「事務局のサポートに感謝したい」 ─ 中医協、2010年度改定を答申
■ 医療・介護提供体制のグランドデザインを描けるか
前回の2008年度改定では、医師不足が深刻な産科、小児科、救急医療をはじめとする病院勤務医の負担軽減策に軸足を置き、診療所からの財源委譲などで捻出した約1500億円を投入した。しかし、その効果には"疑問符"が付いた。
このため、今回も「勤務医の負担軽減」を重視する前回の方針を継承しつつ、急性期の入院医療に4000億円超の改定財源を振り向けた。その一方で、診療所の再診料引き下げなどで外来医療の財源に大きく切り込んだ。
こうした高度急性期を重視する方向性に対し、「日本医療のトップランナーたちが元気を取り戻す」「疲弊する三次救急の出血を止める」と評価する声がある一方で、中小病院の関係者からは「大学病院などの特定機能病院に偏った改定」とのため息も漏れる。改定項目の算定要件には、充実した急性期医療の代名詞である「7対1入院基本料」の文字が目立つ。
確かに、高度急性期だけでなく、その受け皿となる後方病床への配慮は随所に見られる。足立政務官は「急性期の病院だけ手厚くしても、その後の後方支援、あるいは地域医療を守っている診療所、その評価を下げてしまったのでは地域医療は確保できない。政府としてもその方針でやらせていただいた」と述べたが、不安も残る。
今後、急性期の入院医療を担うDPCの一般病棟と慢性期・回復期などの病棟を併せ持つケアミックス病院をどうするか。在宅医療につなぐ"川下"をいかに整備するか。医療と介護の切れ目のない連携をどのように構築するか。
2012年度の医療・介護ダブル改定に向け、医療・介護提供体制のグランドデザインをどこまで描けるか。
「事務局のサポート」を脱して、医療界の代表者らが積極的に政策提言していけるか─。今後の議論に期待したい。
なお、同日の足立政務官、長妻厚労相、遠藤会長の挨拶は3ページ以下を参照(発言順)。
【目次】
P2 → 医療・介護提供体制のグランドデザインを描けるか
P3 → 「命の重さを感じさせる答申書」 ─ 足立政務官
P4 → 「改善すべきところは改善していきたい」 ─ 長妻厚労相
P5 → 「多様な視点でエビデンスベースの議論ができた」 ─ 遠藤会長