中小病院の収支改善が狙い? ─ 再診料問題の嘘と虚構、光と影
地域医療は大病院や中小病院、診療所などが連携して成り立っているので、診療所の再診料引き下げは地域医療の崩壊につながるとの批判がある。このため、200床未満の中小病院の収支を改善させるために病院の再診料を引き上げるという"光"の部分を強調する考えもある。(新井裕充)
地域医療を支える200床以上の中規模病院が置き去りにされたまま、2010年度改定の審議が幕を閉じようとしている。診療所の再診料をめぐる議論で"最後"を盛り上げ、重要問題を葬り去る。「産科や小児科をはじめとする救急医療」を改善するなど、国民に分かりやすい"光"の部分を強調して、診療報酬改定の正当性を担保する。
前回の2008年度診療報酬改定では、後期高齢者医療制度の問題点を十分に議論せず、再診料問題にメディアの関心を惹き付けた。産科、小児科、救急医療など医師不足に対応するため、「病院勤務医の負担軽減に1500億円を充てる」という、"光"の部分を強調して逃げ切った。しかし、勤務医対策の結果は"焼け石に水"で、大病院でも算定できないような"絵に描いた餅"の点数ばかりだった。
今回の診療報酬改定は「急性期の入院医療」に手厚く、診療所などの「外来医療」を絞る方針が既に決定している。残る議論は、診療所の再診料引き下げ。現在の再診料(1点は10円)は、▽200床未満の病院が60点 ▽200床以上の病院(外来診療料)は70点 ▽診療所は71点─になっており、200床未満の病院(60点)と診療所(71点)との間に11点の差がある。
このため、診療報酬改定を審議する厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、支払側は「同一のサービスは同一の価格にすべき」との理由から、診療所の再診料を引き下げて点数を統一すべきと主張している。
これに対し、診療側は「病院の再診料を引き上げて統一すべき」と主張。診療所の立場を代弁している安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は診療所の再診料引き下げに断固として反対しており、互いに歩み寄る気配はない。
こうした中、日本経済新聞は2月7日付の朝刊で、「厚生労働省は6日、4月から外来診察の基本料金である再診料を見直し、中小病院について大幅に引き上げる方針を固めた。現在の600円(患者負担は原則3割)を680~690円に上げる。中小病院の収支を改善させるのが狙い」などと報じた。
中医協でまだ決まっていないことを事前に流して既成事実化する、いつもの先行報道だった。しかし、この日経記事で重要なのは「680~690円」という部分ではない。
【目次】
P2 → 200床以上は「大病院」? ─ 日経報道
P3 → 「佐藤君! どうなってんのかね、これ」 ─ 嘉山委員
P4 → 「憶測記事が出ることもある」 ─ 厚労省
P5 → 「誰が書いたんだか、手を挙げなさいよ!」 ─ 嘉山委員
P6 → 「我々の心構え一つだと言える」 ─ 遠藤会長
P7 → 「日経が中小病院の味方か」 ─ 鈴木委員