第1回不活化ポリオワクチン検討会 傍聴記 その7

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2011年09月13日 10:10

8月31日に開催された「不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会」の傍聴記⑦、第1回検討会も最後の最後、延長戦に突入してやっと台本から離れ、動きが出てきたのですが、子供のことを案ずる母親の立場からすると実は大きなチャンスを逃していたようです・・・。

とりあえず前回からの続きで、意見のやり取りをできるだけ再現していきます。


中野貴司氏(川崎医科大学小児科教授)
「皆さんも同じ意見かと思いますが、私はIPVに関しては、承認されたIPVを一刻も早く導入することが大事だと思っています。そのためにこの会をしっかりやっていくのだということです。一方、OPVに関しては、現状では積極勧奨に入っているということです。もう秋の接種シーズンは近いわけですが、それをこのまま継続するのか、違うかたちにするのか、そこがはっきりしないので、私も現場で何人も接種していますが、非常に気になっています。それにしても、こんな短期間で何か変えられるのか、不安であります。そして付け加えるなら、蒲生構成員がおっしゃっていたように、OPVよりIPVのほうが安全かもしれないということで接種しにいらっしゃるお母さん方の中には、IPVのことを十分理解していらっしゃらない方がおられます。すると、承認されていない製剤を使用して何か起こったときに、打たれた方も、打ったお医者さんも、両方が不幸になります。そのために一刻も早くきちんと承認されたIPVを、と申し上げているわけです。さきほども小山構成員からご指摘があったように、私たち医師の中にもVAPP(ワクチン関連麻痺)のことを知らない人がたくさんいる、それは反省すべきことですが、ただ今IPVを希望される方も、IPVを使うということがどういうことなのか、国で定めた薬を使うのか、そうでない薬を使うのか、しっかり考えていただきたいと思います。最後に、齋藤構成員が先に指摘された、スケジュールのことはやっぱり大事だと思います。こういう状況だからいろいろな方がIPVを使うようになるわけですが、過去の私の経験で言うと、治験スケジュール以外の使用法が大変しにくくなるかと思います。今もDPT-IPV(4混)や単抗原ワクチンの治験が進んでいるかと思いますが、その通りの接種スケジュールが出来上がると、私たちが現場で受ける方たち一人ひとりにあったスケジュールを組みづらくなります。それを今後考えていかなければならないと思います」


岡部座長
「いろいろなパターンの接種スケジュールを網羅するとものすごい数になるので、全部はできないと思うんですね。そうなったときに、もちろんエビデンスも大切ですけれども、今度はある程度『科学的な推測』に基づいてやる、といった考えも今後必要ではと見ています。治験のオープンと研究的なプランとを組み合わせて、この検討会ではある程度スケジュールを出していくのも、IPV導入に当たって必要ではないかなと思います」


保坂シゲリ氏(社団法人日本医師会常任理事)
「今のスケジュールの話ですが、これはIPVが導入される際には決めなければいけないことではありますが、とにかく“今”どうするのか、“今すぐ”どうするのか、ということを私たちはここで本当に決めなくてはいけないですよね。というのも、ご指摘があったように、これまでにもマスコミがOPVやIPVについて、不十分な形で、と私は思っていますが、どんどん情報を流してきているので、お母さんたちの不安がどんどん高まっていて、OPVは受けない、でもIPVは受けられない、あるいは受けない、という方がどんどん増えていると。これは私どもも以前から申し上げてきています。もう明日から9月になりますが、まずその点をどうするかということを、今日この会では話していただきたかったし、多少話をするものと思っていたのに、それもなくきてしまいました。もう時間がありませんが、せめてこの点について、(厚労省から)なにかある程度のことを言っていただかないと、お母さん方もそうですし、現場の医師もどうしていいのか、私たちもどう言っていいのか、ぜんぜん方針が立たないんですよね。確かにリスクはあるかもしれませんが、保科構成員もおっしゃっていたように、1回抜かしても大丈夫だったじゃないか、という例もありますし、私たちもなぜ年に2回なのか、その意味も私たちもまったく理由を知りません。ぜひこの秋のOPV接種をどうするのか、多少は何か、(方針となることを)言っていただければと思います」


岡部座長
「では時間がもうないんですが、要は定期接種について多くの方が困っているが、国としての方針は原則どおり継続なのか、あるいは代替があるのか、秋のシーズンのOPVはどうするのか、今すぐでなければ数日中にもアナウンスしてほしい、ということですね。どうでしょうか」


ここで初めて、厚労省の健康局長が口を開きました。後から考えてみると、かなり注目すべき発言なのですが、検討会の場では、その部分もなんだかうやむやに流れていってしまいます・・・。


外山健康局長
「今ご意見賜りましたが、この検討会を設置した目的というのは、今後4混が導入され、単抗原ワクチンの開発を進めていく、それらを円滑に移行するための方策を決めていただく、ということであって、ここで秋のOPVについて提言をもらうことは、私は考えておりませんでした。ただ、それについても緊急にご提示いただくのであれば、専門家のグループでありますから、いただきたいと思うんですけれども、国の考え方としてはちゃんと予防接種法上、いろいろなことも考えて今のOPVということを制度的に推奨しているのでありますから、これはこれでやっていただきたいというのが私どもの政策上の立場です。緊急輸入という話も、よく国会で聞かれたりもしておりますけれども、薬事法上承認された薬を国の制度の中に位置づけて、国のやり方としてやっていくと。かつては超法規的にやったこともあるかと思いますけれども、そういう選択肢は今現在はないのではないかと。ただこの検討会が生ワクチンに関して緊急提言を行うというのであれば、それはそれで検討したいと思っておりますが」


岡部座長
「基本的には今のOPV積極勧奨については変更はないと」


外山健康局長
「予防接種法上の制度を変える、とは、少なくとも現在の時点では思っておりません」


保坂氏
「厚労省の立場はとてもよく分かりますし、皆様一生懸命やってくださっているのはわかるんですけれど、現実に、OPV接種を実施したときに、接種をしている人としていない人の割合がたぶん相当、接近するのではないかと思っています。特に集団で生活をしているお子さんたちをどうするのかということについて、現場は非常に心配しておりますので、その辺について何か厚労省としてできることはないかと、早急に検討していただきたいと思います。少なくとも今すぐ秋の接種をやめることは、立場上というか仕組み上、できないと思いますので、それを求めるつもりはありませんが、何もしないで手をこまねいていることは、やはり私たちとしてもとても困る。私たちも何かできることがないか考えますけれども、国として、何か『こういうふうな方策をとりましょう』というような提案があればとても有難いと思いますので、よろしくお願いいたします」


外山健康局長
「先に事務局がご説明しましたが、資料2の8頁にもありますように、個人輸入によるIPV接種の実態調査も行っておりますけれども、尻を叩いて早急に結論を出すようにやらせたいと思います。また接種率が低いという件につきましても、調査の集計を早めて本当に全国的あるいは地域にどのような状況になっているのか、手をこまねいているのではなくて、感覚的ではなく数字をちゃんと出したいと思っています。また治験についても今回はご説明をいたしませんでしたが、それについてもお話させていただければと思います。何も私たちはだらだらやろうと思っておりませんので、次回は比較的早くやらせていただきたいと思っております。調整させていただきます」


坂元氏
「予防接種は法的には自治体事務でございますので一言。今回少なくとも川崎市では非常に接種率が下がっていると。隣の横浜市を聞いても同じ割合だということですが、我々としてはOPVについては自治体業務として『受けなくていい』とは言えないので、やはり積極勧奨していかざるを得ないというのが現状であります。もし『そうではない』という考えが起こってしまいますと、もう秋のシーズンがせまっておりますので・・・。(混乱が生じる、との意?)。我々としては「現在接種率が低いですよ。受けてください」とアナウンスしていかざるをえない、というのが自治体事務の実態でございます」


岡部氏
「ありがとうございました。最後に、私がこういうことを言うのもなんですが、受けるのと受けないのでいうと、どちらも受けないというチョイスが一番危ないと。というのは、先ほど一時的にやめたが大丈夫だったという話がありましたが、いつ入ってくるかはわかりません。そういうことを含めて、ポリオは個人の病気として、そして全体の病気として、両面から考えていかねばならないものです。ポリオのワクチンを、いずれにせよ受けないのは最悪のチョイスですので、現在決まっていることとしては、予防接種法にもとづく接種を継続していく、というのがこの秋の方針だろうということは厚労省から示されました。ただし次の10月の第2回検討会では、方法や研究の部分含め、ある程度数字も示して事務局からもご意見いただきたいと思います。以上、時間も過ぎましたがこれで終了とさせていただきたいと思います」


これで第1回の検討会はお開き。結局、動きそうで何も動かなかった、そのチャンスを誰も活かせなかった、活かせなかったまま終わってしまいました。長くなったので、感想等は次回に持ち越したいと思います。


つづく

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