死因究明検討会3

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2007年06月08日 11:49

年金だ、コムスンだ、と厚生労働省所管領域の大騒ぎで
クラブ詰め記者たちは、てんやわんやだと思います。
当然、検討会など聴きに行く余裕もないでしょう。


でも実は本日これから、第3回目の
『診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会』が開かれます。
こんな時こそ、ニッチなメディアの出番。
ということで、しっかりと傍聴し、後ほどご報告いたします。


傍聴を終え、帰社した。
詳しくは後ほど書くけれど、今日は色々な意味で面白かった。
議論を忠実に追っていくと
死因究明機関を実効性のあるものにしようと考えているなら
厚生労働省は検察庁に対し
福島県立大野病院事件の公判について
訴訟取り下げを要請すべきだ、という結論に達してしまうからだ。


今回は、前回に引き続き参考人からの意見聴取。
参考人は
日本法医学会から中園一郎理事長(長崎大学教授)と
福永龍繁東京都監察医務院院長。
日本病理学会から深山正久副理事長(東京大学教授)。
それから元検事で退官後は医療過誤をライフワークに
しているらしい飯田英男弁護士の3分野4人だった。


質疑は後回しということで、3分野の人が連続で説明をする。
今回も説明時間は1分野につき10分。
繰り返しになるが、いいのか? こんなことで。
各参考人とも説明を端折っていかざるを得ないので
資料が公開されたら、そちらもぜひ併せてご覧いただきたい。


トップバッターは中園氏。
「最初に申し上げたい。法医解剖鑑定が誤解されている。
 確かに警察・検察の嘱託で行われるものではあるが
 公正中立の立場から死因究明を行っているものである。
 死因究明のため行政機関内に調査組織を設置することには賛同。
 ただし、組織の透明性・公平性をどう確保するのかが一番重要。
 さらに強制力のある調査・捜査機能を有しなければ機能しない。
 そのためには『剖検センター』機能が必要」


という辺りまで話したところで
松谷有希雄医政局長が誰か(大臣かな)に呼び出され
慌ただしく上着を着て出ていく。
戻ってきたのが約40分後で、その後また25分ほど中座したので
半分以上聴いてないことになる。
大変なんだろうなあと同情すると同時に
いいのか?こんなことで、と再び思う。


気を取り直して中園氏の続きを。
「法医解剖の欠点は
結果を遺族にも医療機関にも開示できないこと。
ぜひとも検察には開示できるようなシステムを考えていただきたいし
そのように学会としても働きかけていきたい。
医師を免責することは一般国民の理解を得られない」


論評は質疑の際にまとめて行うとして次に福永氏。
「23区では年間1万2千件の異状死があり
そのうち医療関連のものは200件を超える程度。
そのほとんどを監察医務院で解剖・死因解明している。
モデル事業へ20体流れたが、ほんの一部。
モデル事業へ行ったのが少ないのは
土日だと受け付けられないとか、遺族の解剖同意が必要とか
病院のモデル事業への理解が足りないなどの要因と思われる。
その数少ない経験から言うと
臨床医の豊富な情報を受けながら解剖するのは
(法医学者単独で解剖するより)有用だと思う。
ただし、実際に調査組織を機能させるには
人口100万人あたり1人の医師が必要で
24時間対応するには100万人あたり3人ということになる。
その他に臨床検査技師や調整看護師も必要。
監察医務院に準じる組織にならないといけないが
監察医制度が全国で徐々に縮小してきたのが実情」


続いて深山氏。
「現代の医療は非常に複雑なものになっており
死亡直後に合併症による死亡、事故死、過誤死
を振り分けるのは困難であり
まして警察に振り分けるのは不可能。
よって、
これらの区別なく
診療関連死は全て調査機関へ届け出るべきであり
事故死、過誤死の疑いがある場合、さらに遺族が強く希望する場合
死因究明のための調査へ進むべきである。
明らかな過誤に基づくと判断された事例に限って
評価終了後に「異状死」として警察へ届け出る。
この際、司法解剖だと情報公開が難しく
医療機関が死亡診断書を作成できないのだが
そこは医療機関に死亡診断書を作成できるようにすべきである。
この際の解剖は法医解剖ではなく
原則として病理解剖で行うべきである。
なぜならば、現代の複雑な診療関連死は
臨床医が参加しなければ評価することは不可能だからだ。
臨床医と病理医とは日常的にCPCという形で連携しており
その手法を準用すればよい。
法医学専門家と司法関係者に
評価終了時点で監査を受けることとする。
また医学・病理学の術後や表現は
説明に多くの時間を要するものが多く
それを遺族に解説するような医学アドバイザーの配置が望まれる。
これは調査の後に続く裁判外紛争処理にも有用であろう。
メディエーションというよりは報告書の解説が主な仕事である。
なおモデル事業の実績から推定すると
調査機関へ回ってくるのは当初は年間400件程度で
その後、どこまで増えるのか分からないが
現在全国に病理専門医が1928人いるので
そのうち2割が年に2例解剖すれば最初は回る。
調査・分析を行う人材の育成については病理学会が協力できる。
今後の課題としては病理医の不足があり
病理医へのリクルートを促す仕組みが必要。
いずれにしても、この制度を病理学会は全力で支えていく」


最後に飯田氏。非常に刺激的な文言が並ぶ。
「最近、不正確な情報が医療関係者の間で飛び交っている。
まず正確な情報をお知らせしたい。
警察への医療事故届出は年間200件以上あるが
そのうち検察が起訴したのはH11年1月からH16年4月までで
79件。年平均15件しかない。
刑事医療過誤事件として処罰されるのは
警察へ届け出られた事例の数%に過ぎず
立件送致されても大部分が不起訴になっている。
刑事医療過誤事件が増えたのは
社会情勢の変化により
特に大規模病院を中心とした届け出が増えたためであり
捜査側が積極的に立件しようとしているなどというのは
根も葉もない話に過ぎない。
また医師法21条の改正についても議論になっているようだが
それは順序が逆である。
調査機関設置は何のためで、どういった経緯だったか。
最近の医療過誤訴訟の増加は
患者と医療者との信頼関係の崩壊から始まっているのであり
この問題の解決には信頼関係の回復が不可欠で
そのためには医療者が自らの手で
医療事故の真相究明に当たらねばならず
医療界が初めて自らの手で作業に取り組んだことは高く評価できる。
しかしながら
「刑事訴追されるのでは医療をやってられない」という
日本医師会的意見を言う人は
なぜこんなことになったのかを考えるべきであり
他へは盛んに文句を言うのだが
だったら自分たちは一体何をしたのか、と言いたい。
しっかりとした中立・公正・透明な第三者機関ができることによって
かえって医療過誤訴訟増加に歯止めがかかることを期待できる。
第三者機関には医療関係者だけでなく部外の第三者
特に患者側代表を参加させることが大切。
患者側が参加することによって多少不満があっても受け入れ
信頼関係回復へとつながる。
また第三者機関設立の目的は再発防止だという意見もあるようだが
患者側が最も求めているのは真相の究明であり
再発防止は副次的に医療機関側が考えればよいこと。
再発防止に目的を限ると、調査結果の
活用・公開への消極的態度につながると危惧する。
第三者機関の調査結果を患者側に説明するのは
当事者である医療側の責任である。
一番心配なのは医療側が第三者機関に丸投げすること。
調査報告書は行政処分に活用するとともに
訴訟資料としても活用すべきである。
すぐ訴訟につながるのでないかと医療者は心配するけれど
むしろそうはならない。
事故の届け出は義務付けること。
任意に任せるときちんと届けられない。
医師法21条の問題は、医療事故の届出制度が整備されれば
自ずから解決の道筋がつく問題であり枝葉の問題。
日本医師会提案のように法改正を先行して行う必要はない。
医療過誤を刑事免責とすることは国民の理解が得られない。
第三者機関の判断が中立・公正なものであれば
捜査・公判でも調査結果が尊重され受け入れられると期待でき
委縮医療を招くとの批判は的を射ていない。
処罰されている医療事故はほとんどが未熟な医療者によるもので
むしろ医療界がその未熟な医療者を何とかする方法を考えるべきだ」


非常に刺激的なコメントの数々を長々と失礼した。
だが、この飯田氏の発言によって
突如霧が晴れるように何かが分かった気がする。
長くなってきたので、ここでいったん稿を改める。

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