理解されていなかった診療報酬と補助金の違い-「事業仕分け」に海野信也北里大教授

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2009年11月28日 06:00

 「人口密度が低かったり、インフラが整っていなかったりと、地域間格差があるために診療報酬で賄い切れない医療提供体制の部分をカバーするのが、補助金の役目。だから補助金をゼロにされる困るのです」―。行政刷新会議の「事業仕分け」で救急・周産期医療に関する補助金が削減される判定が出された際に抜け落ちていたポイントについて、周産期医療制度に詳しい海野信也北里大産婦人科教授に聞いた。(熊田梨恵)

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コメント

元々が、日本の健康保険制度では、都会と田舎の地域の差とか、診療科ごとの違いは一切無視し、全国一律・全科一律の診療報酬制度が原則。

土地が坪ン千万円の銀座のど真ん中で、高級デザイナーの内装品テンコ盛りの超豪華病院でも、土地代なんかタダ同然のド田舎で、耐用年数をとっくに過ぎた雨漏りするよなボロ病院でも、診察料や注射の手技などのレセプト点数は同じ。

1人の患者を治療するのに、ン億円の医療設備を整え、何十人ものスタッフが24時間付きっきりでケアするNICUも、超軽装備で済む診療科でも、同じレセプト点数を適用して、同一治療は同一報酬が原則とするのが日本の公的医療保険。

この一律均一の原則は、全国津々浦々全ての国民に医療保険を適用する、国民皆保険制度を達成できた「秘訣」と言って良い部分。地域や診療科によって、一つ一つ細かな調整係数を設けたら、ただでさえ複雑なシロモノになっているレセプト点数システムが、それこそ1台ン千億円のスパコンでなければ処理できない、超モンスターになってしまう。結果として医療事務のコスト的ムダ排除の逆方向となる。

国民皆保険達成のためとは言え、一律均一の原則は当然デコボコを生じる。全国一律均一の診療報酬では賄えない凹の部分を、国や地方自治体などの公的会計からの補助金や、公立医療機関への繰入金で穴埋めする。

診療報酬と公費補助の2つが両輪となって、日本の医療制度を支えていることは事実だと思う。

法務業の末席さま

「全科一律の診療報酬制度」は、基本診察料、基本入院料などについては仰るとおりですが、それ以外の手技料やNICU、ICU、HCUなどはそれぞれ別個の点数が定められています。また地域差については本当に微々たるものですが地域加算が定められています。

ただ、コストについては都会の土地代金は高いのですが、地方では医療職確保のための人件費が高く、また距離的に無理があるために採算性を度外視した設備も導入しなければなりません。即ち土地代をはるかに超える人件費をはじめとしたコストが地域には必要です。

本論に戻りますが、いくつかの医療機関を選んで、本当の経費を一度計算してみることが何よりも必要なことです。診療報酬に関してはそれぞれにどこの診療科が大変だ、新しい技術を何とかしてほしいという要望だけで点数を決めてきました。本当に必要な費用が出るように診療報酬を決めなおす必要があります。そして、都会と地方の格差は地域加算を定めなおすべきです。維持は診療報酬で、開設は必要なら補助金で、という姿勢でないとおかしなことになります。

また論点を外してしまいますが、この円高を利用して外国から輸入している医薬品、医療材料はこの際一律30%カットすべきだと思います。これを財源として人件費をちゃんと手当てすべきです。為替差益によって外国企業は不当にもうけすぎています。最近の為替レートを知りませんが、数年前の1ドル160円というレートが今も維持されているとしたらひどい差益が発生しています。薬価は最初だけ為替レートが使われますが、その後は同行薬との価格などを参考に製薬会社の希望を聞きながら決められ、毎年少しずつ薬価が切り下げられます。仮に全くの新薬をアメリカで開発し10ドルで売り出し、これを日本に導入すると最初の薬価は1600円に決まり、その後国内開発の薬と同じように少しずつ薬価が下げられます。徐々に製造コストが下がるという仮定でこういう薬価切り下げを行います。5年で20%下がったとすると1280円になりますが、10ドルの薬はアメリカなら8ドル、この間に110円から90円に為替が下がったと仮定して1100円から720円に価格が下がるべきで、差額は500円から560円に膨らみ、日本製の薬ならメーカーの利益は下がるはずのところ、海外メーカーはここのところむしろ儲けを拡大しているのです。もちろん為替は水ものですが、すさまじい円高と次々外資に吸収される薬剤業界の実情を考えると、薬価の見直しが急務だと思います。ここが診療報酬の埋蔵金です。

>ふじたん先生

>そして、都会と地方の格差は地域加算を定めなおすべきです。維持は診療報酬で、開設は必要なら補助金で、という姿勢でないとおかしなことになります。

 このプランは一見良さそうに見えますが、非常に大きな問題をはらんでいます。都会と地方の格差を地域加算で埋めると言うことになれば、必然的に患者さんの自己負担も都会と地方で格差が生じることになります(都会<地方の自己負担となる)。
 これ自体、国民皆保険の原則である一律の料金体勢を崩すことになりますが、それ以上に恐ろしいことは地方→都会への患者移動のインセンティブを与えると言うことです。
 ただでさえ現状で地方の患者さんの受診動向は地元→都市部の傾向が強いものです。地域によっては地元医療機関受診率が30%以下などというところもあります。この流れを促進すると地方医療機関では赤字が拡大し、都市部は患者増により疲弊すると言うリスクがあります。

 地域格差を考えた場合には、やはりある程度は補助金により運営する方が安全だと思います。

 なお、この記事の元ネタであるNICUに関する補助金に関しては、別ページのコメントに書きましたように、私は明確に反対していますので、念のため。

 なお、上の海野先生のご発言に関しては、正直これは詭弁だろうと言う感が強いです。

>地域によっては基本的なインフラが未整備のところもありますし、人口密度が低過ぎて効率的な運営ができないところもあります。そういうところに補助金が必要になるのです。

 NICUを置けるような地域においてインフラが未整備であるとか、人口密度が低すぎて効率的な運営が出来ないという実情がほんとうにあるのでしょうか?北海道の山奥にNICUを置くとか言う話であれば別ですが、実情は違うはずです。

>一方で、救急医療を行っていくには患者を受け入れるための空きベッドを確保しておくことが必要で、その分の経費を患者の診療報酬で賄うのは、公正とは言えないと考えられます。

 そもそもNICUでの空床に経費がどれだけかかるのか?という疑問があります。NICUが空床である場合の経費は機材類の減価償却費、土地代、光熱費ぐらいのもので、人件費は空床分については実際にはかかりません(患者3名当り看護師1名、医師に関しては規定無し)、仮に空床に患者が入った場合の予備人員として看護師を確保しておくとしても、3床空床があったところで必要な看護師は3名、経費は年間3000万弱でしょう。それも予備人員を遊ばせておくというわけではなく、当然増えた看護師分、患者サービスが向上しますのでこれは診療報酬に加えても良いはずです。

 さらに恐ろしいのは「「NICU補助金の削減に反対」-未熟児新生児学会が「仕分け」結果に抗議」」(http://lohasmedical.jp/blog/2009/11/nicu_1.php)のエントリーでコメントしましたが、この補助金の性質はもともとNICU増床のためであるということです。現状のように患児一人当りの医師数が規定されていない状況でこの手の補助金が実行された場合、医師数が増えないまま増床のみが行われる可能性が多々あります。
 こうなった場合、現状でも少ない新生児科医が疲弊・リタイヤし周産期医療がさらに崩壊する可能性が十分あると言えるでしょう。

要するに事業仕分けをきちんとするならば、ハコモノへの補助金は国交省なり総務省なりが建築基準法や消防法等の関係法規をクリアできる形で出せばよいし、資格を持つ人員の増員への補助金は厚労省が出せばよいということになるのではないでしょうか。現段階での請求者の新生児学会自ら使途を不分明にした形のまま厚労省へ要請された補助金は、国家の財政難の折には仕分けに掛けられたとて致しかたないように思います。

僻地外科医様:
おっしゃる通りです。周産期医療協議会のイケイケ体質が、人的に薄っぺらい今の体制を作りました。ただし幹部たちの施設は、低廉な人件費で使える向学心に燃えたレジデント等を使えてきたわけです。彼らは、元の医局に戻ると皆がやりたがらない新生児を押し付けられて消耗していきました。

僻地外科医

>都会と地方の格差を地域加算で埋めると言うことになれば、必然的
>に患者さんの自己負担も都会と地方で格差が生じることになります
>(都会<地方の自己負担となる)。

自己負担の増加についてはそのとおりですが、いかほどになると考えておられるのでしょう。地域の苦しさはすべての診療に対して生じていますので、現在の地域加算と同様、すべての診療報酬に掛け算することになります。となると、一人当たりの負担は1回100円に満たない金額になりそうです。(当直料の水準から試算しようとしたのですが、思ったより安い地域もあり、一筋縄でいかないため、北海道と東京で単純に比較しました)

>ふじたん先生

 非常に計算が難しい問題ですが、地域加算を地域の不採算制によるものと考えた場合、医業収支比率を都市部並みに引き上げるにはどうしたらよいか、と考えればよいのではないかと思います。

 北海道の道立病院群(おおむね僻地にあります)と東京の都立病院群を比較した場合、平成18年度の北海道立病院群の医業収支比率は61.6%、東京都立病院群の医業収支比率は76.0%です。

 北海道立病院群の医業収支比率を東京並みの76.6%に引き上げるために必要な金額は約21億円になります。僻地ではおおよそ入院診療報酬と外来診療報酬が1:1ですので入院診療報酬に目を向けてみると、この額は約10億と言うことになります。
 北海道立病院群の一日あたりの入院患者数は706人ですので、この10億を地域加算で埋めようとした場合の1日当りの自己負担金は
10億÷(706×365)×0.3(自己負担率)≒1200円です。1週間入院すれば1万円近く違うと言うことになります。

 さらに、保険は国民健康保険が半数以上を占めるのが地域の現状ですが、この国民健康保険の保険者は市町村であり、保険料の財源は住民の保険料と国・都道府県・市町村からの拠出金で賄われています。
 地域加算で診療報酬を増やそうとすると、元々脆弱な地方自治体財政にさらに圧迫を加えることになります。

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