臨床研修検討会4(2)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年12月20日 15:45

マスメディアの報道によると「臨床研修2年が1年に短縮される」らしいが
検討会を聴いていた限り、そんな結論は出ていない。
ご覧いただきたい。


3人がプレゼンした後で
舛添
「様々なお取り組みをご説明いただいた。冒頭のアンケートの中身にも興味がある。医学生と研修医と3~5年目の医師とでどう変わるか。小児科を見ても医学生はずいぶん志望者が多いようだが、それがどうして減っちゃうのか、色々なクロスをかけて分析し結果を出していただきたい。福井先生のお話では、大学病院と研修指定病院とでそんなに違うのかなあと驚いたのと、こちらのアンケート結果とは食い違う部分もある。看護師の今後についても今検討会をやっている。それぞれもっともなご意見で、何が答えか頭が痛くなるのだが、すべて真実なのだろう。それぞれを総合するような立場が、色々な意見があって探りきれていない。しかし国民の求めているものを考えた時には、抜本的な改革も含めて、医師不足に対応するためという安直な考えだけじゃなくて、安心と希望のビジョンの延長線上にある」


高久
「小川(むつ)先生のところのアンケートは今のままでいいということ?」


小川(むつ)
「はい」


能勢
「今は指導医がいる。今後は指導医をどうやって確保するか」


小川(むつ)
「確保に関しては、これまでと大きな変化はない。弘前大からの派遣が主」


能勢
「数の中に大学院生も入ってる?」


小川(むつ)
「いない。パートでは来るけれど」


能勢
「大学で養成して送る方がいいと考えているか」


小川(むつ)
「7年目以上という現行の基準に従っている。来年度からは新基準で」


能勢
「質の保証は可能か」


小川(むつ)
「指導医の質を高めることも一方では大きな問題だが、病院の質を上げるために、教育病院になることで来る先生たちの質的向上も望める」


小川(岩手)
「医局に中堅医いない中で大学に出せるのはいない」


小川(むつ)
「制度が始まった時には、しばらく入局者がいなくなるというのが大問題だった。大学へ行った時にはお互いに頑張りどころだと言ってきた。少しずつ増えてはいるが、しかし弘前大の場合、どこも教室がスカスカ。でも大学がしっかりしなければ医療の質は保てない。後期研修に関しては大学と連携しながら最近少し息をつけるかなという感じになっている」


矢崎
「アンケート結果を見て、臨床研修病院の満足度が高い。今後どうするか心配だ。小川先生のところは、研修医13名のうち12名が弘前大学へ戻っている。初期の後の行き先が見えていることで安心して来るというのもあるだろう。何かそこに工夫なりコミュニケーションがあるなら」


小川(むつ)
「別にこれということもない。ウチには後期研修を独自にできる能力はないので場合によっては海外研修も含めて専門医を取る取らないに関わらず学問に触れることの大事さは言っているし、指導医も誘いかけているというのはあるかもしれない」

(略)

高久
「では先に資料の5(臨床研修改革たたき)について議論したい。いろいろと書いてあるが全部は無理なので、さしあたって内容をどうするか、期間をどうするか、マッチングは今のままでいいかに絞って議論したい。期間に関しては1年間という意見もあるが急に1年は難しいので、必修1年間であと1年は後期研修につながるような形にして、勝ち取った2年は維持したらと思うが」


斎藤
「基本的な考え方のところに、せっかく両大臣出席の大きな枠組でやっているのだから、医師の教育育成にはお金がかかることを認識すると入れたい。なぜならば指導医の処遇改善が欠かせず、改善しないと長続きしない」


武藤
「2年目をフレキシブルにするにしても1年にするにしても、いずれにしても卒前教育をちゃんとした体制つくって、かなり改善しないとダメ。そこは押さえとかないと」


高久
「その必要性を説明したいが具体的なこととなると、この検討会の範囲を超える。精神としては書き込んでおこう」


永井
「地域、診療科、病院種別ごとの偏在に加えて勤務医不足もノートしておいてほしい。受ける側の希望として大きいと思うので。(略)初期研修の初期というのは、生涯教育の中の初期なんだと思う。というのが後期まで研修だということになると、自治体とかでは臨時職員、非常勤職員の身分処遇になってしまう。(略)」

(略)

高久
「初期は専門研修へとつないでいくもので、そのために2年目はもう少しフレキシブルにする」


辻本
「地域医療枠が1ヵ月になっているが、この地域医療ローテートというのは患者側としては獲得した成果と思っている一方で1ヵ月では不十分という声もよく聞く。保健所へ行って5時半まで待っててねというようなこともあるようだ。ここをきちっと頑張っていただけないか。そもそも地域医療には大学教授や大病院は関心が薄い所でないか」


高久
「おっしゃる通り。第一線の診療所や病院でないとダメよということはある。保健所や療養所では診療能力が身につかない。本当の第一線なら1ヵ月でも、かなりのものが身につくと思う」


武藤
「参考資料で北国の方の大学病院が最初は圧勝していたのに、その後で研修指定病院に逆転されている。これなぜか調べているか」


事務局
「資料は平成15年度の制度開始前からのもので、15年度はストレート研修だった」


武藤
「16年度を起点にしてもトレンドは同じだ。何に起因するのか。北の方は押しなべて大学病院に人気がない。ひとつの答えだと思う」


高久
「大学病院には気の毒な面があって、岩崎先生の研究班の報告によると、学生もいるし研究もしなきゃいかん、で、研修医に集中することができない。研修指定病院ではマンツーマンに近い形で対応できる、と岩崎先生の報告書では、そういうことだった」


福井
「これは厚労省のホームページでも発表しているが、私どものアンケートでは、大学病院い行かないのは一番目の理由がプログラムの問題、二番目が雑用が多いということだった」


大熊
「研修指定病院の条件をきちんと見ていくという話だが、同じように大学病院についてもきちんと見る必要があるだろう。その際には図書館があるとかベッド数とかではなく、プログラム中心に見るべきだろう。参考資料を見ると、やはり研修医が地方ではなく大都会へ行ってしまうというのは伝説に過ぎなかった。事実に基づいて検討しないといけない」


嘉山
「どういう医師を国民が求めているのか。総合医のスタートにつくような人には素晴らしい。しかし例えば外科でいうところのE1という難易度の高い手術をやっているのは、ほとんどが大学病院。その教育力、が衰えるのでないかと危惧している。外科は肺炎から肝障害まで診られないと術後管理できないから教えている。難しいことのできる医師がぐっと少なくなってしまうのでないか。はだしの医師を何百人つくっても、それが国民の求めている医師とは思えない。米国はレジデント教育は素晴らしいがトップランナーをつくるのは実に下手だ。国民の求める医療の中にトップランナーも必要で、これだけでは済まない」


能勢
「初期研修を考えるには、それまでにどの程度の教育を受けてきたかが避けて通れない。どうやって医学部教育に乗っけていくかを考えないと」


高久
「共用試験のOSCE、CBT、大学ごとの卒業試験、国家試験しかない今の時点でどうするかを考えざるを得ない」


嘉山
「医師のキャリアパスを言うと6年間医学部で勉強して24か5で国家資格を得たあとに3つのコースがある。大学に残ると非常勤の医員、もうひとつは厚生省所管の病院に入る、ここでも非常勤、最後が一般病院へ行くコースでこれはインカムの高い常勤医になる。ところが一番キツくて難しいのは大学病院だ。なぜこうなるかというバックグラウンドには、教育にはお金がかかるのにかけてない、医療にお金をかけてない。ここにはマスコミの人も大勢いるから言うけれど、これを考慮していただかないで欧米と違うと言われても当たり前だ。医師のキャリアパスが、この国ではこんなに異常だ。文部科学省にも申し上げたい。このまま交付金を減らして行ったら医学部崩壊が起きかねない」


高久
「ようやく2年間ある程度の収入があることになったのだから」


嘉山
「もちろんそれをやめろと言っているのではなく、2年間を有効に使いながら、問題解決を探るべきと思う」

(略)
小川(順天)
「基本的な考え方のところ。指導医への処遇が大事だということを書き込みたい。研修医制度を考え改善・充実するには教育経費がかかるという話だ」


高久
「これは報告書の中に書かせていただきたい」


(略)
福井
「私のスタンスは、現在のプログラムで当初の目標は達成しているというもの。これを変えることの目的だが、変えれば診療科の偏在がなくなるという考え方か」


高久
「そうではなくて(略)精神はその通りなんだが、偏在が起きている状況の中で後期研修と結びつけることを考えると、自分たちの将来の進路に近いところをセレクトできた方がよいのでないかということ」


福井
「(略)変えれば、より良いプログラムになるだろうという説得力がよく分からない」


高久
「私自身も迷っている。(略)しかし、この委員会は元々変える必要があるということで開かれているので、変えなくてもよいなら私も気が楽なんだが」


(略)
矢崎
「それぞれの病院の視点・機能・役割が違う。制度設計をした時の議論で、私が必修ではなくて選択必修にしたらどうかと言ったら猛烈な反発をくらった。各診療科が反発して調整に困った。見直しの時には選択必修が入ってもよいのでないかと思う。たとえば小児科は必修だが、本当に回ってほしかったのは小児救急だったのに、病棟に貼り付けられてプライマリのところができてないのがほとんどだ。精神科も同じ。今見ると反省点も多い。我々が回ってほしかった急性期の鑑別や隠れた精神病の発見などは病棟に配置されてしまうとできない。実態を調査して見直すことはあってもよいのでないか」


高久
「私も小児科学会の上の方の先生にご意見を伺ったら、救急の中で小児救急も扱ってくれたら小児科は必修でなくても構わないということだった。いずれにしても社会的な関心も高いので、ここだけで決めるわけにはいかない。小川先生のところとか各団体から意見を取ってもらいたい。できれば次回までに色々な団体からご意見を伺って、改めて議論したい。方向について色々あって、ちょっと迷う」


能勢
「人口が偏在しているのに、どうして医師だけが偏在してはいけないのかというのもある」
(了)


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