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ドラッグ・ラグ解消策で、ドラッグ・ラグが加速? ─ 「薬価維持特例」に難題

■ 「ドラッグ・ラグはさらに進む」 ─ 嘉山委員
 

[嘉山孝正委員(山形大医学部長)]
 今度の特例措置は非常に......、私はドラッグ・ラグが解消される1つの良い方法だと思うので賛成なんですけども......。ちょっと質問させていただきますが、これ(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)、製薬会社に申請を......。(資料)3ページですね。

《骨子別紙》
(2) 当該加算の具体的内容
  2) ただし、有識者会議(仮称)による評価結果等を踏まえ、次回の薬価改定時までに、当該加算対象品目を有する企業について、要請を受けた適応外薬等の品目の開発・上市状況を確認し、以下の場合には、当該企業の全ての新薬に対して加算を適用しない
  ① 公知申請が行える場合で、特段の合理的な理由※)がなく、有識者会議からの開発要請より半年以内に薬事承認申請を行わなかった場合
  ② 開発に当たって治験が必要な場合で、特段の合理的な理由※)がなく、有識者会議からの開発要請より1年以内に治験に着手しなかった場合

 ※)多数の品目の開発要請を同時期に受けていることを基本とするが、なおその場合であっても、所定の期限内に、相当程度の品目について承認申請を行うか、治験に着手していなければ「特段の合理的な理由」として認めないものとする。

 3ページに書いてあるように、「半年以内に(薬事承認申請を行わなかった場合)」......。「(新薬創出・適応外薬解消等促進)加算」が出ない場合ですね、出ない項目がここ(3ページ)に書いてあるんですが、(有識者会議の開発要請から)半年以内に薬事承認申請を行いなさいと......。

 さらに、(有識者会議の開発要請から)1年以内に治験に着手しなさいと......。「そうでない場合には、この加算はありませんよ」ということが書いてありますが......。現在、この承認をするPMDA(医薬品医療機器総合機構)の年間の承認数はいくつですか?

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 事務局(保険局医療課)、お願いします。

[保険局医療課・磯部総一郎薬剤管理官]
 手元に詳細な数字がございませんけれども、PMDA(医薬品医療機器総合機構)でこの数年の間に年間承認されている新薬の有効成分数で見ると、確か1年間70成分ぐらいだったかというふうに思っております。

[嘉山孝正委員(山形大医学部長)]
 その通りです。うちが今度の概算要求で文部科学省に......、PMDA(医薬品医療機器総合機構)と日本で最初の連携大学院をつくりましたから、大体70でいいと思います。

 そうするとですね、現在いろんな学会ですとか、ドラッグ・ラグ(の解消を求める)......、患者の団体の方々から要望が出ている薬は370あるんですよ。これを(厚労省の)「有識者会議」という所で認めて、順番にPMDA(医薬品医療機器総合機構)に持っていくんですけれども......。

 ▼ 有識者会議の正式名称は「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で、厚労省医薬食品局審査管理課が会議の庶務を行い、医政局研究開発振興課と保険局医療課が協力する。2月8日に初会合を開催する予定。

 (新薬創出・適応外薬解消等促進加算の)除外規定の2つを見ますと、370全部をいっぺんに製薬会社がやるということは不可能で、「1年以内に治験をスタートしろ」ということは不可能で、実質はドラッグ・ラグがかえって......、本当に(承認が)必要なやつが後回しされたりですね......、という可能性がありますので......。

 あるいは365日のうち200いってもですね、処理できないんですよね。そうすると日本の薬品会社が非常に......。僕は薬品会社の味方をするんじゃなくてドラッグ・ラグをなんとかしたいから言っているんですけど、その選別をきちっとしておかないと、これは有効でないんですよ。機能しないことになりますから、この制度が。その辺、薬剤管理官はどういうふうにお考えなんでしょうか?

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 はい、それでは薬剤管理官、お願いします。

[保険局医療課・磯部総一郎薬剤管理官]
 薬剤管理官でございます。今の嘉山委員のご指摘に関しましては、あの......、私ども、そういったことを非常に心配して、「どういうふうに実際やっていくか」ということで、実は私ども保険局とですね、医政局、医薬食品局、それから業界のほうもいろいろな心配事、いろいろお話がございますので、いろいろなお話し合いを何度かさせていただいているところでございます。

 それで、具体的に嘉山委員がおっしゃるように、実際にこれがワークをしてですね、成果を上げていくような形でなければ意味がありませんので、実際にどのような計画を立ててですね、進めていくのか、それについて具体的なお話し合いをさせていただいていると。

 確かに、今のご指摘の点については、メーカーにしても10品目も20品目もいっぺんにできるわけではございませんし、当然ながら、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のほうもいっぺんに......、「承認申請が固まって(出て)きた場合にはなかなか処理できない」ということもございますので、どのような形が一番成果が上がりやすいのかということについて、これからまた十分に詰めてですね......。

 ここで言う「有識者会議」も、来月早々に立ち上がって話が始まってまいりますので、そういったその状況についても(中医協に報告する)......。
 ま、特にこちら(中医協)のほうは「薬価専門部会」でのお話になろうかと思いますけれども、適宜、中医協のほうにもご報告をさせていただいて、どのような形でこれをやっていくのが一番良いのか、また中医協のご意見も聴きながら進めていければというふうに思っているところでございます。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 嘉山委員、どうぞ。

[嘉山孝正委員(山形大医学部長)]
 私が一番心配しているのは、(申請が)200もいった場合、製薬会社も困るし......。本当に必要な、ドラッグ・ラグになっている薬品が後回しにされて、かえって患者さんが困るような事態になりかねないので......、この制度だと。

 そこの担保をきちっと取っておかないと、ドラッグ・ラグはさらに進みますよ。ですから、そこをどのように......。今、(薬剤管理官は)抽象的な返事だったので、具体性を持って示していただかないといけないと思うんですよ。

 後から考えてみたら、これ(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)をせっかくつくったのに、「患者さんのためにならなかった」ということになりかねない。製薬会社も困っちゃう。患者さんも困る。そこを担保するような制度設計を教えてください。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 薬剤管理官、どうぞ。

[保険局医療課・磯部総一郎薬剤管理官]
 まさしく嘉山委員のおっしゃっる通りでして、実は新たな「有識者会議」では、「医療上の必要性」、それから、どの薬を早くやらなければいけないのかということをですね、議論していただく予定でございまして......。

 ▼ 同会議の主な検討事項は、▽医療上の必要性 ▽公知申請への該当性および追加実施が必要な試験─など。「医療上の必要性」とは、▽生命に重大な影響がある疾患であるなど適応疾患が重篤であること ▽当該疾患に係る既存の療法が国内にないなど医療上の有用性があること─のいずれにも該当するか否かを検討するらしい。また、「公知申請への該当性および追加実施が必要な試験」とは、「医療上の必要性が高い」と評価された未承認薬・適応外薬について、公知申請への該当性や承認申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性を確認するという。このほか、製薬企業が開発を行う医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬について定期的に開発進捗状況を確認したり、未承認薬・適応外薬の開発助成の是非、支援額の上限について検討・確認したりする模様。

 各企業でも、例えば複数の品目の要請を受けるような場合については、どういった順番で実際にやっていくのか、開発のスケジュールをどんなふうにやっていくのかということについて、「工程表」という名前で申し上げておりますけれども、そういったものをお出しいただいて、それが「医療上の必要性」に従ってちゃんといっているのかどうかということを確認するようなことを「有識者会議」(で行う)......。

 また、中医協でのご意見もあろうかと思いますので、こちらのほうにもご報告させていただいて、嘉山委員がおっしゃったような形でいくのかどうかということを確認していくような形をつくっていきたいと。 
 基本的には、「医療上の必要性」で順番を付けていくという形で進めていきたいというふうに思っているところでございます。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 嘉山委員、どうぞ。
 

【目次】
 P2 → 「平成22年度実施の薬価算定基準等の見直し案」を提示 ─ 厚労省
 P3 → 「ドラッグ・ラグはさらに進む」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P4 → 「本当に有識者かどうか分からないような人もいる」 ─ 嘉山委員
 P5 → 「有識者会議が一体どういうものか説明していただきたい」 ─ 牛丸委員(公益)
 P6 → 「政務三役に説明して了解を得ながら進めていく」 ─ 薬剤管理官

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