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ピンクリボンですら、検診率上がらない

 ピンクリボンのように大成功したキャンペーンですら、がん検診受診率向上にはつながっていない。足りないものがあるからだ−−。22日に開かれた『第4回がんに関する普及啓発懇談会』で、こんな発表が行われた。(川口恭)



 国立がんセンターのチームと一緒に研究を行っているキャンサースキャンという会社の福吉潤・代表取締役が発表した。

 がん対策基本計画では、開始から5年の2011年度までにがん検診受診率5割を達成することが、目標の一つに定められている。しかし、策定直後の07年度は対前年比で上向き傾向だったものの、翌08年度はメタボを主なターゲットとする特定健診の開始もあって、07年度を下回った模様だ。


 どうやったら検診受診率を上げられるかを話し合っている同懇談会では、09年度に盛り返せないと目標達成も危ういとの危機感があり、この日は福吉氏ら4人の参考人を招いた。福吉氏から発せられたのは、目標達成のために何が必要なのか本気で考えずに、メディアによる空中戦や予算のバラ撒きだけで何かを成し遂げた気になっている行政や関係者への強烈な警鐘だった。

 福吉氏は「ピンクリボンの価値を否定するわけではない。意識の向上には大変な貢献があった。しかし意識向上が、そのまま行動につながると勘違いしていないか。例えばピンクリボンでは10月に主な催しが行われるが、その時に受診しようかと思った人が市町村に問い合わせると、『もう今年の分は締め切った』と言われてしまう。そういう所を何とかしないといけない。また、『いつか受けよう』と思うのと『今受けよう』と思うのとでは、全然違う。『今』と思わせるには、現場できっかけ作りも必要」と解説した。

 09年度補正予算には、子宮頸がん検診(20歳から40歳まで5歳刻み)と乳がん検診(40歳から60歳まで5歳刻み)の費用をクーポン券方式で全額助成するための予算216億円が盛り込まれている。検診率を一気にジャンプアップさせるのでないかとの期待感も強い一方で、総選挙との関係もあって恒常的な予算となるか明らかにされていないことから、これを機に医療機関が検診の提供能力を増やそうとはしないのでないかとも見られている。供給能力の上がらないまま申し込みが集中した場合、希望したのに受けられないという人も出ると見られ、長い目で見た時に逆効果にすらなりかねない危険性が浮かび上がった形だ。解説を聴いた懇談会委員からも、実際に作業を行う市町村レベルでの周到な準備が必要との意見が相次いだ。

 現実には財政難にあえぐ自治体も多い。216億円を無駄ガネにしないためには、「障害の排除」や「きっかけの提供」に関して、市町村が上乗せで何か取り組みする費用の助成か仕組みの提供、もしくは受益者となる企業や医療機関、受診対象者によるサポートが必要なようだ。

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