村重直子の眼11 薗部友良・VPDを知って子供を守ろうの会代表(上)
薗部
「お母さんたちの間で、任意接種のVPDに関して言えば、たとえば水ぼうそうなどは罹った方がいい、誰かからうつしてもらった方がいいというのが良く言われますが、どんな被害があるか医療従事者にさえ知られてないです。アメリカでワクチン導入以前の7年間の平均値は、毎年100名死亡していたのです。それがワクチンを導入したら大幅に減りました」
村重
「ああ、データをきちんと知っていれば」
薗部
「ハッキリ言えばワクチン代約1万円よりか、健康保険を使ってかつ小児医療費助成が出ればタダで済むから、罹った方が助かるというような考え方を持っているわけです」
村重
「定期接種と任意接種の線引きを何で分けているのか不思議に思って考えていたんですけれど、思いあたるのは国の責任をどこまでにするか、裁判になったらどこまで払うかという、そういう判断で線引きされていて、子供のためとか病気を防ぐためという判断とは全然違うところにあるんですよね」
薗部
「おっしゃる通りですね」
村重
「定期接種と任意接種が分かれてしまっているために、親御さんに対するメッセージとして定期接種だけすればいいんですよ、任意接種はしなくていいものですよというメッセージになってしまっています。そういうマイナスの影響も心配です。本当の病気の怖さを知らないから任意接種はしなくていいと思ってしまうのであって、任意接種をしないことによって子供を命の危険に晒しているとご存じであれば、親御さんがそんなこと普通は選ばないですよね。命が救えるなら数千円って安いものだと思いますけど。国が責任をとらないために定期接種化せず、所得の格差が健康と命の格差になっています」
薗部
「そこから先が日本人だけではなく、世界でも似たような傾向があるのです。たとえば、はしかに1000人が罹ると1人は脳炎になると説明しても、そうはならないと思うのに、ワクチンを受けると100万人に1人重大事故があり得ると聞くと、自分の子どもがそうなるかと思うのです。医師や科学者から見ると変な考えですが、これがVPDの怖さを知らない人の普通の反応だと思います」
村重
「3桁も違うのに。確率の感覚が違いますね」
薗部
「実際に脳炎になった方のご家族の苦労を知っていれば、必ず接種しようと思うと思うのですけれど、そういう方の情報を普通の方は知ることが出来ません。お子さんを亡くしたりしたことは、たとえそれが防ぎようのない病気のためでも、一生悔やまれます。まして、それがワクチンで防げた病気であったと後で聞くとなお一層です。日本政府に危機管理意識が乏しいので、危機管理教育が日本では全くなされて来ませんでした。最終的には健康教育・予防教育が普及して、基礎知識のベースがないことには、ワクチン普及活動には限界があります」
村重
「数字に慣れて、どっちがいいかを確率で選ぶこと、そういう数字をたくさん見て判断することに慣れるという教育になりますよね。日本のように、ほとんどデータを厚労省が出さないで、数字がないままの議論では、どれだけの教育ができるんだろうとも思います」
(つづく)