ドラッグ・ラグ解消策で、ドラッグ・ラグが加速? ─ 「薬価維持特例」に難題
■ 「平成22年度実施の薬価算定基準等の見直し案」を提示 ─ 厚労省
[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
ただ今より、第164回中央社会保険医療協議会総会を開催いたします。まず委員の出席状況についてご報告いたします。本日は、関原(健夫)委員(日本対がん協会常務理事)および藤原(忠彦)専門委員(長野県川上村長)がご欠席です。
それでは、議事に入らせていただきます。まず、「平成22年度実施の薬価制度見直しの内容(案)について」を議題といたします。先ほど(総会の前に)「薬価専門部会」が開催されまして、そこにおきまして取りまとめされましたものにつきまして、事務局(保険局医療課)から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。薬剤管理官、どうぞ。
[保険局医療課・磯部総一郎薬剤管理官]
はい、薬剤管理官でございます。資料「中医協 総─1」をお開きいただきたいと思います。(資料は)「平成22年度実施の薬価算定基準等の見直しについて(案)」ということでございます。
今、会長からお話があった通り、先ほどの「薬価専門部会」でご了承いただきました実際の薬価算定基準の変更の詳細版ですけれども、それを(資料として)お付けさせていただいてございます。
(今回の資料の)作り方としては、年末におまとめ(了承)いただきました「(平成22年度薬価制度改革の)骨子」を先に書きまして......。
例えば、2ページをお開きいただきますと、現行の薬価算定ルールがどうであって、改正後はどうなるかと。特に、今回新しくつくりました「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(薬価維持特例)につきましては「試行的導入」ということもございまして、経過措置の中で記載させていただいております。
▼ 大型先発品の特許が切れる"2010年問題"を前に、日本製薬団体連合会(日薬連)は2008年7月9日の薬価専門部会で、新薬の価格を一定期間引き下げない仕組み(エグゼンプト・ドラッグの設置)を要望した。先発品メーカーとしては、2年ごとの価格改定が猶予・免除されれば、新薬を開発するために投下した研究・開発資金を早期に回収することができる。そうすれば、研究・開発に再投資するスピードが上がり、がん等の重篤な疾患やHIV等の希少疾病など「アンメット・メディカル・ニーズの高い領域」にも注力できる。これが日薬連の主張だった。
日薬連はまた、新薬の収益の大半を特許期間中に得られるため、新薬を早期に上市するインセンティブとなると主張。「このような要因が相まってドラッグ・ラグ問題は解消へ向かう」と訴えた。つまり、新薬の価格を維持することにより、▽未充足の医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)への対応 ▽ドラッグ・ラグの解消─という現在の薬価制度が抱える課題に対応できるという主張だった。
しかし、日薬連の提案は当時の日本医師会執行部の委員から「医療界は苦しんでいるのに製薬企業は儲けている」などと猛反発を受け、議論は平行線をたどった。その後、「エグゼンプト・ドラッグの設置」が「薬価維持特例」という名称に変わったものの提案の中身に大きな変更はなく、こう着状態がしばらく続いた。
「薬価維持特例」の導入に向けて大きく動き出したのは昨年7月15日の薬価専門部会。厚労省は、「試行的な実施ということも検討してはどうか」との文言を盛り込んだ「論点案」を示し、業界を積極的に後押しした......かに見えた。
ところが、最終的にふたを開けてみると、「未承認薬・適応外薬問題に対応しなければ利息を付けてごっそり返してもらう」といった内容で、「薬価維持特例」の名称は「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」となった。つまり、「未承認薬や適応外薬の解消に努めれば加算を付けてあげる」という趣旨を明確にしたネーミングで、業界関係者から「もはや特例とは言えない」「ひどいペナルティーだ」といった声も出ている。
3ページ以下、同じような形で骨子の該当部分、それから現行の規定ぶり、改正後の規定ぶりの案という形で、骨子の項目ごとに28ページまで至っているものでございます。
内容的には、基本的には事務局(保険局医療課)で整理をするような(詳細な)部分もございますけれども、念のためですね、「薬価専門部会」でもご確認をいただきまして、当総会においてもご確認をいただきたいと思いましてこちらのほうにお出しをさせていただいているものでございます。以上でございます。
[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
はい、ありがとうございます。ただ今の事務局の説明につきまして、ご質問、ご意見ございますか。嘉山委員、どうぞ。
【目次】
P2 → 「平成22年度実施の薬価算定基準等の見直し案」を提示 ─ 厚労省
P3 → 「ドラッグ・ラグはさらに進む」 ─ 嘉山委員(診療側)
P4 → 「本当に有識者かどうか分からないような人もいる」 ─ 嘉山委員
P5 → 「有識者会議が一体どういうものか説明していただきたい」 ─ 牛丸委員(公益)
P6 → 「政務三役に説明して了解を得ながら進めていく」 ─ 薬剤管理官