PMDA(医薬品医療機器総合機構)の不思議-(番外編)PMDAで働く人たち
ここまではPMDAに関する「不思議」をお届けしてきたが、PMDAの中で働く人たちまでもが不思議というわけではない。「患者さんの役に立ちたい」という思いを熱く語るスタッフだ。
健康被害救済部 佐藤絵美さん
PMDAスタッフというと医師や薬剤師、統計学者など理系卒が多いイメージがあるが、佐藤絵美さん(24)は文系の4年制大学卒。まだ働き始めて5か月という若手だ。
大学の卒業論文で終末期医療をテーマに扱い、学生時代から医療に興味があった。PMDAに入ったきっかけは、大学で求人を見て「人の役に立てるかもしれないと思った」。
佐藤さんが働くのは、PMDA組織の大本になる業務を担う「健康被害救済部」。医薬品の副作用などで疾病や障害を負った患者に、医療費や障害年金などを支給している。佐藤さんたちが医師の診断書や給付申請書などの書類を整え、厚労省に提出する。厚労省が支給を決定すれば、患者は給付を受けられる。
救済部には給付を申請する患者からの問い合わせの電話が、一日に20件ほどかかってくる。書類記入の問い合わせや申請書の請求などが多いという。
「最初に医師の診断書を見たとき、副作用でこんなに重症になることがあるのかと思った」と、働き始めた当時の驚きを話す。
厚労省が不支給を決定した時に、理由を問う電話もかかってくる。「電話の向こうで患者さんがつらい気持ちになっている。給付を受けてもらいたいと思うけど、PMDAでできることにも限界がある。不支給だからといって、患者さんを『切る』ようなことになってはならないと思う」。行政と患者との板挟みでのジレンマにつらくなることもある。
また、C型肝炎など、社会的にスポットが当たっている副作用被害以外の重篤な副作用も漏れなく救えるような制度になってほしいとの思いを語る。
「医師の中には被害救済制度についてよく知らない方もいて、制度にたどりつくまでに苦労している患者さんがいるという話も聞く。被害を受けた患者さんが泣き寝入りするようなことがあってはいけないと思うので、PMDAは患者さんが真っ先に頼れるような組織になるといい」
今後、被害救済制度が国民に伝わっていくようになるには、「医療機関で制度について説明する機会があるといい」と提案する。また、自身の今後については、「まだ副作用の病名がピンと来ないので、もっと病気について勉強していきたい。患者さんの気持ちをこれからも聞いていくことができたら」と語っている。