医療機器の外国平均価格制度 日米財界人会議で批判
1) 医療機器のイノベーションを適正に評価する償還プロセスの確立:
両協議会(編注:日米経済協議会とU.S-Japan Business Council)は、基本原則として、治療成績の向上、痛みの軽減や患者にかかわる様々な負荷を減らすといった治療貢献は、高く評価されるべきと考える。 これらの貢献に報いることができる償還制度は、ヘルスケア・システム全体のコスト・コントロールや高品質のケアなどにつながると考える。両協議会は、日本の『外国平均価格』(FAP)制度が恣意的で曖昧なものであると、引き続き強い懸念を抱いている。医療機器の価格が、すべての国で同じであるべきとするFAPの考え方は大いに問題がある。なぜなら、国によってコスト構造、市場構造や保険制度が根本的に異なるうえに、為替レートの動きも影響を与えうる。複雑な工業製品では価格は国によって異なるのは当然であり、医療機器においても価格を同じとすべきではないと考える。
今般の急激な為替レート変動による円高の下でFAP制度が適用されれば、2010年度償還価格は劇的な切り下げとなる。為替の影響についての調整や日本のコスト構造や市場構造の改善なしに、そのような切り下げが行われれば、日本の産業界にダメージを与え、その投資活動や技術革新に悪影響を及ぼすだろう。少なくとも、2010年の償還価格見直しには、FAPを使うべきではなく、またFAPの対象国を増やすべきではない。
両協議会は、革新的な製品の開発や導入を進めるためには、償還価格と機能区分の設定を、より透明で予測可能なプロセスにすることが重要と考える。また、既存の製品や区分についても、同様と考える。
2) 審査の迅速化、効率化のための強力な規制改革の推進:
日本の内閣は2009年4月、医療機器に関する規制改革やPMDAの審査官の増員を盛り込んだ施策パッケージを発表した。この中では新製品の承認審査期間の短縮についての目標が設定され、半年毎にその実績データと改革の進捗状況が公表され業界と協議することが盛り込まれている。両協議会は、これらの改革施策と協議プロセスの設置を支持・歓迎する。審査期間の短縮を確実に達成するために、すべての関係者が改革の進捗状況をモニターし、推進していくことが不可欠である。例えば、業界としてはレギュラトリー・サイエンスや審査プロセスについてのトレーニングプログラムを審査側に提供するといった協力を進めていきたい。「Least burdensome approach」と「Risk/Benefitの適度なバランス」を基本原則として進めることが不可欠である。
第三者機関による審査は、低リスク製品すべてに対し早急に実施すべきであり、高リスクの製品にも対象を拡大していくべきである。
両協議会はまた、審査官個人が審査の責任を負うことがあれば、適切な審査が行われにくくなるのではないかと懸念を有している。審査結果についての責任は、審査官個人ではなく、そのプロセスに関わっている機関が担うべきである。
PMDAによる医療機器審査の迅速化5か年計画では、IVD(体外診断薬)や画像診断装置が触れられていないが、革新的な診断薬・診断装置の審査プロセスの合理化や承認の迅速化を実現すべく業界との対話を続けるべきである。
3)日米当局の更なる協力推進:
両協議会は、相互承認という最終目的に向け、医療機器の規制に関して日米間の要求事項を収束させハーモナイズしていくことを強く支持する。米国FDAと日本の厚労省・PMDAは、最も進んだ医療機器の審査機関として世界で評価されている。これら二つの機関が協力して新技術導入の障壁を減らせば、両国の患者の安全をより一層担保し制度の効率的な運営が実現できる。両協議会は、FDAと厚労省・PMDAが「Harmonization by Doing」のイニシアティブを引き続き推進していくことを期待する。しかし、これらのイニシアティブは具体的な成果につながるべきであり、進捗と成果は厳格にモニターされ、定期的に報告されなければならない。このイニシアティブは、臨床試験のみならず、患者の安全性を向上させつつ、両国の新製品導入のスピードを速めるための施策も対象とすべきである。
4) 臨床研究と新技術開発のための環境改善:
両協議会は、健全な臨床研究の環境が医療技術のイノベーションを実現していくうえで基本的な条件であると考える。日本の医療機器の研究開発環境の抜本的な見直しを求められる。これには薬事制度上の課題や臨床試験に参加する被験者の保護および保険制度の課題が含まれる。患者のニーズや新技術の利点について、産、官、学、患者団体の間での対話を継続していくべきである。被験者への適切な保護の下で、企業が臨床現場に開発中の試作品を提供できるようにするための透明でわかりやすいルールを確立するべきである。両協議会はまた、どのような治療法や技術によって今後患者のニーズを満たしていくかという「ビジョン」を定めて研究開発を進め、多くの患者がこれらの治療法や技術を利用できるようなクリティカルパスを定めることを望む。5)ヘルスケア分野でのIT活用の推進
両協議会は、ヘルスケアにおいてITを活用することで医療資源のより効率的な活用や治療成績の向上ならびに患者の負荷の軽減が実現できると考える。遠隔での患者のモニタリングや疾病管理はその例であり、これらを含め保険適用も行われるべきである。