全国一律は大ウソ 保険医療に提供格差
健康保険で認められる医療行為は、全国どこでも同じと思っていませんか? 確かに値段は一緒(物価は全然違うのに)ですが、保険からの支払いが拒絶される(かもしれない)行為は都道府県ごとに違っていて、そんなローカル・ルールが少なくとも万件単位で存在すると分かってきました。実際に提供されている量も、数倍違うことが珍しくない、とか。不公平ですよね。
本誌編集発行人 川口恭
ローカル・ルールの原因は、国民皆保険制度の中で、医療機関や薬局が診療報酬を請求してから支払いを受けるまでの流れ(図1)の中に存在します。
審査支払機関なるものが、被保険者の資格や請求の内容をチェックして、問題がなければ請求通り支払い、誤りがあれば返戻(差し戻し)や査定(減額)を行うことになっているのです。そして、この審査支払機関が、いわゆる社保の被用者保険と、自営業者などが加入する国民健康保険(国保)の2系統それぞれ別個に存在し、しかも都道府県支部ごとに独自の審査を行っています。
審査は、全国一律の診療報酬点数表と厚労省の通知などを根拠に行われますが、白黒はっきりしないグレーゾーンがあること、さらに正当な理由があれば医師の裁量権を優先して構わないという通知もあることから、結局は審査支払機関の判断次第というのが実情です。そして、その判断基準が機関支部によって異なるのです。
平たく言うと、1都道府県ごとに2種類、全国で94種類の審査基準が存在することになります。
都道府県ごと健康保険が完全に分離されている、つまり、その都道府県で使われる医療費が、すべてその都道府県の人たちの保険料によって賄われているなら、基準が別々でも、他地区の人間がとやかく言う問題ではありません。
しかし実際には、被用者保険の保険料や公金など全国一体で賄われている部分が相当にあり、であれば都道府県によって基準が異なるというのは、不公平です。それがどの程度の不公平になっているのか、その不公平さを甘受すべきメリットはあるのか、確かめる必要があります。
紙時代の名残り