総選挙直前企画 各党の医療政策を聴く④日本共産党
(現状とあるべき姿との間にあるギャップをどのように埋めますか)
「ギャップ」としては、医師数が1つの大きな課題だと思います。それから、安心で安全な医療を実現していく必要があるので、診療報酬を決める仕組みの見直しも必要だと思います。今、診療報酬はどんどん包括化の方向になってきて、1つひとつの医療行為、看護の行為などが評価されない仕組みになってしまっている。1つひとつの仕事が評価される出来高払いの制度という原則を変えてはいけないと思う。
私は、1つひとつの医療行為に対する評価が低すぎると思うんです。日本の診療報酬体系として、検査とか薬、医療機器、医療材料、こうしたものの比重が大きすぎる。私も現場で働いているとき、例えば自分がカテーテルをやる技術料よりも、そのカテーテル1本の値段のほうが数倍高いということがよくあった。そのカテーテルを1本駄目にしてしまったら、これで今日の労働分が全部吹っ飛んでしまうような、ちょっと信じられないような状況がありますよね。そういう意味で、モノなどに重点が置かれ過ぎている今の診療報酬を見直す必要があります。
例えば、看護師さんがベッドサイドに行って話を聴いたり生活指導したり、その他いろいろな看護の行為があります。ベッドサイドに行って患者さんとお話しして足浴してあげて、体も拭いてあげて、患者さん本人はものすごく良かったと思っても、今の診療報酬制度では1円にもならないじゃないですか。
それから、病院の外来で看護師さんが診察などに付き添ってあげて、その後にいろいろな生活指導などをするけれど、そういう外来看護には1円も診療報酬点数が付かないでしょう。やはり、1つひとつの医療や看護の行為をきちんと評価することが必要だと思います。医師のドクターフィーもそうですが、コメディカルも含めた医療従事者の労働が正当に評価されていない。それらを全部含めて、きちんと評価することが必要です。
あと、医療事故の問題。これが現場で働いている人たちへのプレッシャーになっていることは間違いないと思います。日本には、医療事故を解決する仕組みが刑事責任の追及というルートしかないというのが本当に大問題。医療事故を解決するためには、原因をしっかり究明することと、再発防止が何よりも大事だと思います。
もちろん、医療事故の中には犯罪のようなものもあるでしょう。それはそれできちんと警察対応が必要な部分もあるけれど、多くの医療事故というのは意図してやっているわけではない。やはり、システムエラー的な部分があります。そう考えると、警察介入しか解決の道がないというのは改善する必要がある。
われわれは以前から、「第三者機関が必要だ」と言ってきた。政府もようやく重い腰を上げて、医療事故の第三者機関という議論が始まっていますが、今、出されている内容では刑事責任追及に使われる危険性があるので、今のままの提案では駄目だと思います。
原因究明と再発防止は一体だと思いますが、刑事責任追及の材料に連動するような仕組みにはしないことが必要です。刑事責任の追及は別の形でやっていく。もし、医療事故調査委員会の報告書が刑事責任の追及に使われるということになったら、医療側もきちんと情報を提供できなくなります。それでは本当の真相究明にはならなくなると思います。ですから、刑事責任追及への道を遮断したような仕組みで第三者機関をつくっていくことが大事ではないかと思います。
現在、医療事故の第三者機関を厚生労働省の中につくるという提案になっていますが、それではやはり中立性という点に問題があると思う。内閣府に設置する必要があると思います。
しかし、そういう仕組みをつくればすべて解決するかと言うとそうではなくて、医療事故を起こしている最大の原因は人手不足や労働の過密さですよ。外科の先生が当直を明けてそのままオペに入って、オペを何件かやって回診して、48時間連続みたいな実態が原因なわけだから、医療費全体の底上げを同時にやっていかないといけないでしょうね。
つまり、医療費の総枠が少なすぎることが問題です。総枠を全体として拡大する必要がある。でも、病院医療に対して薄いということは誰の目にも明らかです。それは、中医協に日本医師会の代表が入っていること。病院団体の委員も増えているけれど、歴史的に見て、開業医の利益を代表する日本医師会の影響が大きかったことが1つの原因であることは間違いないでしょう。
そこで、もっと診療報酬に病院医療を反映する必要があります。それから、中立的な立場の委員が参加すること。病院団体だけじゃなくて、患者団体などがもっと増える必要があると思うし、職能団体で言うと、例えば日本看護協会とか、そういう団体の人たちがきちんとモノが言えるような仕組みになるように中医協を改革していくことが必要だと思う。
もちろん、国会がすべて診療報酬の点数まで議決しないと決まらないかというと、そうではないと思うけれど、大枠としてどのような医療をやっていくのかということについては、国会で議論するような仕組みが必要だと思います。30兆円超という巨額の税金と社会保険料を使っている、動かしているのだから、そこに国権の最高機関である国会がほとんど関与していないのはやはりおかしいと思う。
細かい点数は中医協で決めていいけれど、これから先の日本の医療で、どこを強める必要があるのかということを国会で議論する必要があります。例えば、病院医療をもっと良くしていくとか、介護難民の問題をどうするのか、そういった議論はもっともっと国会でやったほうがいいと思います。
今、厚生労働省の審議会はいろいろありますが、審議会というのは厚労省が決めて、それにお墨付きを与えるようなものですよ。審議会の中で頑張っている先生がいらっしゃることはもちろん知っていますが、ほとんどの審議会は結論が先にありきで行われていると思います。ですから、診療報酬の大枠、診療報酬改定の基本方針は国会で決める必要があると思います。そうしないと、変わっていかないでしょう。日本共産党のマニフェストには、診療報酬の問題も含めて、私が話した内容が入っていますので、ぜひご覧ください。
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