ビジョン新検討会4(2) |
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投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年08月22日 05:29 |
続いて麻酔科の山田教授。
「麻酔科医は足りているか、というタイトルでお話させていただく。まず麻酔科医の専門性はどのようなものか。診療領域の中心は手術麻酔であり、これは外科的外傷に対する全身管理と定義できる。この中には当然中枢神経系の抑制も含まれ、ここからICUや救急といった領域に広がっているのと、もう一つペインクリニックや緩和ケアという方向へ広がっているのとある。
手術麻酔のリスクがどの程度あるかというと、(説明が早すぎて追いきれなかったので資料が上がった段階で加筆予定)1万症例あたり重大例が5例、危機的事例が16例でそのうち6例が死亡している。このように非常にリスクを伴っている。いうならば手術を行うのは外科医だが、全身管理を行って命をあずかっているのは麻酔科医である。麻酔科医の不足は臨床研修必修化によって顕在化したが、全体の背景としては受容が増加したことが挙げられる。手術数も増えたし、安全な医療を求める国民の声も高まった。93年と05年の9月1ヵ月間のデータを見ると全身麻酔の件数は12万例から16万例弱へと順調に増えている。急性期医療における手術の重要性が増したのがある。一方で外科系の医師が麻酔を担当するというのが05年調査でも30%程度あるのだが、麻酔のリスクを忌避したいということと外科医の本業が繁忙化したということとで急速に、こういう事例が減りつつある。
これに対して麻酔科医数がどのように推移しているかというと、標榜医は順調に伸びている。ただし現在の専門医制に比べて不備な点として、いったん標榜認定されるとそれが永続される。よって亡くなっても現場から離れてスキルが失われても標榜医の数のうちに含まれてしまう。専門性を保持していることを担保している専門医の数でみると、この間に5000人から6200人に増えたけれど手術数の増加にやっと対応できる程度の伸びでしかなかった。ある程度増員の方向をハッキリ打ち出していかないと、以前は非常に若い科だったのだが、段々高齢化していっており50代になると手術麻酔の現場から離れていく人がグンと増える。それから若年層においては女性の割合が多く、その離職率の高さも問題になる。国際的に見ると英米独すべて日本より麻酔科医の数はグンと多い。手術の質を高めるためにも必要であるという認識が国際的なものだ。
さて麻酔科医の不足を職種間の連携で補えないかという議論がある。エビデンスとして、麻酔看護師が麻酔科医と連携せず単独で麻酔施行した場合はアウトカムが下がる。よほど考えた制度設計をしないと手術の質・安全の低下に至ってしまうことを認識していただきたい。
何件もの全身麻酔手術を同時並行で行う大規模施設ならば麻酔科医と麻酔看護師の組み合せで効率化できる。しかし日本のように中小の施設が多いと、日本全体で平均するとだいたい1施設あたり1日1〜2件にしかならないので、その場合は麻酔科医が必要になってしまう。ただ麻酔科医の存在が手術の安全性や質の確保のために大切なのはたしかだが、その数を増やすという対応策だけでよいのか。コメディカルとの協働を当然考えなければいけない。その場合、まずチーム医療の確立があるべきで、その前に権限移譲だけすると危険な医療になる。まずチーム医療確立が先という順番が正しい。チームとして麻酔専門医と協働できれば麻酔看護師の存在は質向上と効率化に寄与できるだろう。その教育はどうするかといえば、当然麻酔科学会が積極的にサポートする責務があると考えている。術前から術後管理までトータルでリスクファクターを把握し、それに対処していく方法の教育を行う。というのがリスクファクターは術前のものが大きいので、それを把握せずに麻酔を行うのは危険だからだ。看護師が在職のまま、ここが非常に大事だと思うのだが、研修を受け麻酔看護師としてスキルを身に着けられるよう、ぜひとも予算の手だてをお願いしたい」
(続きは次項)