた看護学教育への私見」として、▽看護教育から看護学教育への移行の背景▽世界の看護教育の動向▽看護学教育の構造▽教育と実践の狭間―などについて意見を述べた。
意見交換では、6月末の取りまとめに向け、「保健師助産師看護師法」の見直しも視野に入れて議論することを確認。「統合カリキュラム」の見直しに関連する今後の課題としては、看護師免許などを取得できる時期の問題についても検討することや、看護職をめぐる将来的なグランドデザインを描く必要性を指摘する意見などが出された。
文科省は次回5月25日の会合で、6月末にまとめる「一次報告」のたたき台を示す予定。
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