救命センターの評価項目が厳格化
救命救急センターへの補助金の額を左右する国の評価項目が来年度から厳格化される。相次ぐ救急受け入れ不能に対応するためとの名目だが、現場から「これでは救命センターを返上せざるを得ない」との声が上がっている。(熊田梨恵)
救命救急センターは毎年、患者の受け入れ態勢を評価する「充実段階評価」を受けている。専任医師数や受け入れた患者の数などで点数を付け、センターをAからCの3段階にランク分けするものだ。Aランクの場合は、診療報酬の「救命救急入院料」が1日1床あたり500点加算される。B、Cだと補助金額がそれぞれ10%、20%減額される。
1999年度に制度が開始した当時は約6割のセンターがAランクだったが、2006年度以降はすべての医療機関がAランクを取得している。厚労省は国内で相次いだ救急受け入れ不能の問題などを受け、すべてのセンターがAランクとなる評価項目は実態に見合っていないとして、項目の見直しを検討。3月末に、評価基準を新しく設定する旨の通知を都道府県に出した。
実際に新しい基準による評価が始まるのは来年度からで、今年度分の実績が評価対象になる。このため、各センターはこの4月から各項目に関連するデータを取り始めている。現在、国内にある救命救急センターは218か所。
評価項目は従来から13項目増え、37項目になった。項目の内容は、▽専任医師数や医療事故防止対応など、救命センターとしての機能▽各科間の連携体制、手術室や医療機器設備など診療機能▽医療職の労働環境▽医療機能評価取得状況、院内会議開催状況、患者の年間受け入れ数など救急施設としての態勢▽救急医療情報システムへの関与など都道府県からの評価項目▽救急救命士や研修医の受け入れ状況―などに大きく分けられる。
しかし、救急医療現場からはこの評価項目に対する苦渋の声が聞こえてくる。
■各診療科、「常時勤務」は困難
年間約1万6000件の救急患者を受け入れる新潟医療圏の3次救急、新潟市民病院(新潟市、660床)の廣瀬保夫救命救急センター長は、「当院のように大学病院でない病院の場合は、脳神経外科医や整形外科医などが院内で常時勤務している体制というのは、オンコールなら対応できるが、なかなか難しい」と話す。
新しい評価項目の特徴は、それぞれの項目ついて、基準を満たしている場合は評価できる項目として定められた点数を加点していき、満たしていない場合はその項目を「是正を要する項目」として、こちらも定められた点数を加点していくという方法になったこと。つまり、プラスとマイナスの評価点数をそれぞれ出すということだ。
ランクはマイナス評価の「是正を要する項目」の合計点で分けられる。2年続いて22点以上になればBランク、3年続けばCランクになる。
ただ、基準を満たさなくてもプラス評価の加点がないだけで、マイナス評価の加点は発生しない項目が21と過半数だ。マイナス評価の加点が発生するのは、「専任医師数」「疾病の種類によらない受け入れ」「医師の負担軽減に資する計画の策定」など16項目。このほか、廣瀬医師が挙げているように、各診療科の医師が院内に常時勤務して患者に対応できる体制を整備しているという項目も各科ごとに設定されており、「脳神経医」「循環器医」「整形外科医」を配置していない場合はそれぞれ加点がないか、マイナス評価に5点加算される。