「NICU補助金の削減に反対」-未熟児新生児学会が「仕分け」結果に抗議

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2009年11月26日 23:02

 妊婦の救急け入れ不能の原因の一つとされるNICU(新生児集中治療管理室)不足を解消するための支援策を盛り込んだ事業が、「事業仕分け」で「半額計上」と判定されたことを受け、日本未熟児新生児学会(戸苅創理事長)は26日、補助金削減に反対する緊急声明を藤井裕久財務相らに提出した。(熊田梨恵)

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コメント

 正直なところ、この声明を発した新生児学会上層部に驚いています。
NICUの増床と言いますが、増床したところでそこで働ける新生児科医がそんなにいますか?
 むしろ、増床ではなく1床当りの新生児科医数を増やすことに対する補助金、NICUの後方病床であるGCUの増床に対する補助金、GCUからさらに後方である障害者福祉施設の増加に対する補助金を求める方が良いんじゃないでしょうか?

 現状の労働環境のままでNICUを増床したところで、中で働く新生児科医の過重労働を招くだけのような気がしますが。

 現場無視のハコモノ志向にしか見えません。

私、この学会の学会員ですけど・・・どれだけ斜め上に走っているんですか、上層部は?

分娩を取り扱う産婦人科医の足りなさは話題になっているので、能天気な日本国民でも多少は理解され始めているみたいですけど・・・新生児科医の足りなさっていったらあり得ないくらいですよ?それであれだけの成績を上げています。お世話になるばっかりの身である私たち産婦人科医からすれば、足を向けてなんて寝られません。

人は石垣、人は城。
何をするにも人がすべてなんです。
機械に電源を入れて新生児をつないでおけばいくらでも治療が出来ます・・・というのであれば、いくつNICUを増床しても結構です。でも実際にはそんなことあり得ませんよね。
NICUに入院する赤ちゃんたちがどれくらいの医療資源(特に「人」)を必要とするのか、実際にどれだけ過酷な状況におかれているか、改善するにはどれだけの資金をどれだけ使わなければならないのか・・・ということを全く無視してただ増やせ!と言われてもどうしようもないのです。

事業仕分けに抗議するなら、「NICU増やせ!」ではないでしょう。
新生児医療の現状を踏まえて、どのようにすれば改善することができるか学会として提言することではないでしょうか。
どうしてこういうどうしようもない声明しかだせないのでしょうか。
がっくりです。

否定的なコメントが3つ続きましたが、未熟児新生児学会の緊急声明は、そんなにおかしいでしょうか?声明文をよく読めば、ハコモノ志向でないことは理解できるはず。今回削減された補助金は、施設整備補助ではなく、運営費補助です。まさに、新生児科医の勤務環境の改善にも資する補助金だと思いますが・・・。

>ひろさん

今回の補助金で削減されたのは
>妊婦の救急け入れ不能問題の解消を図るため、周産期センターがNICUと、NICUを出た赤ちゃんが入るGCU(継続保育室)を増やせるよう自治体を支援する補助金が含まれていた。

とありますように、NICU増床(GCU増床も含まれますが)のための補助金で、運営費補助金ではありません。

僻地外科医 様

 以下のホームページに分かりやすく解説されています。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091116/195526/?P=2

 「運営費補助 → 不採算性が軽減 → 増床の促進」というロジックだと思います。

 増床する場合は、当然、医師等の増員も図られるものと思います。

健康保険と補助金は違います。

わが国の健康保険は雇用者が被雇用者とその家族の健康に対して責任を持つべきだという考え方と、世代間で異なる罹患率・有病率を前提に現在から未来に至る健康リスクの等分負担という考え方に基づいて雇用者と被雇用者から保険料を徴収しています。その財産に応じて国民全体の利益のために集めた税金とは性格が違います。
また支払いの理屈からは診療報酬は行われた医療に対して払われます。一方補助金は何でもありです。
医療経営の立場からは通常経営改善のために診療報酬の中での採算性を問題にします。採算性の悪い部門は補助金があっても医療機関の中で発言力が弱まります。
つまり、補助金でNICUの維持を目指すことは小児科医の地位向上には役立ちません。NICUで働く小児科医が誇りを持って働けるように、さらに将来開業するときにも困らないように、小児医療の診療報酬を上げなければならないのであって、補助金依存の診療を考えることは非常におかしなことです。作ってしまえば儲かるのだけれども、作るには大きな投資が必要である、国として最低限必要なNICUは作ってほしい、という意図でのみ補助金を使うべきだろうと思います。小児医療の中で果たす役割、小児科医要請の中で果たす役割などを考えるとNICUはなくてはならないものですが、作ることと維持すること、財源を間違えてはいけないと思います。

ふじたんさま
>わが国の健康保険は雇用者が被雇用者とその家族の健康に対して責任を持つべきだという考え方と、世代間で異なる罹患率・有病率を前提に現在から未来に至る健康リスクの等分負担という考え方に基づいて雇用者と被雇用者から保険料を徴収しています。その財産に応じて国民全体の利益のために集めた税金とは性格が違います。

申し訳ありませんが、公的医療保険制度の根源的な理解に、社会保険制度の専門家(社会保険労務士)としていささか異議がございます。
我が国の健康保険制度(国保も含む公的医療保険制度)の根本原則は、全ての加入者の所得に応じた保険料負担、すなわ「応能負担の原則」となっています。世代間の負担とか、罹患率・有病率を前提とした負担は、費用負担能力の微調整としては考慮されますが、本質的な費用負担原則ではありません。ふじたんさまのご理解には、公的年金制度との勘違いや混同があるように感じ取れます。

ふじたん さま

>採算性の悪い部門は補助金があっても医療機関の中で発言力が弱まり
>ます。

 採算性が悪い上に、補助金までカットされれば、小児科の発言力は更に弱まってしまうでしょう。

>小児医療の診療報酬を上げなければならないのであって、補助金依存
>の診療を考えることは非常におかしなことです。

 私も、小児医療の診療報酬を引き上げて、補助金に依存しなくても採算が合うようにすべきだと思っています。しかし、診療報酬の事業仕分けの結果や、財務省の査定方針(改定率マイナス3%)などからすると、当該補助金の減額分が、確実に診療報酬で補填されるとは到底思えません。

>作ることと維持すること、財源を間違えてはいけないと思います。

 趣旨がはっきりしませんが、「作ること」は「補助金」、「維持すること」は「診療報酬」という役割分担をすべきという考えでしょうか?

 診療報酬と補助金の関係については、以下のホームページに、社会保障審議会医療保険部会の資料が掲載されているので、ご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/za/0828/a56/a56-05.pdf

法務業の末席さま

>世代間の負担とか、罹患率・有病率を前提とした負担は、費用負担>能力の微調整としては考慮されますが、本質的な費用負担原則では>ありません。

罹患率・有病率の差を現在から未来まで全国民でリスク負担するのでなければ、生命保険のように年代ごとに保険料を変え、いくつかの疾患に罹患した人に対しても保険料を変化させなければなりません。もしそういう制度であったなら、健康保険の破たんリスクはもっと低かったと思いますが、いずれはみんな年老いるのだから全部合計してもそれほど不公平は起こらないだろうという非常に乱暴な考え方で設計されています。

民間保険会社に比べて厚労省が決定的に仕事をしていない点は保険料の集め方にあります。医療費の原資を確保することに対する厳正公正な経営感覚がまるでみられない。そのような甘い金銭感覚では収入不足とはいえ巨額な医療費の運用がうまくできるはずがないでしょう。結果的にこれまでずっと長い間つまらぬ委員会や特殊法人を粗製濫造して霞ヶ関の天下り先ばかり増やし続け、医療費を官僚の食い物にしてますます穴を開けてしまっていますね。
厚労省はまず国民から保険料をきちんと集めて医療費の原資を確保するという基本の仕事をこなしてはじめて公僕としての給料を貰う資格があるということを忘れています。そして集まった医療費全体の運用は厚労省などよりもっと健全かつ公正な経営感覚を持った省庁に委ねるべきでしょう。

>ひろさん
ご指摘のページは既に読んでいます。

>「運営費補助 → 不採算性が軽減 → 増床の促進」というロジックだと思います。
増床する場合は、当然、医師等の増員も図られるものと思います。

 このロジック自体が非常に理解しがたいものなのですよ。現行が赤字の状況で「不採算制が軽減した」場合に、常識的に言って経費(人件費)を増やそうというインセンティヴが働くものですか?

 最も常識的な対応は例えばNICU1床当りの医師数を1名増やした場合には診療報酬上でn点増額すると言う方法でしょう(これに効果があることはすでに1:7看護の導入の時に明白に示されています)。

 診療報酬の改訂には時間がかかるというロジックを示して「単なる補助金増額」を新生児学会上層部は求めていますが、これはNICU増床(収入増)というインセンティブには働きこそすれ、人件費増というインセンティブには働かないでしょう。要するに赤字穴埋めという経営者側の理屈でしかないのです。

 ですから新生児学会上層部が本気で中で働く現場の人間のことを考えて求めるとするならたとえ補助金であっても「NICU1床あたりの医師数を増やした場合には補助金を出す」という形にするべきなのです。新生児学会の声明が斜めにずれているというのはそう言うことです。そうして労働環境を改善した時に初めてNICU増床という言葉が出てくるべきでしょう。

前々期高齢者 さま

 現状の保険料の集め方に、どのような問題があるとお考えですか?また、どのようにすれば、保険料をきちんと集めることができるのでしょうか?

 医療費の運用についても、具体的にどのような問題があり、その解決により、どの程度の効果が期待できるのでしょうか?現状の厳しい保険医療財政の原因は、天下りの問題だけで説明できるとお考えですか?天下りの問題があるのであれば、解決すべきだと思いますが、30兆を超える保険医療財政の問題をあまりに矮小化しすぎてはいませんか?

僻地外科医 さま

>ご指摘のページは既に読んでいます。

 「11月28日 17:28」の僻地外科医さんのコメントで、「運営費補助金ではありません」と書かれていたので、誤解があるのかと思っていました。

 さて、今回のコメントを読ませていただきましたが、どうも議論が拡散してしまっているようです。事業仕分けによる「運営費補助金の減額」という判定が「是」か「非」かという、シンプルな二項対立の議論として整理した方が良いと思います。

 未熟児新生児学会は「運営費補助金の減額」を「非」とする立場から、緊急声明を発表しました。

 僻地外科医さまは、「運営費補助金の減額」を「是」とする立場なのでしょうか?それとも「非」とする立場なのでしょうか?もし、「非」とする立場であるなら、未熟児新生児学会と、考え方に大差ないわけですから、学会上層部の批判は止めた方が良いでしょう。事業仕分け側を利するだけですから・・・。

 もし「運営費補助金の減額」を「是」とする立場であれば、その論拠は何でしょうか?運営費補助金が減額された方が、新生児科医の勤務環境は改善されるとお考えなのでしょうか?

>最も常識的な対応は例えばNICU1床当りの医師数を1名増やした場合
>には診療報酬上でn点増額すると言う方法でしょう
>(中略)
>「NICU1床あたりの医師数を増やした場合には補助金を出す」という
>形にするべきなのです。

 僻地外科医さんの上記の提案は、そのとおりなのかも知れませんが、「運営費補助金の減額」を「是」とする論拠にはなり得ません。Aに賛成か反対か議論しているときに、「私はBにすべきだと思います」と主張するようなものです。

 ましてや、未熟児新生児学会の緊急声明を「斜めにずれている」と批判するのは、お門違いというものです。今回の事業仕分けで、僻地外科医さんの提案のようなことは議論されていない訳ですから、学会の緊急声明に盛り込みようがありません。

 私は、今回の未熟児新生児学会の対応を評価しています。「運営費補助金の減額」という事業仕分けの判定を唯々諾々と受け入れてしまえば、次期、診療報酬改定でも小児科の報酬アップは勝ち取れないでしょう。

 小児医療の関係者は、「小異を捨てて大同につく」というおおらかさをもって団結すべきだと思います。

>ひろさん

 すいません、私が書いていることは論理が飛躍しすぎていたため、議論のずれを生じてしまったようです。

>僻地外科医さまは、「運営費補助金の減額」を「是」とする立場なのでしょうか?それとも「非」とする立場なのでしょうか?

 この2つの立場という点で言えば、はっきり「是」です(なお、正確に言えば運営費補助金は減額ではなく増額の見送りです)。
 何故かを説明します。

 今回の補助金は何かというと、ご呈示になったページにありますようにNICU「1床当り」に対する補助金です。この場合、経営者の立場に立って考えると、そのインセンティブはNICUの「増床」として働きます。1床当りに出される補助金なのですから当然です(まあ、現実的には補助金を加えても赤字ですから、増床へのインセンティブとまでは行かないと思いますが)。
 ここでNICUの施設基準を見ると部屋の広さ、看護師の人数(患者3名当り常時1名)、常時医師がいること等という規定はありますが、実は患者何名当り医師1名という規定は存在しないのです。
 さて、この規定の下に補助金増額という増床へのインセンティブを与えた場合、経営側としては医師数を増やすという方向へ動くでしょうか?むしろ経営側としては医師数はそのままに増床のみを行う可能性が高くないでしょうか?

 この場合に新生児科医の勤務環境が改善されると考える方がおかしいでしょう。この補助金事業では良くて勤務環境が変わらない(増床を行わない)か、むしろ増床することにより悪化すると考える方が妥当だと思います。

 補助金増額の効果としては上でひろさんが挙げられていたように、せいぜいのところ「赤字部門として肩身の狭い思いをしなくて済む」程度のお話しで、増額による勤務環境改善の効果は無い、もしくは悪化させると考えられます。であれば、この補助金に使われるお金は上で私が提示したように「1床当りの医師数を増やすための補助金」、あるいは「診療報酬改訂によりNICUが単独で黒字を出せるように使う」べきでしょう。

 私が新生児学会上層部の反応が斜めにずれていると言っているのはそう言うことです。

僻地外科医 さま

>この補助金事業では良くて勤務環境が変わらない(増床を行わな
>い)か、むしろ増床することにより悪化すると考える方が妥当だ
>と思います。

 猪瀬直樹氏(東京都副知事)の試算では、M-FICU9床、NICU12床、GCU24床の場合で、8,332万円の増額が見込まれていたとのこと。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091116/195526/?P=2

 補助金の増額分8,332万円をどう使うかは、病院経営者の判断次第ということなのでしょう。医師や看護師の増員等により、労働環境の改善に努力してくれる、良心的な経営者が多いことを願っています。

 病院経営に詳しい方がいれば、コメントをお願いします。

>ひろさん

 そもそもこの補助金の目的を考えてみて欲しいのです。この補助金は、ご呈示になったコラムの1ページ目にありますように

> 厚生労働省も出生数1万人あたり20床というNICUの整備方針を見直し、出生数1万人あたり25~30床を目標とする、という方針を打ち出しているが、そのための補助金制度が整っていなかった。厚労省の周産期センターへの補助金はNICUに対して出されておらず、M-FICU(母体・新生児集中治療管理室)という別の病床に対してのみ補助を出していた。これでは、インセンティブが働かない。

 です。もともとが「慢性的に赤字を生み出しているからNICUは簡単に増床出来ない」ことに対する対策として、「増床へのインセンティブを働かせるために」出される補助金です。当然補助金を受けた側には増床への政治的圧力がかかると考えて良いでしょう。

 私が最初の方で「NICU増床(GCU増床も含まれますが)のための補助金で、運営費補助金ではありません。」と書いたのはそう言う意味です(これが論理が飛躍しすぎていたために誤解を招きました。申し訳ありません)

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