TVCMに関して

投稿者: 加藤大基 | 投稿日時: 2008年01月21日 23:06

皆様、大変ご無沙汰しております。

すっかり更新を怠っていましたが、昨年11月末のCTで、画像上の再発は見られないことが分かり、ありがたいことに術後1年半を無再発で経過しています。
しかし、5年無再発まではまだ3年半あり、気が抜けない状況には変わりありません。

今回は、唐突なお話ですが、今週末より生命保険会社A社のTV(+ネット)CMに私が出演することに関しまして、少々(長大な?)説明をさせてもらえればと思います。

はじめにこのお話があった時、私は断るつもりでした(事実、断りました)。
理由はいろいろありますが、第一に、一私企業の宣伝に出演することに対して、少なからぬ抵抗がありました。
また、TVCMに出ることで、自分が不利益を被るケースがありうることが比較的容易に予想されたことも、逡巡した理由のひとつです。

そもそも私は、A社を含め生命保険に加入していませんでした。
(因みに、現在放映中の鳥越俊太郎さんは、A社の保険に入っていたそうです)。
当然というべきかもしれませんが、私はがんを患った現在も生命保険に加入していません。
したがって、私はA社の保険を勧める立場にはありません。

しかし、多くの人が「がんを知る」機会を増やしたいというA社の取り組みの一環という話で、最終的に出演に合意しました。
したがって、当然ながらCM中で私自身が保険について触れることはありません(そのような内容であればお断りしていたでしょうし、もとよりオファーもなかったでしょう)。


そもそも、私ががん患者だからといって、私より若くして進行がんと闘っている人の気持ちを代弁することはできないし、そのような人を差し置いて、私ががん患者の代表のように扱われることは、極めて心外なことだと考えています。
現在、私もその治療の一部に関わっている若い進行がんの患者さんのことを思うと、仮にそのように扱われることがあるとすれば、おこがましいとすら感じます。

しかし、「がん」も早期発見・早期治療で社会復帰も十分可能性なのだというCMのメッセージ性にかけることにしました(とはいえ、私も再発の可能性は十分あり、いつ再発してどうなるかは誰にも分かない状態ではあります)。


「がんなんて、まだまだ大丈夫」と思っている人に、若かろうがタバコを吸わなかろうが誰しもなりうる極めて身近な疾患なのだという当たり前の事実を、改めて認識してもらいたいと考えています。
さらには個人的な希望として、がんに関心を持ってもらい、他の先進諸国と比して極めて低い検診(特に有効性の証明されている検診)受診率を上げていく動きの一部を担うことができればと考えています。


上記のように、一私企業のCMに出演することを始め、そのほかにも様々な批判的なご意見も今後頂くことになるかもしれません。
しかし、デメリットを上回るメリット(上記のような)があればと考えて出演しています。
必ずしも私の意図が、同CMで具現化されているわけではないかもしれませんが、多少なりともご理解いただき、多くの人が「がん」を自らの問題としても考える契機になればと思います。

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