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ニュース〜医療の今がわかる

がんの先進医療が普及すると医療費が増える?

■ 「毎回毎回、自己負担分を患者さんに浴びせていくのか」 ─ 嘉山委員
 

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 「先進医療専門家会議の検討結果等について」を議題としたいと思います。事務局(保険局医療課)から資料が提出されていますので、説明をお願いしたいと思います。

[保険局医療課・迫井正深企画官]
 はい、医療課企画官でございます。(資料)「総─3」(先進医療専門家会議における第2項先進医療の科学的評価結果)をご覧いただきたいと思います。今回ご報告いたしますのは......。
 (厚労省の)先進医療専門家会議(座長=猿田享男・慶應義塾大医学部名誉教授)を先般、1月14日に開催いたしました。ここで、新たに(薬事法上の未承認又は適応外使用である医薬品又は医療機器の使用を伴わず、未だ保険診療の対象に至らない先進的な医療技術である)「第2項先進医療」として、保険の併用を認めることが適当であるという技術が審議され、承認されたわけでございます。(中略)

 ▼ 同会議で承認されたのは、浸潤性膀胱癌を適応症とする「腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術」で、先進医療費用(自己負担分)は1回75万9000円、保険外併用療養費(保険給付分)は1回55万4000円。なお、これは典型的な1症例に要する費用として届出医療機関が記載した額。

 「将来これを保険収載するに当たってどういった視点が必要か」ということで、(先進医療技術評価用紙の)下から2段目にありますが、今回の技術を将来的に(保険導入を)判断するに当たっては、やはり「普及性」、具体的な症例数や(実施できる)施設数の増加等を勘案していく必要があると、(同会議の評価結果では)こういうご指摘でございます。(中略)

 (同技術を実施できる)医療機関の要件としては、(診療科が)泌尿器科でございます。等々、さまざまな整理がなされています。これ(医療機関の要件)は見ていただければと思いますので、詳細なご説明は省略させていただければと思っております。事務局からは以上でございます。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 はい、ありがとうございます。先進医療専門家会議から、(同技術を)「先進医療として認める」ということがありました。これは(混合診療が例外的に認められる)保険外併用療養費です。これについて中医協としてコメントはできます。「先進医療にするかどうか」の決定権は先進医療専門家会議でございますが、何らかのコメントがあれば承りたいと思います。いかがでございましょうか。 (しばらく沈黙)

 はい、嘉山委員、どうぞ。

[嘉山孝正委員(山形大医学部長)]
 私はかなり先進医療をやっている者ですが、いつも現場で「困ったな」と思うのは......。これは、厚生省がどう考えているかということですが......。

 (同技術の)自己負担分が75万円というと非常に高くて......。この手術は患者さんにとって非常にベネフィット(便益)があるんですね。レスインベイシブという、侵襲性が少ない手術ですから、それを進めるときに(自己負担分)75万9000円というのはどうしてもネックで紹介しにくいんですよ。

 それで、これ(高額な自己負担分)を厚生省としてはどういうふうに今後......、まあ、今後というか、このままだと毎回毎回、先進医療は自己負担分を患者さんに浴びせていくのかということが非常に気になっているんですけども、ちょっと見解をお聞きしたい。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 (患者の負担軽減について)類似のご質問を以前もされましてね、「(健康)保険組合としてどういう対応を取っていますか」というお話が前回もあったかと思いますけれども......。

 厚労省としては、この自己負担部分、自由診療の部分ですね、そこのところをどう考えているのか、「考え方があるのか」、あるいは「ないのか」も含めてで結構ですけども......。何か、ありますか? はい、事務局どうぞ。

[保険局医療課・迫井正深企画官]
 はい、医療課企画官でございます。これは後ほど、この後(の議題で)ご説明いたします(既存の先進医療に関する)保険導入......。たまたま今回のご議論ではこれ(先進医療の保険導入)がございますので、(これと)併せてご理解いただく必要があると思います。

 基本的には必要な医療......。我が国におきましては国民皆保険制度の下、必要な医療については保険で給付していくということが基本であろうという認識の下で、技術革新、さまざまな新しい治療についてどういった形で迅速に対応していくのかということが課題であると認識しております。

 従いまして、基本的には必要な医療については速やかに保険収載をしていく。患者さんの負担につきましては、「可能な限り被保険者の利益になるように」という姿勢で当然臨むべきだと考えておりますが、そのちょうど中間、狭間にございます技術の発展途上、開発途上、あるいは評価途上にあるものにつきまして、どういった形で接点といいますか、折り合いを付けるのかという課題に対しまして、まさに設定されていますのがこの「先進医療制度」でございます。

 その途上の......と言いますか、期間で具体的に申し上げますと、保険外の併用をお認めいただきまして、患者さんには確かに自己負担分が発生いたしますが、それ以外の、当該技術以外の分につきましてはむしろ保険の併用を組み合わせることにより、すべて自己負担ではないけれども必要な技術を、将来の保険導入をにらんで推進していくという枠組みがございますので、この枠組みを活用することで、この後ご説明いたします新しい技術の保険導入を推進していく必要があるという認識でございます。

 それから、自己負担分につきましては当然......、この議論をしていくときに、こういう技術でこういう......、例えば、マンパワーなり機材なり、そういったものが(実施に)必要だということを申請していただいております。

 事務局で見る範囲に当然限界はございますが、あくまでも基本的には患者さんと医療機関との契約ではございますが、どういった費用が請求されるのかということにつきましては、可能な限り査定と言いますか、審査をさせていただいているというのが現状です。以上でございます。
 

【目次】
 P2 → 「毎回毎回、自己負担分を患者さんに浴びせていくのか」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P3 → 「全国一律に同じ診療を受けられるかに関心ある」 ─ 白川委員(支払側)
 P4 → 「保険適用の理由を開示したほうがいい」 ─ 遠藤会長(公益)
 P5 → 「専門の方々の共通認識は我々には分からない」 ─ 牛丸委員(公益)
 P6 → 「普及性は『鶏と卵』みたいな話」 ─ 安達委員(診療側)
 P7 → 「保険で認めればトータルコストは安くなる」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P8 → 「重粒子線を全国に普及するのは反対」 ─ 関原委員(公益)

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