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特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

認知症を知る11 家族にも役立つパーソン・センタード・ケア

家族だったら普通にできる

 相手の人となりをよく知り、よく観察し、よくコミュニケーションを取り、自分がその立場だったらどうしてほしいかという想像力を働かせて敬意を持って行うもの、とPCCを説明しました。

 さて、これらの中に、家族では不可能なことは何か含まれていたでしょうか?

 その先で何をするのかという点に関しては素人に無理なことも多々あるでしょう。しかし、書かれていることまでだったら全部できるような気もします。

ケアする側も自分らしく

 家族がもっと頑張らないといけないのか? と話の成り行きを恐れた皆さん、ご安心ください。

 キットウッド教授の教室を継いだドーン・ブルッカー教授は、2007年にPCCの本質は「VIPS」(表)という独立する4要素に分解できると整理しました。
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 そして「S」の観点から、PCCの「パーソン(人)」にはケアを受ける人だけでなく、ケアを提供する人も含まれるということを強調しています。

 つまり、提供する側が自分らしくいられないほど犠牲を強いられるケアは持続不可能ですし、受ける側が「自分の存在は相手に迷惑をかけている」と感じることにもつながりかねず、PCCの理念に反するのです。

 認知症の人が、自分は必要とされている、自分にはできることがある、と感じられることこそPCCの肝で、家族も関わりの中で自分らしさを追求してよいのだと理解すれば、安心して参考にできるのではないでしょうか。

ノウハウを学ぶ

 ただし、家族が陥りがちな罠もあります。

 人となりをよく知っているつもりで、でも実際には、若い頃まで遡って何もかも知っているわけではないということです。

 過去の記事でも何回か説明したように、認知症では新しい方から記憶が失われ、本人の認識している「現在」は過去に遡っていきます。例えば、過去に果たせなかった夢があって本人がずっと胸にしまっていたような場合、その事柄が、とても大事なこととして生々しく眼前に出現している可能性はあります。

 訳の分からないことを言っていると思うか、隠れていた大事な話が出てきたと気づくか、家族の対応によって本人の幸福感には雲泥の差が出ると思われますが、きちんと話を聴かなければ決して気づかないはずです。

 その意味でも、コミュニケーションを億劫がらないことが大切です。発想を引っくり返して、昔のことを積極的に聴いてみるというのも手かもしれません。思いもよらない話を聴くことができる可能性もあります。

 この他、PCCの方法論で簡単に採り入れられそうなのは、認知症の人を騙す、能力を使わせない、子ども扱いする、無視する、強要する、後回しにする、などをしないことです。

 試して実害が発生しそうもない事柄であることは、ご理解いただけると思います。

 PCCを知っておけば、将来、家族だけでは認知症の人を支えきれなくなって施設の力を借りることとなった時、そのケアの質を判断するのに役立てることができるはずですし、施設に入るのが本人にとって悪いことばかりではないという安心感も得られるはずです。

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