「開業医の立場ではない」 ─ 中医協で日医委員
2010年度の診療報酬改定に向け、中医協・基本問題小委員会(委員長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は8月5日、初・再診料や勤務医の負担軽減など前回改定の答申に加えられた意見(付帯意見)に基づいて、個別項目の検討を開始した。
意見交換で、開業医を中心に組織する日本医師会(唐澤祥人会長)の常任理事を務める藤原淳委員が危険発言。「勤務医が忙しくなっているのか疑問」と述べた。
藤原委員はまず、厚生労働省のデータで「入院外」の医療費伸び率が「入院」よりも大幅に低いことを指摘した上で、「外来管理加算の撤廃」を要求。診療所の経営悪化は、前回改定で「病院勤務医の負担軽減」を目的とした診療所から病院への財源移転に原因があると批判した。
その上で、医師の勤務状況が1年前よりも改善していないとする中医協・検証部会の調査結果を疑問視。医師1人当たりの担当入院患者数が平均10.9人であることや、1か月当たりの当直回数が医師責任者で平均1.61回、医師は平均2.78回などのデータを示し、「これで本当に病院の勤務医師が逃げ出すほど忙しくなっているのか、疑問を感じる」などと述べた。
当然、この発言に西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)が反論。「認識を改めていただければと思う。数字だけで見るのではなくて、疑いがあれば病院を紹介する。実際、現場を見てから発言していただきたい」と語気を強めた。
これに対し、藤原委員は「勤務医に対して私はそれなりに理解しているつもり。開業医の立場で申し上げているわけではございません」などと釈明した。
近年、日本医師会は開業医中心の主張を改め、病院勤務医にも共通するテーマを主軸に論陣を張ってきた。その1つが「外来管理加算」であり、次期改定に向けた議論でも、「診療報酬全体の底上げ」「地域医療の充実」など、診療所のみならず病院も含めた主張を展開している。
これは、「社会保障国民会議」の最終報告(08年11月4日)や財政審(財政制度等審議会)の建議(09年6月3日)などが「「選択と集中」という財源配分の見直しを求める考えを示したことに対する抵抗策と思われる。つまり、開業医を偏重する主張から、「勤務医とともに闘う」という主張への転換を図っている。
こうした中、「勤務医が忙しくなっているのか疑問」という発言は、最近の「勤務医囲い込み路線」をやめて、開業医を利する主張に戻したように思われたが、「開業医の立場で申し上げているわけではございません」と釈明した。これは、日医常任理事の立場としては勤務医の多忙を認めるが、開業医の立場では「忙しいか疑問」という意味だろうか─。
藤原委員の発言について、詳しくは3ページを参照。
【目次】
P2 → 「ご確認いただくという趣旨で準備した」 ─ 厚労省
P3 → 「勤務医が逃げ出すほど忙しくなっているか疑問」 ─ 藤原委員
P4 → 「意図的に簡素・合理化してやっと複雑化を抑制できる」 ─ 対馬委員