治癒率減少でも、医療の質は確保? ─ DPC影響調査
厚生労働省は6月30日、中医協のDPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)に、DPCの導入による影響調査の結果を報告した。
それによると、治癒率が全体的に悪化している一方で、入院期間は短くなる傾向にあった。つまり、治ってもいないのに退院させられてしまうという「粗診粗療」の恐れがある結果だった。
厚労省の担当者は「ここ(治癒)で何かを解釈できるものではない」と説明したが、昨年から加わった美原盤委員(財団法人美原記念病院院長)が「日常の臨床現場で患者を選別しているという話をよく聞く」と暴露。そこで、古株の委員らが"火消し"の議論を展開した。
小山信彌分科会長代理(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)は「(救急搬送の)数値は減っていない。積極的に(救急車を)受け入れている」と反論。西岡分科会長も、「DPCで質が悪くなったという証拠はない。質の悪化はなかったと(報告書で)言っておく必要がある」と追随した。しかし、質とは何かが明らかでない。
そこで、「医療の質」の意味をめぐる座談会がスタート。「手術件数だ」「ベッド稼働率が下がっている」「経営的、経済的な視点も必要」「診療ガイドラインの遵守率は上がっている」「E・Fファイルで正確なデータが提出されている」「医療安全だ」─。
小山代理は、「(医療の質は)検査も何もしないで追い出されるという意味。粗診粗療になっていないという意味の質でいい」と主張して意見集約を図ったが、伊藤澄信委員(国立病院機構医療部研究課長)は「質と言わないほうがいい」と反論。結局、中医協小委(総会)に報告する最終案は「座長一任」という形で決着した。