現場からの医療改革推進協議会(予防接種セッション) 傍聴記その1

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2012年11月13日 04:33

先日開かれた「現場からの医療改革推進協議会」(11月10・11日)に今年も出向きました。やはり私にとって一番の関心は、「ポリオワクチン」のセッション(11日)です。ただし、今回のセッションでは、ポリオワクチンに限らず、世界から遅れている日本のワクチン問題全般について扱われました。

今年は、昨年この会で講演されたハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェローの細田満和子氏がコーディネーターと司会を務め、以下のお三方が演者でした。まずは細田氏が挨拶。細田氏と、細部氏、吉川氏は、ワクチンパレード(ワクチンデモ、後述)で出会ったそうです。


●細部千晴:細部小児科クリニック院長(文京区の台東区に隣接した地域)。診療所に隣接して子育て支援施設を開設し母子カウンセリングなどにも力を入れる。2010年以来、今年で3回目の「希望するすべての子どもたちにワクチンを!」と求めるワクチンデモに実行委員として参加。

●吉川恵子:上記ワクチンデモの実行委員長。一般社団法人「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」理事。千葉県保険医協会事務局次長。

●谷本哲也:総合内科専門医、血液内科専門医。福島(ときわ会常磐病院)と東京(ナビタスクリニック)を毎週往復して内科診療に取り組む傍ら、震災後の医療や医薬品規制・副作用の研究を行っている。昨年は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のワクチン審査官としてポリオワクチンセッションでコメント⇒http://medg.jp/mt/2012/11/vol651.html#more。

まずは細部氏からです。問題点はまとめると7つ。

1.かかりつけ医で予防接種できない現状
2.予防接種の広域化問題
3.地域格差、経済格差、施設間格差、情報格差
4.定期接種vs任意接種という名称は日本だけ
5.予防接種制度の見直し、予防接種法のゆくえ
6.緊急接種促進法(HPV、ヒブ、肺炎球菌)
7.マスコミ報道のあり方


【1,2,3について】

●かつては接種料金が高いためにワクチンを患者さんに勧めにくい、という状況があったが、文京区ではいち早く助成制度ができ、疾患に対する認識も高く、接種希望者も多い。隣の台東区でも意識は高く、ヒブ・肺炎球菌ワクチンも全額助成されているが、文京区が居住区ではないために、当院では助成が受けられない現状がある。これは任意接種であるインフルエンザワクチンも同じ。


●一方、定期接種については、23区で相互乗り入れされているものの、予防接種のお知らせ・問診用紙と同封されてくる接種医療機関リストには、区内の機関しか掲載されていない。当然、台東区のリストに当院の名前はない。本来は23区どこでも受けられるが、「自分の区でしか受けられないんだ」と思わせるところに区の収入に関する思惑があるだろう。これは成人健診でも同じ。改善を求めて行政に電話したところ、「23区どこでも受けられますよ、と問診表に書いてあります」と言われた。見てみると、確かに、すごく小さい字で書いてあった。区の収入となる予防接種を、他の区に取られたくない、というのは分かりますが、このような周知方法は、すこしでも接種率を上げる上でも、また接種をする側としても、デメリット。かかりつけなのに、予防接種して上げられないなんて・・・。予防接種の広域化がされていないからそうなる。


●文京区では任意接種、つまりヒブ、肺炎球菌、HPVなどについては全額助成。しかし、4~5千円自己負担しなければならない区もあるし、上記のようにかかりつけ医で打てない人もいるし、同時施主のために遠くからやってくる人もいる。あるいは、生後2ヶ月から打つべきであることや、水痘ワクチンの存在をしらない親もいる。要するに「ワクチン難民」の問題。【地域格差】【経済格差】【医療施設間格差】【情報格差】がある。これで先進国と言えるのか?


●広域化問題についてもっと言えば、例えば、施設に長期入院している子供や、里帰り出産のケースが挙げられる。静岡に帰省して出産したが、住民票は都内だと、定期接種でも自己負担しなければならない。自治体の首長同士の話し合いで接種費用を負担する償還払いの制度があるが、都内では大田区のみ。しかも面倒な申請書類が必要。日本のどこに住んでいても、全ての子供たちが無料で簡単に接種できる制度を求めます。


【4、5について】

●予防接種部会では7ワクチンを定期接種化することを提言しているが、国は、緊急接種促進事業の3つのワクチンから、と言っている。どうして、みずぼうそう、おたふく、B型肝炎ワクチンは後回しになるのか。子供の命を優先するなら、すべてのワクチンを定期接種化すべき。


●三者協や予防接種推進専門協議会も、提言を出している。日本医師会は今年(2012年)に270万人の署名を集めた。でも、定期接種の数も、相互乗り入れ(広域化)についても、現場では何も変わっていない。


【6について】

●緊急接種促進事業も毎年どうなるかわからないもの。いつまで続くか。年度末までに接種しないと、行政ルールからはずれ、接種料金がかかってしまう。スケジュールを調整したくても医師側に知識が浸透していないために結局、見合わせてしまうケースも出てきている。この事業は現場を混乱させている。世界標準のワクチンを定期接種化することで解決できることなのだが。


●現場の混乱といえば、この11月から定期接種化されたIPV-DPT(4混)の供給量不足がある。新型インフルやヒブ、HPVでも経験されたことなのに、厚労省はなぜ学習しないのか。その尻拭いはもうたくさん。


【ワクチンパレード】

●このような現状を知ってもらおうと、啓発活動の一環として、ワクチンパレードに小児科医として参加してきた。今年で3回目。


●日本小児科学会は、今年の9月に要望書を4つ、小宮山厚労大臣(当時)に提出。先日も、VPDから子どもを守ろうの会、患者会、日本小児科医会と、三井厚労大臣に要望ショを提出した際にも同行した。日本小児科医会は、小児保健法で子供の命を守っていこうとしている。私は次に話される吉川さんが実行委員長を務める「希望するすべての子どもにワクチンを!」の会の実行委員として、「ワクチンネットワーク」構想を静岡の医師とともに考えている。これと予防接種推進専門協議会を合体させて、日本版ACIPのような組織を作れたらいいと考えている。


⇒感染症対策は国防の重要政策。接種費用は国の費用でお願いします。子育て環境が少しでも良くなりますように。


ちなみに余談ですが、細部氏は私の従姉の子供がかかりつけ医としてお世話になっている先生だと、昨日たまたま判明しました。従姉は住まいは文京区よりの台東区で、実家が文京区。まさに最寄の小児科が細部小児科クリニックとのこと。予防接種の問診表の話も聞いてみたら、まさに従姉の抱えていた問題だったようです(!)そもそも文京区と台東区、隣同士なのに、境界を一歩またぐだけで、子供の医療はじめ福祉全般について公的施策ががらっと違うようですが・・・。


ということで、他お二方の講演は次回に続きます。

<<前の記事:ワクチンギャップ解消に必要なもの    現場からの医療改革推進協議会(ポリオワクチンセッション)その2:次の記事>>

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://lohasmedical.jp/mt/trackback/3053

『現場からの医療改革推進協議会 第7回シンポジウム』セッション8からのご紹介です。現在、「緊急促進事業」として国費助成の行われているHPV、ヒブ、小児用... 続きを読む

コメントを投稿


上の画像に表示されているセキュリティコード(6桁の半角数字)を入力してください。