細菌性髄膜炎予防ワクチンの定期接種化を-子どもたちを守る会が長浜厚労副大臣に要望
患者家族や医療者などでつくる「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」(田中美紀代表)は27日、長浜博行厚生労働副大臣に対し、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌7価ワクチンの定期接種化などを求める要望書を提出した。早期の予防接種法改正を求めるため、一般から集めた約4万7000筆の署名も近日に衆院と参院の両議長へ提出する予定だ。(熊田梨恵)
5歳以下の子どもがかかり、水頭症や発達障害など重度の後遺症を残しやすい細菌性髄膜炎は、脳を包んでいる髄膜が「ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)」や「肺炎球菌」に感染することで発症する。国内患者は推計で年間約1000人おり、このうち約5%が死亡、約25%に後遺症が出る。初期症状がかぜに似ており、小児科医でも早期診断は難しいと言われる。
細菌性髄膜炎はそれぞれのワクチンを接種することで予防でき、WHO(世界保健機関)は定期接種を勧告している。ヒブワクチンは94カ国以上、肺炎球菌ワクチンは38カ国以上でそれぞれ定期接種化されているが、日本では昨年12月からヒブワクチンの販売が始まり、小児用肺炎球菌ワクチンも今年9月に国内承認が決まったばかりという状況だ。
田中代表は自身の子どもが細菌性髄膜炎に罹患したことをきっかけに2006年10月に会を立ち上げ、定期接種化などを求める署名や要望書提出などの活動を行ってきた。今回も早期の予防接種法改正を求めていくため、同日に長浜副大臣への要望書を提出。署名を衆院と参院の両議長に提出するために、国会議員へのアピール活動も行った。
長浜厚労副大臣に渡された要望書の内容は以下の通り
1、速やかにヒブワクチン(アクトヒブ)小児用肺炎球菌7価ワクチン(プレベナー)を予防接種法による定期接種対象に疾患(一類疾病)に位置づけること
2、ワクチンの医学的な必要性の明確化とワクチンの有効性の確認のため、ワクチン関連疾患の原因病原体別発生頻度について全数把握を行うこと
3、感染症対策およびワクチン施策を迅速かつ円滑に行うため、現在のワクチンメーカーと医薬品医療機器総合機構及び外部専門家にるワクチンの審査組織を改善し、小児市中感染症の専門家、ワクチン疫学の専門家、ならびにワクチン関連疾患の罹患家族などワクチン接種者の代表を加えた委員会及び審査組織の構築
田中代表は、長浜副大臣に対し、「残念ながら命を落とした子どももいる。ワクチンの定期接種化が延びれば延びるほど、命を落とす子どもがいる。私たちが4年前に訴え始めた内容から、何も変わっていない。厚労省としても、何人の子どもが感染して、後遺症を残したり死亡したりしているか分からなくて、推測でしかものが言えない。これでは進めるべきワクチンの接種で何人の子どもに効果があると分からないし、国民も納得できない。期待しているのでお願いしたい」と述べた。
■小児科医の負担軽減にも
また、小児科医でもある同会の武内一副代表は細菌性髄膜炎の現状について説明し、ワクチンの定期接種化によって「髄膜炎を85%撲滅できる」と述べた。細菌性髄膜炎は診断が難しいために他の診療科の医師から小児科の当直を敬遠されることが多いとして、定期接種化しておけば罹患する子どもが少なくなるために「医師数を増やすとか、小児医療の時間外の問題の解決にもつながる。我々小児科医も救ってくれる定期接種化をして頂きたい」と求めた。
長浜副大臣は、「民主党としてもこの問題は取り組んできた。急ぐようにとの指示は十分分かっている。治験の問題も含め、定期接種という形でと。国の決まりがあり、厚労省の手続きもあるので、説明していただいたことは承知の上で、対応を急ぐように努力させていただければと思っている」と答えた。
同会がこの日に行った国会議員との勉強会については別稿で紹介する。