がんの先進医療が普及すると医療費が増える?
■ 「普及性は『鶏と卵』みたいな話」 ─ 安達委員
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
2点、申し上げます。最初はご質問ですが、(先進医療から)削除すると決めた(のが6技術あるが)、先進医療に選んだけれど実施例数がないというのがたくさんありますよね。「選んでおいて実施例数がないというのは何なんでしょうか」という素朴な疑問がある。
「先進医療」として、(将来)保険適用の可能性があると思うから選んだはずなので、それには医学的ないろんなものがあったはずですから、その後に実施件数がないというのはどういう選び方なのか。「そもそも先進医療とは」ということが第一の質問で、これは事務局(医療課)のご見解を承りたい。
それから2番目は、先ほど嘉山先生がご指摘になりましたけれども、あるいは白川委員がお触れになりましたが、(先進医療)に上げてから、まだ(保険)適用に行かないで非常に長い間検討しているものがございますよね。これはやはり......。
この間、自己負担分が非常に大きいということになると、実質上の経済的条件による患者差別みたいなことが起こってしまうわけで、それ(自己負担分)が払えないから治療を受けられないという人が出てくる。(保険収載までの)この期間は短いほうが良いに決まっているんですが......。
先ほどの「普及性」「効率性」「普及性」という中の、「普及性」ということについてはですね、ここに多種多様なもの(先進医療技術)が挙がっていますが、非常に、例えば、それを行うために高額な装置が必要なものがある。例えば33番の「重粒子線治療(固形がんに係るものに限る)」もそうだと思います。
これは「鶏と卵」みたいな話で、確実にこれが必要な患者さんがいらっしゃるけれども、保険適用でないので払える人が限られているから適用数が少ない。だからその装置が購入できないというようなことになると、装置を購入できる所が限られるから「普及性」がいつまでも満たされないでいつまでも延々と......。
(治療に)有効なことが分かっていながらこの状態を続けていって、その間、結果的にはその自己負担分を払える人だけがこの治療の恩恵を受けるという形が出てくる。これはやはり、少し判断基準というものにもメスを入れていただかなければならないのではないかということを非常に痛切に感じているのですが、その辺りはいかがでしょうか。
[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
2つとも、これは事務局に対する(質問)ということですね。最後はご意見のようなものがありましたが、それについてのコメントという形になると思いますけれども、事務局どうぞ。
[保険局医療課・迫井正深企画官]
医療課企画官でございます。まずですね、「実施件数が極めて少ないのはどうしてか」ということでございますが......。(中略)
▼ 「申請した医療機関が実施しなかったことの是非についてはコメントのしようがない」「母集団の多い技術と少ない技術がある」などと回答。
後段の(質問)......、そもそも今回の「先進医療」そのものの本質的なご議論になるかもしれませんが、「先進医療」に入ることで(混合診療禁止の例外という)評価をするんだけれども、自己負担部分が当然生じるわけですから......、という話でございますけれども......。
先ほどの嘉山委員のご指摘(に対する回答)の繰り返しになってしまうかもしれませんが、この制度の枠組みは基本的には、「可能な限り必要な技術の保険導入を促進する」という観点で設定されている枠組みでございます。
そのときに、普及すれば、(多く)実施されれば、もしかしたらその技術に掛かる費用なり、あるいは生産性......、失礼しました、「生産性」という言い方は良くないので、実施にかかる「効率」が高まる可能性があるものが当然、性質上あると思いますけれども、そこが、(普及性と効率性の)どちらが先に来るのかというのは、この制度、あるいは医療そのものの本質的なご議論だろうと思っておりますので......。
事務局、あるいは制度を所管する立場からいたしますとやはり、「それを可能な限り使っていただいて保険導入を促進する」という視点でしか、なかなかご説明が難しいのかなというふうに考えております。ちょっと、答えになっていないかもしれませんが、事務局からは以上でございます。
[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
ただ今、安達委員がおっしゃったのはかなり......、問題提起でありますから、ある意味、事務局だけのご発言ではなくてほかの方からのご意見をお聴きしたいと思うわけですが......。(中略)
事務局(医療課)のお答えは、(安達委員の質問に対して)半分ぐらいしかお答えしていない。安達委員がおっしゃったのは、「先進医療」の中にはですね、「先進医療」から保険収載されるためには「普及性」が重要なコンセプトではあるけれども、モノによってはそうそう「普及性」ということにウエイトを置いてしまうといつまで経っても保険収載できないような、先ほど「重粒子線治療」の話が出ましたけれども......。
そういうことであれば、技術によっては多少のウエイトを変えるなりなんなりして評価していかないといけないのではないかという話。
【目次】
P2 → 「毎回毎回、自己負担分を患者さんに浴びせていくのか」 ─ 嘉山委員(診療側)
P3 → 「全国一律に同じ診療を受けられるかに関心ある」 ─ 白川委員(支払側)
P4 → 「保険適用の理由を開示したほうがいい」 ─ 遠藤会長(公益)
P5 → 「専門の方々の共通認識は我々には分からない」 ─ 牛丸委員(公益)
P6 → 「普及性は『鶏と卵』みたいな話」 ─ 安達委員(診療側)
P7 → 「保険で認めればトータルコストは安くなる」 ─ 嘉山委員(診療側)
P8 → 「重粒子線を全国に普及するのは反対」 ─ 関原委員(公益)