9・19中医協傍聴記2

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2007年09月21日 13:44

続いて保険医療材料専門部会である。


保険医療材料専門組織の松本純夫委員長
(東京医療センターの院長の方であろうか?)
松村啓史専門委員(テルモ常務)
小野孝喜専門委員(ムトウ副社長)
松本晃専門委員(J&J社長)
の4人が意見書を読み上げ、それに関して議論するスタイル。
それぞれの意見書は、近く厚生労働省サイトにアップされると思うので
そちらをご覧いただきたい。


質疑応答である。
対馬委員(健康保険組合連合会専務理事)
「松本委員長にお尋ねするが『一定幅』の適正化とは、方向性で言うと上げるのか下げるのか」
意味がよく分からないと思うので補足すると
(詳しくは次号ロハス・メディカルをご覧いただきたい)
2年に1度の価格改定の際
新しい価格(ほぼ間違いなく値下げになる)を決めるには
まず市場実勢価格の加重平均を割り出し
そこに一定割合(一般の医薬品は2%、医療材料は4%)上乗せする。
その一定割合のことを行政用語で『一定幅』と言うのである。


松本委員長
「委員会としては当然下げる方向である。上げるのは一定幅の部分ではなく、イノベーションや新規性の評価によるべきだ」
上乗せ幅が大きすぎるから引き下げるべきとの発言である。


鈴木委員(日本医師会常任理事)
「内外価格差の調整をする品目は281区分をもっと絞るべきということか」


松本委員長
「はいそうです」


遠藤分科会会長(学習院大経済学部教授)
「では私からも一つ質問。我が国特有の流通システムや審査期間等が材料価格に与える影響の把握などを踏まえて適正な、というこれも対馬委員の表現を借りると上げる方向か下げる方向か」


松本委員長
「委員会として議論したのは、卸も含めた中間での流通について、もう少し情報がほしいということ。特にOECD諸国との違いをぜひ知りたい。審査期間については長いので、特にペースメーカーなど循環器系の材料について、メーカーがモデルチェンジした後に旧機種を審査するようなことが起きている。新しい有用なものをできるだけ早く患者さんに届ける観点が必要ではないかと考えている」


何だか妙な話である。
価格決定の根幹にかかわる論議を行っているはずの
専門組織の長が「情報が足りない」と言っている。
では、一体何を根拠に価格を設定しているのだ?


鈴木委員
「松村委員に質問だが、医薬品が承認から保険収載まで原則60日以内なのに医療機器は1年にもなるというその違いは何か」


遠藤会長
「承認後の収載が遅いということについて、これは事務局から説明をお願いしたい」


医療課企画官
「一言で申し上げると、より多くの要素について検証する必要性があることと、それから区分分けの必要性もあるということになる。類似機能区分は620ある。医薬品の場合は科学的な根拠いわゆるevidenceのほかは薬学、薬理学を検討すれば済むけれど、医療機器の場合はその他に物理学、工学、外科学、解剖学といった観点からの検討が必要で、多岐にわたるので時間がかかってしまう」


鈴木委員
「一定幅は薬の場合は、やはり4%?」


企画官
「2%です」


質問者不詳(鈴木委員)
「情報が足りないということだが、業界にも協力してもらう必要がないか」


松本委員(J&J社長)
「あらゆるデータに関して秘密があるはずもなく、程度にもよりますが、必要なデータは出します」


対馬委員
「一定幅の維持が必要だと業界側の専門委員は主張するが、それを裏付けるデータが少ない。定性的な主張だけでなく、業界としても色々なデータを出してほしい。ところで機能と価格の関係はどうなっているのか。新しく機能が高ければ価格も高いというようなデータはあるのか」


企画官
「手元にはそのようなデータがないが、探してお示しできるものがあればお示ししたい」


松本委員
「ある意味では望むところ。新しいものの方がいくらか高いということはあるけれど、償還価格は一つという問題がある」


小島委員(連合生活福祉局長)
「小野委員の主張としては4%を引き下げる方向はないということか」


ここで小野委員が、何だか要領の得ない発言を続けて
部会長から「手短かにお願いします」と注意される。
部会の持ち時間は1時間弱しかないわけだから
時間を浪費させるというのは有効な手段なのかもしれない。
で、発言の趣旨を要約すると以下のようになる。
「医薬品の率が2%だからというが、今は材料は4%の上乗せなのだから、2%にするということは一律の2%カットと同じことになる。そもそも、価格は天井として機能していて、古いものはどんどん下がっていく。新しいもののことを考えると、すぐに2%にするというのは時期尚早だと思う」


これも何を言っているか意味不明だと思うが
医薬品と違って、医療材料の場合
同じ働きの製品だと旧製品も新製品も同じ価格で収載されるのだ。
業界からすると確かに困った問題なのだとは思うが
最後に経団連の丸山委員からキツイ一言が出た。


「財界から来ている者としての意見だが、説明を聞いて、薬が特殊で機器は他の一般産業と同じだと思った。医療機器のライフサイクルが2年足らずで短いと言うけれど、半年くらいしか商品のライフサイクルがないような業界もある。小野委員は、一定幅維持の理由の一つに流通の問題を挙げているけれど、必要なものを必要な時にお届けするのは当たり前ではないか。これを嘆いていても仕方ない。製品価格の低下にも耐えていかなければならない。既に様々な業界で、そのための知恵・手法が蓄積されているから、ぜひ学んだらいいと思う。繰り返すと、流通の問題を価格維持の理由に使うのは許されんかもしれんなあという気がする。ビジネスのあり方としてはもっともっと努力しないと、日本の医療機器を支える立場としていかがなものか」


業界にも言い分はあると思う。
厚生労働省の要求をクリアするには費用がかかるのだ、と。
しかしながら丸山委員の発言は要するに
医療はもはや厚生労働省の顔だけ見ていれば済む聖域ではない
と、業界と厚生労働省に対して引導を渡したのだと思う。


今後の展開が気になるところである。
こうして55分ほどで部会は閉会した。
(つづく)

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