ビジョン新検討会4(1)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年08月21日 21:16

前回に続いて、外では雷が鳴っていた。


今回も密度濃く2時間あって全部書き終わるには少々時間がかかりそうなので、小刻みにご報告する。


委員は全員出席。その他に参考人として井上範江・佐賀大学看護学科教授と山田芳嗣・東京大学麻酔学教授の2人。全員の名前は、こちら参照のこと。また大量に出されている資料は、いずれ厚労省のサイトに上がるはずなので、そちらをご覧いただきたい。


高久
「本日は医師、看護師、コメディカルの数、スキルミックスを中心に検討して参りたい。事務局から提出資料について説明をいただいた後、出席のお二人にお話をいただき、その内容に関してフリーディスカッションしたいのだが、その前に3人の委員から説明をしたいとの要望が出ているので、それをしたいただいた後にフリーディスカッションしたい」


まず事務局が看護師の就労状況について説明。最後に「土屋委員ご要望の資料」として『特定機能病院に従事する医師数*常勤換算値』というのを出したところで土屋委員がクレーム。


土屋
「これでは使えない。常勤換算値でなく、保険医登録数を出してほしい。なぜならば前回も述べたように例えば慶應では年間250人の大学院生を取っているが、彼らも診療にあたっている。そういう生の数字がほしいのであって、保険医登録をしていなかれば診療にあたれないから、きちんと保健所に届けているはずだ。その数字が出てこないと、医師の偏在について議論できない」


続いて井上教授のプレゼン。
「コメディカル不足に関して、看護師の人数と教育という観点から述べたい。

まずは看護師の人数が多くなると患者の安全性が高くなるという話から。アメリカ健康保健福祉省という政府のエビデンスレポートで患者対看護師の比率が常時4対1の時の死亡率を基準とすると、5対1だと7%、6対1だと14%、7対1だと23%死亡率が上がるというデータが出ている。同じようなデータがJAMAにも出ている。日本の一般病棟の最高の基準は7対1だ。常時7対1と言っても、日中は検査や処置があるので50病床あたり10人看護師がいるけれど夜間は7〜8人と配置が少なくなる。まして、これが旧来の最高である10対1だと夜間には3〜4人ととても少なくて大問題だ。日本の100病床あたりの看護師数は、英米伊独4ヵ国平均の4分の1しかいない。また病院は看護師だけに限らず様々な職種の人々によって支えられているのだけれど、その全職員数で見ても、やはり4ヵ国平均の24%の人数しかいない。

次に、看護者の教育水準の向上は患者死亡の減少をもたらすという話をする。これも出展はJAMAだが、全体の中で学士を持つ看護師の割合が20%の場合、患者1000あたりの死亡者数は約21人いるのに対して、学士の割合は60%になると3.6人減る。重症合併症患者の場合、1000人あたり14.2人ともっと大きく減る。この結果には看護師の経験年数との相関はなかった。現在の日本の看護師養成定員で見ると、大学は少しずつ増えてはいるが全体で見ると15%という状況だ。大学の場合、ずっと入学時も卒業時も定員を少し超えており入学時と卒業時に差がほとんどないいるけれど、3年以下の養成過程の場合、入学時で若干定員割れしているうえに、卒業時では5−8ポイント程度さらに下がる。(要するに途中でドロップアウトするということかな)

先ほどの事務局の説明にもあったが、現在の看護師不足がどのように起きているかというと、養成数は十分なのだが離職者が多い2005年末の病院就業看護師数は62.2万人、これが1年後には63.9万人と1.7万人増えた。しかし実は06年4月に新卒就業者が3.9万人いた。その差の2.2万人はどこへ行ってしまったかというと、この年の離職者が8.13万人、再就業者が5.93万人で、完全に離職してしまった人が2.2万人いる。こういった人々が蓄積して、潜在看護師55万人という数字になっているのだと思う。

その離職理由は、1人分の業務量が多いということ、人数が少ないことによって余裕のないシフトになり日勤夜勤のシフトの中で睡眠時間も十分に取れないということ、現場で求められる能力と学んできたことのギャップといったものだ。そこから浮かび上がる問題は、一番は人員の不足、それから卒後専門教育の機会不足、キャリアアップのための教育に時間が取れないとか新人看護師のための研修がないとか、各病院で工夫はしているがしっかりしたものはない、もう一つ最後にライフスタイルに合わない勤務形態である。

重大な問題として、病院勤務看護師はいったん離職したら復職しない。一般の働く女性の就業率はM字カーブを描くのだが、病院勤務看護師は25〜29歳でピークになった後は一貫して右肩下がりになる。また看護師の就業形態を見ると、日本では97%の人が週に35時間以上働いており、欧米と比べて非常に固定した就業形態しかないことが分かる。それから大卒者の早期離職率は養成所卒に比べて10分の1である。

最後に結論として、看護師不足への対策を述べる。まずは雇用者数を増やすことと離職防止が必要であろう。中期的には高卒後4年間の養成過程を標準化すると共に継続的に学んで専門性を究められる方向性が必要であろう」
(次項へ)

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コメント

 7対1看護は結構なんですが、看護師不足のさなかに実行されたおかげで、7対1どころか10対1を確保できない病院が続出しています。これらは病棟閉鎖に直結しますし、疲弊した看護師が辞職して、さらに悪循環を招いています。

 一方でブランドにかけて全国からかき集めたおかげで、東大病院など昨年は「病棟の3から4割が新人」なんて事もあったようで。これは病棟の1/3が使えないという事じゃありません。彼女らを教育するために手を取られるので、実質フルに働けるのは2割くらいしかいないと言うことなんです。

 そういう実態をご存じなのかしらと、この発言を見ると軽くむかっ腹です。「増員と離職防止が必要」というご意見には賛同するのですが、そのための資金はどこから?というのも気になるところ。

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