国会議員ポリオワクチン勉強会

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2011年11月16日 14:30

昨日、参議院議員会館で「ポリオワクチンについて考える会」が開かれました。ポリオの会会員やその主張に賛同する医師他の有志が主催した、国会議員の勉強会(質疑応答含めて1時間半)です。

ちょっと長くなりますが、講師からの報告を総合してみると、改めて接種率の相当な低さ、危機的状況が確認できます。この危機感が出席した議員にどこまで伝わったのか、正直そこは量りかねましたが、おそらく人それぞれ、バックグラウンドにもよることでしょう。しかし国会の懐に飛び込んで勉強会を開催したこと自体、かなりの出来事なはず。ポリオの会の皆さんの強い利他の思いに根ざした地道な活動が、また一歩前進したと言ってよいのではないでしょうか。

まず、出席した国会議員、途中参加・退席の方も含めて紹介された順(任意着席順、敬称略)に挙げると、

古屋典子(公明党)、馬淵澄夫(民主党)、坂口力(公明党)、大西健介(民主党)、藤末健三(民主党)、上野ひろし(みんなの党)、田村智子(共産党)、河野太郎(自民党)、仁木博文(民主党)、木内、山尾志桜里(民主党)、田村憲久(自民党)、三原じゅん子(自民党)、田村謙治(民主党)、柿沢未途(みんなの党)、福島みずほ(社民党)、他1名お名前が聞き取れませんでした。あしからず。

と、合計16名の参加でした。ちなみに、「不活化ポリオワクチン早期導入賛同人」には、衆参両院から40名の議員が名乗りを上げています。上記の16名のほとんどが名を連ねている一方、昨日の参加者の中にはこのようなリストの存在を知らなかった議員の方もいたようですし、一方、リストに入っていながら昨日は欠席(出席しなかった、のでなく、できなかった、と考えておきます)の議員も多くいたことになります。


それにしてもこの数、どう取るべきでしょうか。700人以上いる国会議員ですが、現場からの医療改革推進協議会第6回シンポジウムでも鈴木寛議員が指摘していたように、TPP問題とは違ってなかなか医療問題には手をつけづらいということでしょうか。昨日出席していた議員の自己紹介でも、少なからず個人的なモチベーションを持っている人がほとんどであったように思います。

一部を紹介すると、
●「10ヶ月の子供にIPVを3回受けさせた。政治家としての使命を果たさないうちにそうした選択をすることは非常に心苦しかった」(山尾議員)
●「子供が6人いる。アメリカ在住時にIPVを受けさせた。妻から日本ではIPVを打つ機会を得るのが大変難しいと聞いた」(馬淵議員)
●「3歳児の父。生ワクを飲ませたが、まさにロシアンルーレット。子供の安全を守るために親は苦しんでいる」(上野議員)
というように、子供をもつ親であったり、あるいは医師の免許をもち、
●「IPVに切り替えようという話が出てからもう何年もたつ。なかなか進まずにいらだたしく思っている。成人でも生ワクチンから麻痺が出る。」(坂口議員)
●「ワクチン関連麻痺はあってはならないこと。第2、第3の犠牲者が出ないように」(仁木議員)
というケース、厚生労働委員で
●「新型インフルでさえ特例承認できたのだから、世界標準の不活化ワクチンもできるはず」(大西議員)
という積極的意見や、一方で
●「黒岩知事を助けて、厚労省の利権にメスを入れたい」(河野議員)
という政治的な色彩の強い動機も聞かれました。


しかしこのポリオワクチン問題に限っては、他の医療問題に見られるような「あちらを立てればこちらが立たず」のトレードオフの関係が本当に成立しているのでしょうか。未承認で補償がないとはいえ、世界標準となっている不活化ワクチンを緊急輸入して接種したところで、生ワクチンより深刻な問題がそもそも発生する確率はほぼゼロに等しいのです。子供あるいは国民の健康、安全、といった観点を最優先にするならば、躊躇する理由は、実質的にはどこにもないはずなのです。


さて改めて、昨日の勉強会の頭にもどります。勉強会の流れは、まず冒頭に北海道に住む4歳のワクチン麻痺患者、蒼凰(あお)くんの映像が数分間、上映されました。これまでに数回見たことのある映像でしたが、装具をつけながら歩き遊んでいる姿、そのあどけない表情は、何度見ても辛く、とても直視していられませんでした。その後、講師の紹介がありました。

(紹介順、敬称略)
●丸橋達也(司会):ワクチン麻痺患者、ポリオの会会員、厚労省不活化ポリオワクチン検討会構成員
●小山万里子:ポリオの会会長、野生株ポリオ麻痺患者、不活化ワクチン検討会構成委員
●関場慶博(座長):せきばクリニック院長、青森県小児科医会副会長、元国際ロータリー会長代理、IPV個人輸入・接種 を行っている
●宝樹真理:たからぎ医院院長、IPV個人輸入・接種を行っている
●真々田弘:フリーランステレビ報道ディレクター、世田谷区に対して個人的に、主権者として不活化ワクチン公費助成を求める活動を行ってもいる


この後に先ほどの議員紹介があり、その後、関場氏から、世界におけるポリオ問題と、日本のポリオ問題についてそれぞれ説明がありました。

●世界がポリオ撲滅に向けて動いており、これまでに99%成功といえるが、予定よりも撲滅達成の時期はずれ込んでいる(2000年頃には撲滅の予定だった)。

●それは撲滅した地域でもワクチンの接種率が90%以下に下がることで、野生株や生ワクチン由来のウイルスから再流行が起きるため。

●ちなみに、インドでは2002年には1600人の患者がいたが、今年は1人。来年にはゼロ人を達成するだろう。これは1億7000万人の子供に政府が熱意を持って、努力して根絶を実現しよとしているから。そしてすでに根絶後を視野に入れて不活化ワクチンの検討が始まっている。

●日本では、1960年の北海道から広がったポリオ大流行で国民が立ち上がり、生ワクチン緊急輸入を求めた。当時就任したばかりの古川厚生大臣が「全責任は自分が負う」とウイルス専門家の大反対を押して緊急輸入という政治的決断を行った。しかしいまや日本は世界の潮流から遅れ、先進国で唯一、発展途上国でもほとんど使われていない不活化ワクチンを使っている。

●これは、4発実弾がこめられている100万発式の銃をお母さんたちに渡して、「さあ子供に打ちなさい」といっているのと同じこと。このロシアンルーレットを1年半我慢しろ」といっていることのナンセンス。解決方法は緊急輸入しかない。

●なお、中国新疆ウイグル自治区で18名の患者が出て、北京でも1名確認された。1人患者が見つかれば、その周りに不顕性患者が100~200人いる。北京にいる200名の府県製患者のうち1人でも日本に来ていたら、どうするのか。現在の接種率の低さからすれば大流行の危険もある。

この関場氏の講義の後、出席していた藤末議員から、IPVの緊急輸入に代わる妥協案として、早期承認の具体的説明がありました(原案は、千葉県佐原病院松山小児科部長)。要するにIPVは合計4回接種ですが、最初の3回と4回目の接種の間は最低1年あけます。治験でもその空白の期間は確保しなければならず、その分、承認が遅れることになります。そこでこれを解消するために、最初の3回分と4回目の接種を別々に申請することで、少しでも早く1回目の接種が可能になるようにしようというものです。これならば、緊急輸入とは違って超法規的措置とはならず、治験申請・承認プロセスの手続き変更のみで対応できます。しかし、実際のところ、この方法でも導入までは今から最低でも9ヶ月程度かかります。1年半待たされるのが、9ヶ月になる、ということです。


確かに議員にとっては飛びつきやすいソフトな解決案です。しかし、この提案に対しては、講師側からも“今ここにある危機”について、説明が入りました。

(真々田氏)

●「ポリオワクチンの接種率が下がっている」というより、「ポリオ生ワクチンの拒否率が上がっている」と言うべき。

●厚労省発表の「昨春の生ワクチン接種率17%減」というのはごまかし。

●それは、2回目接種者も含んでいるから。昨秋(補足:まだポリオの会が署名を提出する前、世論が今ほど盛り上がってはいなかった)に1回目生ワクチンを受けていれば、2回目も受けると考えられる。一方、1回目接種対象者の拒否率は、3割には上るはず。港区では5割が拒否とも聞いている。

●当然、春に1回目を拒否した人はこの秋、2回目も拒否するだろう。東京都などでは接種率6割という話。防疫行政は無能といわざるを得ない。

●ロシアンルーレットという話があったが、全体では100万分の4の確率でも、一人ひとりのお母さんにとっては、当たるか当たらないかの2分の1。そんなに大きなリスクなど取れるものではない。

真々田氏は、自己紹介のときにも「政治家の責任だと思います」と言い切り、「50年前、厚生大臣は腹を切る覚悟で生ワクチンの緊急輸入を決めた。不活化ワクチンは、10年以上前から世界標準になっている安全なもの。緊急輸入するのに腹を切る覚悟はいらないんです」と、一貫して緊急輸入を求めました。


(宝樹氏)

●渋谷区の集団接種2箇所を担当している。会場1箇所当たり100人の接種が想定されていて、昨秋はまだ80人程度は来ていたが、今年の春は50人、今年の秋は51 人しか来なかった。春は震災の影響もあったが、秋についてはそれはもはや考えづらく、やはり拒否ととるべきだろう。

●東京都心部での接種率は相当下がっている。お母さんたちが、生ワクチンの危険性について知ってしまった(ここで、現場からの医療改革推進協議会第6回シンポでも発表された、ハーバード大研究員細田美和子氏とその調査データを紹介。お母さんたちが苦渋の選択を迫られている実態)。

●当初、不活化ワクチンを自身の医院に受けさせに来るお母さんたちはとてもよく勉強していて、補償がないことも了承し、それでもより安全で世界で使われている不活化ワクチンを選択していた。それが最近になってどっと希望者が増えてくると、中にはあまり勉強してきていないお母さんも多くなっている。それでも要は「赤ちゃんが麻痺になるかならないか」で選んでいて、補償云々は問題でない。

●なお、不活化ワクチンで麻痺が出る危険は、2000万本に1回=日本なら20年に1回という低さ。しかも、それが紛れ込みでなく、本当にワクチンによるものかどうかは確かでない。それだけ不活化ワクチンは安全。

●しかし、不活化ワクチンを選べないお母さんも多い。だからといって未接種であることの責任をお母さんたちに押し付けるというのは、G8にも参加している先進国としていかがなものか。


このほか、当日配布された資料には、(株)ベネッセコーポレーションが1歳未満の子供をもつ母親に対し10月に実施(1001人が回答)したアンケート調査の結果も添付されていました。

●「子育てを行っていく上で今もっとも心配・不安なこと」に対する回答の第3位が「生ポリオワクチンの安全性」で、14.4%だった。(第1位が原発事故の影響、第2位が子供の発育)

●全体として回答した母親の44.0%(440人)が生ポリオ問題を心配・不安なこととして挙げた。

●そのうち「この秋の定期接種(生ワクチン)を受ける・受けた」との回答は48.9%にとどまった。

●残りの51.1%のうち、「迷っている」が21.1%、「この秋は見送る」が18.9%、「不活化ワクチンを自費接種した」が11.1%。未接種が20%~最大40%に上る可能性も。

●国による不活化ワクチン導入時期(早くても来年度末)について正しく理解している母親は440人中、4人に1人(24.5%)のみだった。

アンケート対象者は1歳未満の子供の母親ですから、要するに1回目の生ワクチン接種について、真々田氏や宝樹氏の指摘どおり実際の接種率が厚労省の発表よりずっと低い可能性をサポートする結果になっています。関場氏の説明では、接種率が90%を下回ると撲滅した地域でも再流行が起きているといいますから、今の日本はすでに、まさに無防備ということです。それがどこまで議員の面々に伝わったか、この資料に関しては読み上げもなかったので、どれだけの議員が目を通したかが気になります。ぜひ持ち帰って党内等で共有してもらいたいものです。


最後は、丸橋氏と小山氏が締めくくりました。ポリオの会の会員自身はポリオで動かなくなった足が不活化ワクチン導入で動くようになるわけでもなんでもないこと、しかし、いまだに被害者が出続けている現状に愕然とし、ただこれ以上同じ辛い思いをする子供たちが出ないことを願いって活動していること、本当は政治家にこうした活動をしてほしいことを訴えました。「ぜひ厚労省へヒアリング等を通じて働きかけを宜しくお願いします」と。


まったくそのとおりだと思いました。被害者の人たちが、新たな被害者を作らないようにと、自身の時間と労力をつぎ込んでこの問題に取り組んでいるのです。よくよく考えればおかしいことです。被害者は自分自身のことで精一杯で(多くの人はそうだと思います)、それで当たり前なのです。本当は国民を守るのは全国民自身とその代表である政治家、そしてもちろん本来的にその使命を背負っている政府のはず。この国はどうなっているんだろう、と改めてげんなりしてしまいました。しかし、おそらくポリオの会の方々は私以上のやるせなさや憤りをすでに経験しているはずですよね。まったく話の通じない、何を言っても同じ答えが返ってくるモンスターを前にして、それでも前向きに訴え続けてきた、その苦労とエネルギーには本当に脱帽です。その思いが国会議員の面々に通じたでしょうか。


忙しい国会議員の皆さんですから、正直、このポリオワクチン問題への理解には相当なばらつきがあるように見受けられました。とくに、緊急輸入が妥当と思われるほどに現状が危機的であること=早期導入でも1年後、それを悠長に待っていていいのか、という点について、どれほどの議員が認識を新たにしたでしょうか。勉強会への出席人数も決して多いとは言えません。しかし、多くの政党からの議員が集まっていたことはまだ希望が持てます。ぜひ超党派の大きなうねりにつながってほしい。そしてもっと言えば、軽症回復者や潜在的な患者を含め、罹患してしまった人についての現在から将来にわたる認定・サポートが忘れられることのないように。それらについてもぜひ今この時期に、法的な保障・補償を一気に取り決めていただきたい。そうでなければ、絶対に置き去りにされてしまうと思うからです。

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