12月16日の中医協 (ブリーフィング)
■ 基本問題小委員会③ ─ がん対策
[保険局医療課・佐々木健課長補佐]
「がん対策」ですが、(自由放談のごとく)非常に活発なご議論もございました。今回は特に(厚労省の)「がん対策推進協議会」(会長=垣添忠生・日本対がん協会会長)が12月4日に(長妻昭・厚労)大臣宛てに要望(書)を出しております。
これはなかなか......。「がん対策推進協議会」が診療報酬改定に合わせて意見書を出されるのは初めてのことかなと思います。今日はちょっと広範な議論がなされたことと、こういうがんの協議会......。
(がん対策推進協議会は)患者やがん治療をされている先生方が入っている審議会なので、こういう中から出てきたものは重要だということであったと思いますが、そういう意味でちょっと担当レベルで感じていましたのは、なかなかその......、(がん対策が)「診療報酬になじむかなじまないか」という議論があるのではないかと思っています。
「がん対策推進協議会」というのは診療報酬を議論する協議会ではなく、がんのことに対して幅広く総合的に議論される場所なので、「がん対策推進協議会」としては「診療報酬でやってはどうか」というご提案かもしれないのですが......。
いろいろ、(要望を)頂いている中身について議論がありましたけれども、すべて診療報酬で......。今回、救急(医療)も同じような議論がありますが、「補助金と診療報酬の役割分担」という議論と、もう1つは「すべてのことを診療報酬の規定なりで引っ張っていくのか」と。
例えば、他の制度なり法律的な規定はなくても、診療報酬の点数の設定、それから診療報酬の施設要件なり通知ですべて規定して施策を進めていくのか、そこまでの役割が診療報酬にあるんでしょうかという議論も、そもそもやっていただかなきゃいけないのかなという感じはいたしました。
ですが、今日ご議論があったということと、医療課で提示させていただいた「論点」と併せてご説明させていただきます。
○ 論点まず1つ目の論点、「がん治療に関して、拠点病院を中心とした地域の診療所等との連携」という取り組みですが、これは(医療課・佐藤敏信)課長からお話しさせていただきました。
1 がん治療に関して、拠点病院を中心とした地域の診療所等との連携の取り組みが進められているが、診療報酬上の評価をどう考えるか。2 治療法の選択において、放射線療法の重要性が高まる中、患者本人を含め、周囲の患者の被曝に十分配慮した安全な放射線管理体制について診療報酬上の評価をどう考えるか。
3 化学療法のレジメンが複雑化する中で、患者に対して薬剤の投与スケジュール、副作用とその対策等について詳細に説明するなど、より質の高い外来化学療法を提供する体制について診療報酬上の評価をどう考えるか。
4 がん治療に関わる医療関係者が、初期からの緩和ケアを提供することが求められている中、がん患者に対する丁寧な療養上の説明や指導を行うことの診療報酬上の評価をどう考えるか。
5 患者の体力低下を最小限にとどめ、早期に外来医療につなげるための周術期等における療養指導の取り組みについて診療報酬上の評価をどう考えるか。
すべての患者さんをがんの専門医、または専門病院で診るということは実行上不可能でございますので、例えば、外来化学療法の一部とか、手術後の患者さんのフォローアップみたいな所をかかりつけ(医)というか、患者さんがお住まいの地域の身近な先生に診ていただきながら、ここぞというポイントですね、フォローアップの所で専門医の先生と連携していただく。
こういうやり方でないと、がんの医療機関のドクターの負担が増してしまうということもあります。そういうことで、(地域の診療所等)との「協力体制」ということが(論点の)1番目でした。
(論点の)2番目は放射線療法です。今回は例示として甲状腺のがんの治療などに主に使うようなもの(RI療法など)を挙げました。そういうものについて評価してはどうかということ。
(論点3の)化学療法についてここに提示させていただいたのは、(外来化学療法加算を400点から500点に引き上げるなど)前回改定でも評価しました外来化学療法についてさらなる人員配置などについて(評価したい)というニュアンスでご提示しております。
(論点4の)「がん治療に関わる医療関係者が初期からの緩和ケア(を提供することが求められている)」という部分については、緩和ケア(診療加算など)、さまざまな加算とか(癌性疼痛緩和指導管理料など)いろいろございますけれども、これも引き続き重要な要素だろうという意味です。
(論点の)5番目はがんの患者さんの周術期のリハビリテーション。リンパ浮腫(指導管理)に関しては前回改定で(リンパ浮腫指導管理料を)導入していますが、それについて評価のご議論をしていただきたいと思っていました。
(論点)1番の拠点病院に関してはそれなりに「連携は必要だ」というお話だったと思います。2番目の放射線療法については、今回ご紹介した内容以外にも、「専門医が不足している」という状況があるので、「そういうものをしっかり応援できるような評価が必要ではないか」というご議論があったと思います。
3番目については、「外来化学療法は引き続き(評価を)」ということもあったのですが、勝村(久司)委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)だったと思いますが、「入院の際にも化学療法をやっているのでそれについて評価してはどうか」というご提案がございました。
これについては、現状さまざまな点数があるというご説明をさせていただきましたが、今日のご議論を踏まえるということであれば、そういう入院の(患者が)受ける化学療法についても何らかの検討をすべきというご議論だったと思っています。
それから、(論点4の)緩和ケアについても「引き続き(評価)」ということでしたが、ここの部分か、ほかも共通だったかもしれませんが、例えば、緩和ケアのチームの加算は専従のドクターや専従スタッフの確保が要件になっていまして、そういうものについてすべての医療機関でそういう体制を取るのは難しいので何らかの配慮が必要ではないかという(要件緩和を求める)ご意見が(診療側の邉見公雄委員や鈴木邦彦委員から)あったと思います。
(論点の)5番目は特に反対もなく、周術期のリハビリ的なものは必要というご意見があった。あと、リンパ浮腫に関しては邉見先生(全国公私病院連盟副会長)と北村善明専門委員(日本放射技師会会長)、坂本すが専門委員(日本看護協会副会長)から、「今は入院に限っているが外来も評価してはどうか」という意見もありましたので、ご指摘を踏まえたより具体的な案を作ってまたご議論していただくことになるかと思います。
それから、かなり詳しく「がん登録」に関して(人手や時間が掛かるので診療報酬で評価するよう嘉山委員が求めるなど)ご議論が出てきましたので......。ここはちょっとなかなか......、中医協のブリーフィングにはふさわしくないかもしれませんので、取り扱いはいろいろ考えていただきたいのですが......。
私の個人的なコメントを申し上げますと、私は昔、(厚労省健康局総務課の)「がん対策推進室」におりまして、「がん登録」も一生懸命やりたいと思っていたのですが、「がん登録」をするということは患者さんのがんの情報を集めるということですから、どういうフォーマットで集めるのか、誰が集めるのか、どういうふうに使うのか......、ちょっと順番はごちゃごちゃですが、いろいろな規定なり体制の整備がまず一番大事な観点かなと理解しています。
ですので、「診療報酬で評価するかどうか」ということは純粋に中医協......、「保険になじむか」という観点も多少はあると思うので(社会保障審議会の)医療保険部会でのご議論も必要かなと個人的には思いますけれども......。
「がん対策推進協議会」から頂いたご提言に対して個人的な見解を表明するのはおかしいので、あくまでも「参考までに」ということですが、やはりそういう議論を「がん対策推進協議会」でやっていただいて、「こういう体系で整備して、こういうロードマップでがん登録という仕組みを作っていかなければいけない」という議論になっているので、例えば、「平成22年度はこういう所の医療機関を応援してほしい」、「24年は全体に広げるのでこうしてほしい」、極端に言えば、「26年以降はがん登録に参加していない医療機関は」......。
ものすごい極端なことを言えば、「がんの手術をやっては駄目」とか、「がんの化学療法はやっちゃ駄目」とか、そういうふうにしてほしいとか、そういうロードマップがあって、ご提案をしていただきたいなと個人的に思いました。
そうでないと、例えば点数を付けて、病院が勝手に集めたデータを誰が管理するのかという議論もありますし、そういう所をすべて中医協なり医療課がですね、診療報酬のことだけでも非常に業務が多忙でございますので、なかなか「がん登録」の始末までやっていくのはちょっと難しいので、そういう意味では「中医協で貴重なご提言があった」ということだと思いますけれども、「そもそも診療報酬でこなし切れる段階なのかな」というのは個人的には思っています。
ただし今、これは参考までにブリーフィングを使って意見を言わせていただきましたので、本来は今後、事務局(保険局医療課)からですね、「前回のご議論があったことについてこういうことだと思います」ということで、課長からご説明させていただくものをちょっと......、"プレ情報"的に言っておりますので......、「医療課の担当は『がん登録は無謀だ』と言っていた」と書かれるとちょっと......(記者ら、笑い)、あの、難しくなっちゃうので、ちょっとそこは取り扱いには......。
私はそう思いましたので、そこはきちんとやるべき重要な課題だと、昔も(がん対策に)かかわった経緯もあるので思っておりますが、そういう意味では若干丁寧にいろいろな仕掛けをつくりながら絡めていってこそ、本当の果実が得られるのかなと思っています。
それから、ニコチン(依存症管理料)は「(次期改定でも)続ける」ということになりました。
○ 論点1号(支払)側の委員2名(北村光一委員・経団連社会保障委員会医療改革部会長代理、高橋健二委員・全日本海員組合中央執行委員)から、「嗜好品に対する規制なのでフォローアップしてほしいという」という意見がありましたので、それについては今後また、点数は続けるにしても「引き続き効果を検証するということになるか」は最終的にご議論頂くことになると思います。
検証部会調査の結果を踏まえ、ニコチン依存症管理料のあり方についてどう考えるか。
【目次】
P1 → 基本問題小委員会① ─ DPC(新たな機能評価係数の項目)
P2 → 基本問題小委員会② ─ DPC(調整係数の段階的廃止等)
P3 → 基本問題小委員会③ ─ がん対策
P4 → 基本問題小委員会④ ─ 後発医薬品の使用促進
P5 → 基本問題小委員会⑤ ─ 初・再診料