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08年度診療報酬改定の結果の検証―5月20日の中医協総会

2.外来管理加算の意義付けの見直しの影響調査

 ○ 検証部会としての評価

 病院・診療所への調査では、外来管理加算の意義付けの見直しによって、加算を算定した施設数は診療所では内科が増えたものの眼科、耳鼻咽喉科が減少したため全体の算定施設数は減少した。病院では内科を中心に算定施設数は微増した。
 また、病院、診療所における診療内容等について変化が見られたのは2~3割であり、一方で患者への調査では、総じて診療内容に変化があったと感じていないことが伺える。
 しかしながら、病院・診療所への調査で変化が見られた選択肢のうち「患者に説明をより分かりやすく、丁寧に行うようになった」について「あてはまる」という回答が他の診療内容等に関する選択肢と比較してやや多い点については、医師の意識面で患者にとって望ましい変化が見られたことが伺える。
 他方、病院・診療所への調査で「患者一人当たりの診察時間が長くなった」、「診療時間の延長が多くなった」、「患者の待ち時間が長くなった」の選択肢について「あてはまる」旨の回答が比較的多く、施設および患者の負担が増したと考える施設が一定数存在することが分かった。
 時間の目安について、患者の3割強が「時間の目安は必要だ」と回答したのに対し、6割弱が「時間の目安は必要でない」と回答した点については、患者は全体的には時間よりも内容や質を重視していることの現れであると見受けられる。一方、患者の属性によっては「必要だ」が「必要ではない」を上回る、あるいはほぼ拮抗している場合や、逆に「必要ではない」の割合が特に高い場合もある。調査結果の有効回答数の規模に十分留意しつつ、患者の属性や状況に着目する必要があることを示唆している。
 算定要件において、望ましい「懇切丁寧な説明」の内容が具体的に例示されているが、今後の議論の際には、
 ・ 医療側、患者側ともに、「全項目について、診療の都度、懇切丁寧な説明を毎回実施する」ことを10%台しか希望していないことや、
 ・ 例えば施設側では毎回実施するべき項目として「問診」、「身体診療」が多く挙げられているのに対し患者側では通院毎に実施してほしい項目として「症状・状態についての説明」が最も多く挙げられているなど、施設側と患者側で頻度別に見た"行われるべき「懇切丁寧な説明」の内容"が異なっていること、を踏まえるべきである。
 その際には、患者への調査で「自分が求めたとき」に実施してほしい項目こそ、患者のニーズがある項目と考えられるため、特に「算定あり」の患者で「悩みや不安の相談」の割合が比較的高いことに着目すべきである。

 ○ 発言内容の要旨は以下の通り。

[藤原委員]
 外来管理加算の意義付けの見直しについて、診療側として意見を述べたい。
「患者調査」では、診療の変化を感じていないのが9割。時間の目安は、6割弱が「必要でない」と回答している。さらに、丁寧な説明についても、1割台しか求めていない。

 外来管理加算の見直しは、意義のあるものではなかったのではないか。現場には負担感だけを残しながら、意味が薄かったのではないか。「検証部会としての評価」では、外来管理加算の算定回数について触れていないが、今回の外来管理加算の見直しは、診療所から病院への財源委譲のツールにされた。それについて言及がないのは、いささか不自然。

 先般、基本問題小委員会で支払い側は、外来管理加算の影響額の試算について、「若人を除いた数値だ」と指摘した。影響額の試算が日本医師会の試算額と違うのは、試算の対象が違うのではないかと指摘した。これを厚労省も追認した。それを聞いて驚いた。支払い側と厚労省に対し、外来管理加算の見直しによるトータルの影響額について、実際どのように思っていたのかを伺いたい。

[遠藤会長] 
 「検証部会としての評価」の中に、財政的な影響について言及がなかったという趣旨の意見。これは、現在の議論と関係があるので、公益委員の一人として私の意見を申し上げる。

 検証部会の調査では、外来管理加算の過去の算定回数と現在の算定回数を取るような聞き方をしていない。従来、検証部会の調査は、財源影響に言及しなかった。ジェネリックによって、どれぐらい薬剤費が下がるかということを参考事例として出したことはあるが、それ以外はやってこなかった。

 なぜならば、財政的な影響を調べる上で、より精度の高い「社会医療診療行為別調査」があるので、財政的な影響を議論するのならば、「社会医療診療行為別調査」を使うべきだろう。そのような考えから、検証部会では、外来管理加算の見直しによる財政的な影響にはあえて触れていない。

 それから、基本問題小委員会の議論の中で、藤原委員は財政的な影響に非常に注目しているが、一方では、改定の効果を議論する場合、財政的な影響だけを議論してもいいのかという意見がある。中医協としては、その点についての統一がまだ取れていない。従って、調査の中では、財政的な影響について言及していない。それが、私の答え。

 もう1つは、財政効果の母集団。「分母は何だったのか」ということを前回も少し議論した。「若人なのか全体なのか」という話。これは、今の段階で議論するのではなく、いずれ外来管理加算の議論があるので、その時に議論するというのはどうか?

[藤原委員]
 外来管理加算の見直しについては、「しつこい」と思われるぐらい申し上げてきた。外来管理加算の見直しが現場に大きな影響を与えていると聞いているので、私が基本問題小委員会で意見を述べるたび、「検証部会で検証するので」という説明だった。

 しかし、「検証」というものは、懇切丁寧な診療内容の検証はもちろんだが、影響額も含めて検証する。そういう認識でいた。また、外来管理加算の見直しの前後の関係が見えないという説明だが、前回の算定回数と今回の算定回数を比較すれば、おおよその見当は付くはず。それで、あまりにも試算とかけ離れた結果が出てくれば、それはエビデンスに基づいて、「期中での見直しもある」と、総会で言われたように記憶している。従って、総会で議論することはやぶさかではないと考える。

 基本問題小委員会で問題にされた試算240億円について、あまりにも見解が違う。多くの方が、そういう認識ではなかったと思うので、改めて、支払い側と厚労省に対して、ここをきちっと言っていただいて、それを踏まえて、次に議論していい。そこだけは共通の認識にしてほしい。

[遠藤会長] 
 分かりました。総会であれば、全員参加ということもある。ただし、藤原委員はこの場で明確にしてほしいという意見。一方、具体的に、1号側(支払い側)から出た議題でもあるので、1号側の意見も聞きたい。対馬委員、藤原委員の要望について、ここでつまびらかにするというか、「どういう話だったのか」ということを明確にしたいということ、この場で議論したいということだが、ご意見はいかがだろうか。

[対馬忠明委員(健康保険組合連合会専務理事)]
 外来管理加算については、基本問題小委員会で議論してきた。総会でどこまで議論するかということは、また、別途あるんだろう。そこは置いておいて。ただ、藤原委員が「若人を除いた数値」と言ったが、「老人を除いて、若人を対象にして」ということだろうか?

[藤原委員]
 「若人のみ」ということ。

[対馬委員]
 そういうことでよろしいと。少なくとも、対象範囲については、共通の認識の下で議論すべきだというご意見だろう。議論として、「240億円か200億円か」という問題もあるが、仮に240億円だとして、若人について医師会の調査では、400数十億円とか500億円とか、そういう数字ではなかったか。
 
 つまびらかにしはしないが、個別項目ごとに「大体このぐらいだろう」ということに対して、「実際にはどうだったか」ということをきっちり検証したことはあまりない。ただ、平成18年度改定で、コンタクトレンズ等について約1000億円規模を削減するはずだったが、日本眼科医会などの話を聞くと、400億円ぐらいしか下がっていなかったという話はある。

 個別項目の調査については、アンケート的な調査を積み上げていいのかという問題もある。いずれにしても、当初の見込みと多少のばらつきが出てくることはあろう。従って、試算額との違いを取上げて「期中改定」ということにはならない。「減収になった」「200億円と思っていたのに400億円になった、500億円になった」ということで、ここで何度も何度も議論するのはいかがなものか。

[遠藤会長] 
 まとめると、対馬委員は従前から同様のことを言っている。要するに、個別項目の財政的な影響は、過去に議論したことはあるが、個別項目だけを取り上げて議論するのは適切ではない。
 そうなると、全体として、若人なのか、トータルなのかも意味がなくなるので議論する必要はない。そのように理解する。

[藤原委員]
 影響額の結果について言っている訳ではない。試算がそもそもどうだったのかを質問したら、前回は「若人のみで240億円と試算した」という説明だった。これを、支払い側も厚労省も追認したので、「そもそも試算はどうだったのか」ということを質問した。

[遠藤会長] 
 08年度改定の際の議論の進め方の問題。試算は、何を考えていたか。これは、どうしたらいいか。改定のプロセスの話なので、事務局(医療課)に聞いた方がいいだろう。

[保険局医療課・佐藤敏信課長]
 私どもの理解を、総会の場、検証部会の結果の検証の場ということで申し上げる。検証部会の議論と、その前提となる調査そのものには、ある程度の限界がある。基本的には、アンケートを中心にしたものと理解していた。総会の場では、少なくとも検証部会または前提となった調査から得られる範囲内で議論するものだと考えていた。

 一方、この間、いろんな議論があって、検証部会の結果を踏まえてもう少し総合的に議論したいという意見があったことも承知している。前回の基本問題小委員会がそうだったが、検証部会のデータを前倒しに活用して、基本問題小委員会で議論しようということで、前回があった。
 問題提起があれば、基本問題小委員会で議論してもらうのが自然な流れかなと思っていた。そういう意味で、もう一度整理すると、検証部会と調査だけで議論が起きてきて、仮にご質問があるとするなら、私どもとしては、「場所、場面があるのかな」という気がしている。
 
 もう少し先の話をすると、診療報酬というのは、単にアンケートのような調査、あるいは現場の意見だけではなく、もし、財政影響ということになると、やはり「社会医療診療行為別調査」というものによらざるを得ない。いくつかの材料が集まってはじめて、総合的な議論ができる。

 長くなって恐縮だが、「社会医療診療行為別調査」が始まるまで何もしないということではない。早めに検証部会のデータを使いながら、総合的かどうかは別として、もう少し幅の広い踏み込んだ議論にしていただければと思っていた。さらに追加すると、今、この時点で財政的な影響を調べるなら、私どもの信頼できる数字を出すとすれば、メディアス(最近の医療費の動向)のデータがあるが、メディアスには、院内調剤的なものも含まれているので、必ずしも正確なデータかどうかは少し分からない部分がある。

[遠藤会長] 
 藤原委員の意見は、財政的な影響について言いたいことはあるものの、この場では言わないと。平成20年度改定を行った際の議論が、若人だけの医療費を分母としていたのか、それとも全体の医療費を分母としているのかについて、1号側と2号側にずれがあると、実態はどうなのかを聞きたいという意向だった。
 それに対する事務局の回答しては、総会ではなく、別途、基本問題小委員会で議論するのが適切という回答か。あるいは、そもそも個別項目の財政的な影響に関する議論は今までの改定でしてこなかったので、そうすると、対象としている医療費が全体なのか若人なのかという議論は意味がないという回答か。

[佐藤課長]
 事務局があまり踏み込んだことを申し上げてはいけないので婉曲に申したが、議論したいと言うなら、資料も準備する。ただ、今まさにそういう議論があると思ったからこそ、検証部会のデータを早めに使って議論を始めた。
 また、これも事務局が申し上げるのが妥当かどうか分からないが、財政的な影響の話をするのが不適切とも一概には言えない。感想に近いものだが、そう思う。

[藤原委員]
 総会でこれ以上議論するのは、時間のこともあるので言わないが、必ず資料を出して基本問題小委員会でしっかり検討を......。
 「しっかり検討」というよりも、これ、試算だから。そんなに難しい話ではないと思う。中医協の総会でも、原(徳壽)前課長も内容について申し述べているのだから、「違いがあったのではないか」という意味で質問した。そんなに時間はかからないと思うが、総会という場を考え、次の基本問題小委員会で必ず試算について示してもらたい。この件については、これでいい。

[遠藤会長] 
 これは、1号側からも出てきた議論なので、平成20年度改定の時にどういう試算の下で議論したのか。何らかの資料を提出してもらうことについて同意は頂けるか。それとも、その必要はないと考えるか。これは、もともと1号側から出てきた議論だと思う。 

[対馬委員]
 1号側から出た意見というのではなく、実態がそうではなかったのかという話をして事務局に確認をして、事務局が「そうだ」と言ったという話だろう。

[遠藤会長] 
 試算の前提について、2号側と1号側が同じ考え方を持っていなかったということなので、実態がどうなのか私には分からない。もう一度、確認の意味で、どのような試算をしたのかについて資料を出すことは可能か?

[佐藤課長]
 紙にした精緻な資料になるかどうかは別にして、ものの考え方のようなことを示すことはできる。

[遠藤会長] 
 分かった。そのような形で報告してもらう。報告は、基本問題小委員会でお願いしたい。

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