ビジョン新検討会4(完)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年08月25日 22:30

一昨日・昨日と所用で都内を離れておりました。
ら、ちょうど、そこにこの検討会の5回目、6回目が開催されて
まったく傍聴できなかったため
この報告に、あんまり意味がなくなってしまいました。


そうは言っても記録のため程度には意味があると思うので
最後のディスカッションの部分も書いておきます。


土屋
「スキルミックスの議論に入る前に海野委員のまとめられた予算について案をとってぜひまとめよう。メディエーターについても来年度予算に盛り込みたい。今朝、厚生労働省の医療安全推進室から、がんセンターに見学に見えたんだけれど、いらした方が医療安全担当の専従者が1人しかいないのかと驚いていた。ぜひ、メディエーターだけでなく事務職員の枠も確保してほしい。大野病院の件でも、手術中に家族を放ったらかして誰も説明をしていなかったという。こんなことをされて怒らない方がおかしい。ところが実際の現場には、そういう時に遺族に説明をする要員がいない。医療安全の取り組みは色々と行われているけれど、クライシスマネジメント、ことがあった時にどうするかは全然できていない。県病院局に対して資料を求めたのに、加藤医師の逮捕まで何の連絡もなかったとも聞いている。ぜひ、そういったところの予算化をお願いしたい。こういったことができないと、なかなか国民の満足は得られないと思う」


岡井
「予算と離れてもよろしいか。コメディカルに今まで以上に活躍してもらって需要増大に対応するとなると、川越先生も仰るように法律に引っかかっちゃうことが結構出てくる。助産師も通常分娩ならOKと言われても、じゃあ会陰切開はどうなんだ、それが許されていなければ、結局医師が必要じゃないかということになる。ある程度、本気で考えていかないと、結局全部医師に回ってくることになるので、ぜひ議論していただきたい」


舛添
「質問なんだが、まず山田先生、歯科医は麻酔ができるから活用したらどうかという人がいるけれど、それについてどうだろうか」


山田
「はっきり言うと、いろいろな他職種のマンパワーの活用はチーム医療が組まれている状況ならプラスに働くであろう。しかし歯科医が麻酔に適すかどうかは慎重に考えるべきだと思う。というのも医師と歯科医とは根本的に違うものだという前提が必要。歯科医の担当は歯と口腔、医師は全身。冒頭に私が説明したのは、麻酔医の仕事というのは外科的な傷害の際の全身管理なのであって、単純に患者が意識を失っている状態にすることではないということだ。全身リスクは重大なものがあり、しかもその頻度が高い。しかも、顕在化しているその周辺に10倍の危ない患者がいる。漸進的な基板のない歯科医を使うのは慎重にした方がよい。欧米で言う所のPA(フィジカルアシスタント)に対応する位置づけでチームの一員として用いるならプラスになるだろう」


舛添
「もう一つは川越委員に伺いたい。訪問看護を介護保険の枠から外せという件、具体的に何が問題なのか」


川越
「一つは介護保険は契約が主体になるので手続きが繁雑になること。書類書くことが多いし、事前に決めた通り計画的に進めることを求められる。医療はたとえば『30分で済ませる』などといった計画通りにはいかない。ナースが本来やらなければならないことをできなくなる。それから、現在だいぶケアマネが力を持ってきている。決して悪い話ではないが、ケアマネは当初医療職の人が多く入っていたのが大部分引いてしまって、そこには理由があるんだろう、福祉職の人がほとんどになっている。そうすると、どうしても医療的なことには弱くなる。医療は一刻一刻変わる。それを一々ケアマネに説明して理解してもらう必要がある。それと介護保険は、やたらと会議が多い」


吉村
「ケアミックスを考える際は医行為なのかどうかを踏まえて考えた方がよいのでないか。書類書きやオーダー、患者さんへの説明は必ずしも医行為ではなかろう。一方でIV入れるとか麻酔とか挿管とかは医行為だろう、会陰切開はどうなのかとか、どこまでやってもらえるかによって状況が変わる。医行為をやってもらうのだとしたら、ナースに対して教育をしないといけないだろう」


高久
「たしかにチームワークを組んでいないとスキルミックスは難しかろう。山田先生に伺いたいのだが、麻酔の場合、最初は指導医がかけて途中から研修医というのは難しいと聞いたことがある。そういうものなのか」


山田
「それは保険請求上の問題だと思う。麻酔管理料を請求するには、最初から最後まで麻酔標榜医が行わなければならない。研修医が何か一つでも行えば算定できない。だから大学病院のように研修や教育を行う施設では麻酔管理料を請求できていない」


嘉山
「看護職の養成は十分だけど足りないというお話について。一言で言うと看護師の労働環境も劣悪だということに尽きる。看護職に限らないけれど環境改善をぜひ折り込んでいただきたい。それから専門看護師の過程は大変に難しい。認定看護師の方も授業料が150万円もかかる。半年も休んで150万円もかけて取るのに、取っても全くインセンティブがないというのはいかがなものか。認定を取って来た人たちのモチベーションは実に高いので、何とかそれに対するインセンティブも予算に入れてほしい」


和田
「患者の視点から見ると、何か改革を行った場合、過渡的には今までとだいぶ見え方が違ってくるだろう。分からないことがたくさん出てくる。そこでコミュニケーションをちゃんと取らないといけないということを必須の課題として捉えておく必要がある。それをしないと紛争や訴訟のリスクが高くなる。どういう形のコミュニケーションを取るか考えておく必要があろう」


大熊
「事務局の説明資料と井上教授の資料とでコメディカルの職種が一致していない。これに関連して資料7を見ていただきたいのだが、諸外国では皆減っているのに日本では精神科の病床数が高どまりしており、この理由は日本ではPSWという職種の人々が活躍できるようになっていないから。空いたベッドを埋めるために認知症の患者を招き入れることが行われており、それは認知症患者にとって最もよくないことだという。コメディカルを挙げる場合、医療と福祉とをつなぐ職種も念頭において、医療関係職だけに限らない方がよいのでないか。

訪問看護ステーションが減っているという件に関しては、おそらく2.5人の壁が影響している。看護師が2.5人いないと廃止せざるを得ないので、それで止めているところが随分多いと聞いている。医師だって1人で開業できるのだから、訪問看護ステーションも1人で開業できて連携できるように規制を外してほしいという声を聞いている。ぜひステーションを増やして、地域の人が気軽に立ち寄れるような社会をめざすよう考えたらどうかなと思う。

それからメディエーターに関しては昨日の大野病院事件判決を受けた遺族のコメントを資料に最後につけたのでご覧いただきたい。裁判では、最後の手術中のことだけしか問われなかったけれど、事前に助産師や先輩医師が注意を促していたのに加藤医師が手術を強行してしまったことについて全く触れられていないということが分かると思う。それから提言もついているけれど実に重要なことがいくつも書かれている。これを見ても分かるように遺族が単に悲しんでいるからそれを慰めたりなだめたりして解きほぐせというようなアプローチは、それが必要なこともあるだろうけれど、しかしむしろ訴訟になるようなものというのは自分たちの負った不幸を二度と繰り返させない、無駄にさせないという使命感に突き動かされていることも多く、方向として見当違いでないか。現実にメディエーターとして働いている方々が燃えつきている。遺族は病院の体制を変えないとできないようなことを望むのだけれど、病院側にそれを受け入れるつもりがないと遺族の気持ちは虚しく空回りし、間に挟まれたメディエーターだけが苦悩する。全社連では『真実を話そう』という取組を行っているけれど、そういう風土をつくり出すことが必要で、院長を先頭に患者に虚心に全てを話すこと、それを話したからといって現場の人間が非難されないように守ること、そういう仕組みの中にあってこそメディエーターは生きるのであって、メディエーター単体でつくっても問題解決にはつながらないと思う。同様にクラークの労働条件が気の毒なくらい劣悪という話も聞く。介護ヘルパーと同様に大切でやりがいのある仕事だと思って選んだのにガッカリして辞めていく現状がある。必要だと思うのなら、きちんと処遇するようお願いしたい」


海野
「メディエーターに関して言うと、大野病院事件でも医療提供側の姿勢が改めて問われていることは間違いないと思う。真実を分かりあえる手だて新しい枠組をつくっていかないといけない。で、実は私は和田先生の弟子で講習を受けたりしているのだが、強く感じるのは、そういう点について医師の教育が不十分だということ。患者の立場で情報を開示し、話し合える場をつくることが、病院というのは難しいところだというのを痛感している。メディエーター講習を受けること経験することで、そういうことに気づくことができる、それが病院を良い場にしていく原動力になることもあるんでないか。そういう効果もあるということを申し上げたい」


大熊
「付け加えると、病院全体の風土が変わらないとダメなんで、要するに医師がそういう考えになっていないのにメディエーターが頑張るとかわいそうな状況に追い込まれる」


和田
「慰めたりなだめたりするのがメディエーターなのではなく、むしろ大熊委員の仰るように情報開示をスキルをもって専門的に行ったりするものだ。大熊委員の仰ったことはその通りだが、現在導入しようとしているところは、みな上がサポートしていて、そしてそれだけ必要とされている。理想的風土として大熊委員が挙げられた全社連は、まさにメディエーターを本格的に導入しようとしているし、現在、メディエーターを導入している病院や病院団体は真実開示を進める先進的なところが中心であって、防御的発想からではない。ただ、中小病院では導入を図れないところもある。ではなぜ入れないところがあるかというと、それは財政的に厳しいから。病院のカルチャーを変えるのと同時に、その導入にインセンティブつけるよう、ぜひとも予算措置としてお願いしたい」


土屋
「和田委員の資料の17ページめの一番下が端的に表しているけれど、医師の受講者のうち31%が院長・副院長であって、上が率先してやるというのが大原則。メディエーターだけ置いて院長が逃げるような印象を受けられたら困るので一言申し上げた」


高久
「たしかに日本の病院にはナースが少なくて、その原因が休職数の多さだというお話があったけれど、井上委員にお聞きしたいのは、医師を増やすときには医学生の数を増やすということになった。看護師を増やすには、看護学生を増やす方向なのか、それとも離職者のリクルートをする方向なのか」


井上
「今までのシステムだと、看護協会も一時期熱心にやっていたけれど、離職した人に少しぐらい研修をしても病院には戻らない。いったん離職すると難しい。まずは早期離職させないために4年制養成にもっていくとともに、病院の看護師数を増やしてゆとりを持てる環境を作ってあげたらいい。大卒が増えればプロ意識を持って働くので自然と定着していくと思う」


嘉山
「病院の雇用数を増やすといっても、どこの病院も確保に苦労している。雇うだけの数がそもそもいないのでないか」


井上
「ライフサイクルに合った働きかたのできるよう、短時間正規雇用のような仕組みを工夫して入れ込んでいかざるを得ない。短時間であっても病院と関わりを保っていると子育てがひと段落した段階などに、また長く働けるようになる。今の大学生は本当にちゃんとした考えを持っているので」


嘉山
「潜在看護師に関する論文を読んだことがある。たしかにいったん離職したら、たとえ研修しても戻ってきにくいという話だった。ブランクが短期間なら戻れる。ところで看護師養成数を増やすのは限界があるだろう。既に全国で学校が160いくつかあって、これ以上増やしても教官の質を保てるのか。むしろ看護協会にお願いしたいのは短期間で戻れるような環境、たとえば病院の中に保育所を設けるといった、そういうことをアシストすることだ」


井上
「仰るとおり。それほど休んでいない人は戻ってこれる。養成に関して言うと4年制大学はこれからも増やしていく必要があるだろう。チーム医療の面からも、判断力を養う必要がある」


嘉山
「ところで、そろそろ予算のことを確認しておいた方がよいのでないか」


高久
「では海野委員よろしく」


海野
「一つは医師養成数で、中長期的なことはとりあえず除いて、まず来年度の医師養成定員を過去最大を目途に増加させる。短時間正規雇用制の普及促進を図る。女性医師が働き続けられるよう24時間保育、病児保育、病後児保育について整備を進める。それから『当直』を実態に見合う『夜間勤務』に改め給与を支払う。いずれは労働基準法に従った労働条件になるようしなければならないが、当面は労働基準法を外れている部分もきちんと評価して給与を支払うところから始めるしかなかろう。

次は医師の偏在と教育の問題。医師集団が自律的に検討する場をつくる。そのための研究班を設置し今年度中に一定の方向性を取りまとめ甲西労働大臣に報告する。地域の基幹病院の定員をまず増やし、派遣前中後のサポートができる体制整備や医療提供力の向上を行ったうえで医師の派遣を行う。小児救急や周産期医療を担当した医師に直接手当を支給する。

3番目は地域医療・救急医療体制支援と住民参加。救急は数のコントロールが必要であり、それをいかに進めるか予算措置が必要だろう。

最後がコメディカルの雇用数と教育のことで、短時間正規雇用制の普及のより雇用数を増加させる。それから卒後の新人教育にあたる看護師に対して指導手当をつける。新人教育が、その後のキャリアや定着には大変重要であり、その教育にあたる人に対しても正当な評価が必要だろう。それから今日は薬剤師の数に関する資料も出してある。とにかく病院の薬剤師がメチャクチャ少ない。今後スキルミックスやチーム医療を進めるうえでも、念頭においておく必要がある」


土屋
「井上委員の資料が端的に示しているけれど、ワークシェアしないと病院には戻ってこないのだけれど、そのためのベースの定員がない。だから戻って来ようがない。今日持ち込み資料で示したのは、特定機能病院と地域医療支援病院でコメディカル雇用を倍増するには年8000億円、400床以上の病院で倍増するなら2兆円以上必要という試算。とにかく雇用の枠を広げないと、病院に戻りようがない」


ふと気づくと大臣がいない。


嘉山
「この会も4回目になるけれど、安全と希望を国民の目線で語るということだった。もう一度整理しておきたいのは、日本の医療はWHOでも世界一と評価されている、しかしながら医療費の対GDP比は27位。ちなみに教育費も29位だ。記者が大勢来ているので、この事実を確認してもらいたい。これだけ医療費が低いにもかかわらず高いと感じるのは、窓口での支払いが高いから。医学部定員増の閣議決定は国民が決めたことだが、教育費を医療費へ回すということを決めたわけではない。医師を増やす際に文部科学省の予算を割かないといけないのでは軋轢を生じる。教育費全体を上げることも、この検討会として言うべきなのでないか。医療費もパイの中で取り合うのでは問題にならない。全体的な増額を担保しないと意味がなくなる。厚生労働省も、医師数増は国民が決めたわけだから、増額を打ち出してほしい」


高久
「おっしゃる通り」


和田
「質問なんだが、海野委員にまとめていただいたものは細かな数値はともかく、項目に関しては概算要求に反映されるという理解でよろしいか。大臣がいないのだけれど、これは厚生労働省の方に伺えばよろしいのか」


厚生労働省の事務方だれも答えず。なぜこんなやりとりが必要になったか最後に明らかになった。


岡井
「合意できれば大臣に答申する形になるのではないか」


嘉山
「定員増については方向性を出したので、これを大臣が出すのだろう。我々の仕事は具体的な数字を出すことでなかったか」


高久
「同じ意見だ。最終的に数字が決まるのは、もっと上の問題だ」


小川
「基本的に医師の技術料や錬度に対する評価が足りない。厚生労働省にお願いしたいのは、国民が日本では世界的に見て立派な医療が行われていると認識するようにしていただきたい。我々はそのために適当な予算を提言して細かなディテールは今後の問題だろう」


高久
「海野先生のとりまとめで過剰な勤務に対する手当てが入っているけれど、私が危機感を持っているのは外科医。内科医は机の前で本で勉強することもできるが、外科医は技術を習得しないといけない。ぜひ外科医を優遇しないと日本の患者が手術のために外国へ行くことになりかねない」


海野
「ドクターフィーとして、手術料、技術料をどう評価して、それを直接収入につなげるかだろう」


嘉山
「すべての外科系学会で技術の伝承がテーマになっている。一番大事なのはトップランナー。難しいことに挑戦するのがいなくなると、戻すのに何十年もかかる」


高久
「では次回以降の日程を事務局から」


事務局
「23日、24日と合宿で行うことになっていたが、諸般の事情により取りやめとなった。次回は27日に行う」


何それ? という感じである。
どうも湯河原で合宿を開こうとしたことに対して記者クラブが「無駄遣い」と批判したらしい。その動きの背後に何があるのかは興味あるところだ。そうはいっても、2日分会合がなくなってしまうと、たぶん議論はだいぶ少なくなるだろう。


そう思っていたら、なんとドンデン返しで、土屋委員ががんセンターを提供して合宿を東京で行ったらしい。私自身が全く油断していて、このことを知らず(もともと傍聴できなかったんだが)、後からCBニュースの報道で知ってビックリ仰天した。
(了)

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コメント

大熊さんの発言が気になったので一言。

この方は刑事裁判と民事裁判の違いを認識してらっしゃらないようですね。この件は遺族が訴訟を起こしたのはないのですが・・・。

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