第22回予防接種部会 これって越権行為?

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2012年05月24日 13:24

昨日、厚労省へ赴き第22回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会を傍聴してきました。テレビカメラもかなり入り、省議室は満員。人いきれで暑いくらいでした。私は予防接種部会の傍聴は2回目ですが、正直今回はあきれてしまいました。かいつまんでご報告したいと思います。

まず今回の部会の一番の目玉は、予防接種制度の見直しに係る第二次提言の取りまとめでした。ちなみに予防接種部会は2009年12月に設置され、第一次提言は2010年2月、わずか5回目の部会で出されています。というのも当時は新型インフルエンザの発生で日本中がいまだパニックの渦中にあった頃。予防接種部会はもともと新型インフル対策について話し合うために設置されたものだったのですね。そしてその後は予防接種制度全体の見直しに向けて、さらに2年にわたって開催されてきました。具体的には、予防接種法改正によって現状より多くのワクチンを定期接種へ組み込むことが重要な要素とされ、第二次提言に盛り込むべく議論が続けられてきました。しかし今回は正直、傍聴していて、「なんのための予防接種部会なのか」と改めて問いたくなるような展開でした。


とりあえず今回の部会で、良くも悪くも興味深かったシーンを挙げてみます。


●開始後まもなく、「予防接種制度の見直しについて」と題された第二次提言の内容の確認が行われたが、「予防接種法の対象となる疾病・ワクチンの追加」に関する2項目目の文言について物言いがついた。指摘したのは、このたび保坂氏に替わって新たに委員となった小森貴氏(同じく日本医師会常任理事)で、具体的には、「ただし、新たなワクチンを予防接種法の対象とし、定期接種として実施するためには、円滑な導入と安全かつ安定的なワクチン供給・実施体制の確保や、継続的な接種に必要な財源の確保が前提となる」という文章のうち、「前提となる」という文言は「必要である」程度の意味に置き換えるべきとの主張で、これについて多くの議員がそれぞれ是非を述べるという、予想外の議論に発展した。


●議論の中盤で突然、廣田良夫委員(大阪市立大大学院教授)が、「以前、当時の長妻厚労大臣がこの部会に来て、『3ワクチン以外のワクチンもしっかりやる』と言っておられた。それについて過去の議事録を調べて確認したのだが、削除されたのか見つからなかった。厚労省の事務方はじめ職員も代わって梯子を外されたとなると困るだろうから、今回は改めて私の発言として、念のため、長妻大臣が過去にそういう発言をこの場でされたという事実があった旨、議事録に残しておいてほしい」と言い出した。3ワクチンとは、法改正による最優先の定期接種化が今回の部会(第二次提言)でも確認された子宮頸がん、ヒブ、小児用肺炎球菌の3つ。ちなみに、今回の第二次提言に至るまでに予防接種部会と民主党の予防接種小委員会とのやりとりが繰り返されており、法改正により何種類のワクチンを定期接種化するかについても行ったり来たりがあったらしい(しかも厳密には予防接種部会の委員はさしおいて、実質的に小委員会と厚労省の事務方の間での朝令暮改、ということのようですが)という背景がある。


●部会開始から1時間が経とうという頃、宮崎千明委員(福岡市立西部療育センター長、日本小児科学会予防接種・ 感染対策委員会メンバー)から、今回の部会に同席していた藤田一枝厚労政務官に対し、「現在のワクチンギャップをどれ位のペースで埋めていくのか、政権としての優先順位などもあるだろうが、党の覚悟をもう一度聴かせてほしい・・・」と言いかけたところ、早々に加藤達夫部会長(国立成育医療研究センター前総長)に、「政務官からは後ほどご発言があるかと思います。この場では質問は必ず部会長である私を通してください。直接はやめてください」と遮られる。では別の議論がまだしばらく続いてそれから藤田政務官の発言があるのかと思いきや、その直後にもう「それではご多忙のところおいでいただいた政務官のご挨拶を」と加藤部会長が促し、政務官の発言となった(わざわざ遮っておいて! ちなみにこの時以外にも、加藤部会長が事なかれ主義に基づいて議論を適当に引き取る場面がしばしば見られ、「なんとしてもシナリオどおりに会を進行させるのだ」という執念なのか、使命感なのか、とにかくブレずに突き進んでいる姿がとても印象的です)


●その肝心の藤田政務官の発言はというと、「2年半、22回にわたる積極的、熱心な議論をいただいた。皆様のご意見は、厚労省としてもしっかり受け止めていく覚悟。ワクチンギャップ改善のために新たなワクチンを定期接種化する法改正は平成13年、高齢者のインフルエンザ接種に関する規定以来、久方ぶりとなるが、鋭意努力していく。財源確保、負担については、市町村としっかり調整したい。法案提出はできるだけ迅速に行いたい」と、事務方の用意した“挨拶”をしっかり読み上げたのみ。ワクチンギャップ改善の問題に至っては、WHOが推奨する8種類のうち結局3種類しか定期接種化されない方針となった法改正を、さらに「鋭意努力する」と言っているわけで・・・。驚くばかりの頓珍漢ぶり。最後に「本日はありがとうございました」と締めくくるや否や、事務方が「政務官は公務の都合でここで退席されます」と宣言し、その通りあれよあれよと言う間に政務官は省議室を後にした。よくある光景とはいえ、そのあっさりぶりには宮崎委員ならずともアレレと感じずにいられない、見事な肩すかしっぷりだった。


●予防接種制度見直し以外の改正事項として、定期接種については接種対象の年齢が政令で定められている(=それを超えると無料で接種を受けることができなくなる)ことについて、事務局から、「免疫機能の以上など、長期にわたる疾患」のために受けられなかった子が回復した後速やかに接種する場合は、これを定期接種と認める(=無料で受けられる)よう特例措置の規定を設けることが提案された。これについて倉田毅委員(国際医療福祉大学塩谷病院教授、元国立感染症研究所所長)が「医学的科学的見地から期限を定めておくのはいいとして、しかしこれを過ぎてしまったからといって定期接種として受けられなくなるのでは、そもそもの予防接種の意義に反する考え方。遅れても必ず定期接種として(自己負担でなく)打てるようすべき」との旨、意見。これ以外にも同様の論調の意見が出ていたので、加藤部会長が適当に肯定して議事を進めようとしたところ、正林結核感染課長が「あまりに期限を長く認めてしまうと、どんな理由でもOKになり、期限を設ける意味がなくなるので、そこは」と発言。たしかにそうなんだけれど、それでは何のために部会に諮ったのか。


●なお、第二次提言には、日本版ACIPとして議論されてきた予防接種の評価・検討組織の創設も当然、盛り込まれている。今回の部会ではもはや議論どころか読み上げられることすらなかったが、その構成については、「メディア」が委員として参加することがしれっと、でも確かに明示されている。どうしても中に引き入れたいらしい。実際、メディア側にも入りたがる人がいるのも事実だと思うが、これはそもそもメディアの本質に関わる問題なはずだが・・・。誰も指摘せず。(そういえば、この部会の委員としてもメディア人は参加していましたっけ)


●今回の部会では4月23日の第3回不活化ポリオワクチン検討会の報告も行われた。その検討会の構成員でもある坂元昇委員(川崎市川崎市健康福祉局医務監)が、「前回の検討会(4月の時点)で岡部先生にポリオの生ワクチンの接種率を聞かれた際に、5割程度だろうと答えたが、ふたを開けてみたら4割に届いていなかった」と発表。この発言の前に、不活化ポリオ検討会座長でもある岡部信彦委員(前・国立感染症研究所感染症情報センター長)が、「WHOも接種率が70~80%を下回ると危険としていて、日本ではそれ以下の状態が1年以上続いている。ポリオは夏に流行する病気で9月まで警戒が必要」と指摘していたが、まさか30%台というのは想定外だったはず。そんな恐ろしい状況に子供たちがさらされている(あるいは大人だって、免疫が切れている人も少なくないかも?)という事実が、国民にはほとんど伝わっていない・・・。


ということで、ある意味かなり興味深い2時間でもありました。ただ最後、突き詰めていって残るのは「予防接種部会は結局何のためにあるんだろう」という疑問。そして自答するに、やっぱり単に「厚労省が実質決めたことに、お墨付きを与える組織」なんだな、と。それを確認した2時間だった、というわけです。


お墨付きを与える、ということは、何かあったら責任を取る、ということ。責任をとってもらう存在が厚労省にとって必要だから予防接種部会がある、そう答えを出しつつも、どうもまだ納得がいきません。よくよく考えれば、それもそのはず。予防接種部会は、予防接種制度の見直しについて、主として科学的・医学的見地から議論し提言を行う場であるはずなのに、実際には大いに政治的な判断・決定にまで「お墨付き」を与えている、つまり責任を負わされようとしています(部会長は、最も進んで責任を負おうとしているようにも見えましたが)。このブログのタイトル「越権行為」というのも、ちょっと言いすぎかしらとも思いつつ、あながち間違いでもないと我ながら思うのです。もちろん部会メンバーが意図的・意識的に行っているわけではないとしても、です。


その一番わかりやすい例が、上でも少し触れた、法改正によって定期接種化されるワクチンの数の話。7種類になったかと思っていたら、やっぱり財源が確保できないから3種類で、ということになって。財源の話は完全に政治マターなわけですが、そこまでひっくるめて予防接種部会による第二次提言として示すことになっているのです。責任を負うのです。だからこそ、些細なこととも取れる「前提」と「必要」というちょっとした文言の違いも、委員の人たちにしてみればなおざりにできないところだったのかもしれません。


さて、列挙した中でもうひとつ印象深いのは、なんと言っても政務官のトンデモ回答です。これが「政治主導」の現実ということなのでしょうか。ずぶの素人の私にも、あれだけ意気揚々と掲げられていた「政治主導」が成功しているようには、到底見えませんでした。半ば想像していた状況ではあるのですが、やはりウルトラC(死語)とはいかず。良いほうには裏切られなかったのか、と有権者として残念に思うばかりです。

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