身長を伸ばすサプリで成長ホルモンは出るのか

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2017年02月15日 13:02

成長ホルモンの不足が老化を早めることから、前回は、成長ホルモンの分泌を促す食事として、亜鉛が有効そうだという話をしました。今回はもう一つ、内分泌科の医師に教わったアルギニンについて考えていきます。アルギニンは、低身長の子を持つお母さんたちの間では、「身長を伸ばすサプリ」としてちょっとした話題です。


経口摂取では効果未確認

国立健康・栄養研究所の情報によると、私たちの体内ではアルギニンの代謝によって一酸化窒素 (NO) が作られ、成長ホルモンの分泌促進、免疫機能の向上、脂肪代謝の促進など、生体内で種々の機能に関与している、と説明されています。


さらっと書きましたが、アルギニンが体内で「成長ホルモンの分泌促進」に働いていることは事実なのです。


もう少し詳しく書けば、アルギニンは体内で、成長ホルモンの産生を妨げるホルモン(ソマトスタチン、膵臓から分泌)の分泌を抑制することで、成長ホルモンの分泌を促します。そこで実際、成長ホルモンの分泌を調べる試験で使われています。静脈に点滴注射(体重1㎏あたり0.5g)して成長ホルモンが出るかどうか反応を見るもので、通常の人なら成長ホルモンの刺激で分泌されるIGF-1(インスリン様成長因子、ソマトメジン)という物質の血中値が上がります。


アルギニンは、通常は体内で合成可能なアミノ酸、つまり「非必須アミノ酸」なのですが、成長期の子供や、成人でも大怪我や強いストレスで体力を大きく消耗した時は、体内で不足しまい、「必須アミノ酸」となります。そのため「条件付必須アミノ酸」と呼ばれています。


不足しがちなら、サプリメントなどで補えばいい、と思いますよね?


ところが、亜鉛とは異なり、経口摂取では、成長ホルモンの分泌促進につながるような研究や文献は見当たらないとのこと。そのため同研究所では、「子供が飲むサプリメントに、アルギニンを使用することは推奨できない」としており、日本内分泌学会http://square.umin.ac.jp/endocrine/seicho_hormone/でもこの点を強調しています。


問題は血中濃度?

ただ、アルギニンを経口摂取すること自体が、どういう場合にも無意味と言うわけではないのです。疾患によっては、症状改善が示唆されています。狭心症末梢血管疾患間質性膀胱炎などです。血管内皮細胞の機能改善について、静脈注射のみならず経口投与で効果を示したという実験報告もあります。


なお、アルギニンはアミノ酸ですから、経口摂取した後、小腸でそのまま吸収され、毛細血管に入ります。例えばこれがタンパク質であれば、経口摂取しても消化作用でたくさんのアミノ酸に分解されてしまうので、タンパク質固有の性質は失われますが、その心配はいらないはずです。


じゃあ、何が静脈への点滴と違うのか…? 考えられるのは量の問題です。


成長ホルモン刺激分泌検査では、点滴によって静脈に直接注入されるアルギニンは、体重1㎏あたり500㎎にも上ります。例えば体重20kgなら10g、60㎏なら30gです。これで成長ホルモンの分泌を示すIGF-1の値が一定以上になれば、正常と判断されます。それに対し、一般的に多く出回っているサプリメントは、1日分あたりのアルギニン含有量が500~2500㎎です。すべてが血中に入ると見積もっても(それも難しいのかもしれませんが)、体重60㎏の大人では点滴の60分の1~12分の1の量にしかなりません。


しかも、点滴の場合は、30分程度で一気に上記の量が血中に入ってきます。血中濃度が一気に跳ね上がる、ということです。それに反応して成長ホルモンが出る(成長ホルモンの分泌を抑えるホルモンが抑制される)ことを考えれば、経口摂取で摂取する何十分の1の量のアルギニンだけでは、血中濃度が充分でない可能性があります。


サプリは費用に見合わない?

だったら、ますます、サプリメントの方が、効率よくたくさんアルギニンを摂取できそうですよね。子供では「推奨できない」とされていますが、大人については言及されていません。


ただ、経口摂取の副作用として、腹痛、鼓腸、下痢、痛風が報告されています。アレルギー体質や喘息、肝硬変の患者は特に注意が必要とされ、心筋梗塞の既往歴がある場合はサプリとしての使用を避けることも、国立健康・栄養研究所の情報サイトで明言されています。食べ物から摂るのと違ってサプリは簡単に過剰に摂取できてしまうので、子供でなくても使用は慎重に検討し、容量はきちんと守らねばなりません。サプリだからと、たくさん摂れるものではないのです。


しかも、サプリは効果が未確認なのに、それなりのコストもかかります。例えば、大学病院の売店で売られていたドリンクタイプのサプリ(125ml)は、アルギニン2500㎎と亜鉛10㎎が入っています。サプリとしては悪くない量ですが、1本あたりの定価は約200円。毎日1本飲むとして、月に約6000円です。効果が確実に期待できるなら、ちょっとした嗜好品を我慢すれば、なんとか浮かせられる金額ではあります。ただ、効果が未確認となると、決して安くはないですよね。


もちろんサプリメントの利点としては、食事とは違って一定量を確実に摂取できることが挙げられます。しかしサプリでなくても、豚肉や牛肉の赤身部分や鶏肉、エビ、イワシ、貝柱などを、それぞれ100~130g程度食べれば、実は同じく約2500㎎のアルギニンが摂れます。これくらいの量であれば、普通の食事でも食べていますよね(吸収の程度は分かりませんが)。


ですから、食事に何らかの制限がない限り、特に腎機能に問題があるなどしてタンパク質の摂取を控えているといった事情がなければ、アルギニンを食事から摂ろうとするのと、サプリを利用するのとで、大きな差は生じないかもしれません。違うとすれば、タンパク質として摂取すると消化が必要になり、その分、アルギニンの血中濃度の上昇も緩やかになってしまうと考えられます。ただ、元よりサプリで2500㎎摂ったところで、成長ホルモン分泌刺激検査のようにはいかないわけですから、その点も問題にならないでしょう(あるいは、通常の食事に加えてサプリを一緒に利用するなら、多少、血中値の上昇に役立つかもしれませんが)。


肉や魚と、キュウリやメロンも一緒に食べよう

では、摂取源が食事にしてもサプリメントにしても、どうにかして効果的にアルギニンの血中濃度を上げられないものでしょうか。そこで注目されているのが、シトルリンというアミノ酸です。


アルギニンとシトルリンを組み合わせて摂取する事で、それぞれを単独で摂取した場合に比べて血中アルギニン濃度を急激に上昇させる効果も、名古屋大学と協和発酵バイオの共同研究の結果として報告されています。

(グラフ) アルギニンとシトルリンの摂取実験

出典:協和発酵バイオ健康成分研究所


フランスの報告でも、健常男性8名 (平均27.6±1.5歳、フランス) にシトルリンを投与したところ、8時間以内に血中アルギニン値が投与前に比較して増加したとのことですが、成長ホルモンの分泌は上昇しなかったとのこと。


シトルリンは、タンパク質中には通常存在しませんが、体内ではアルギニンから作られ、代謝されることでNOを生じることが分かっています。私見ですが、シトルリンをアルギニンと一緒に摂取することでアルギニン濃度が急上昇したのは、通常であれば摂取したアルギニンの一部から速やかにシトルリンが作られるために、アルギニンの血中値は緩やかに上昇するところ、両者を同時に摂取すれば、シトルリン合成に回っていた分のアルギニンが急速に血中値を上げる、ということかもしれません。


ただ、どの程度摂取すればいいのか、摂取すればしただけ効果が上がるのか、どれだけ摂っても副作用がないのか、といったことについて、一般化できるほどに充分な有効性・安全性のデータは示されていません。ですからやはり、サプリに頼るだけの理由はまだない、と言うべきでしょうか。


実はシトルリンは、ウリ科の果実に多く含まれていることが分かっています。

(表) シトルリン含有量

出典:協和発酵バイオ健康成分研究所


キュウリなんて90%は水分、なんていう話も聞いたことがありますが、栄養がないわけではないんですね。


というわけで、成長ホルモン分泌を促す食事としては、亜鉛を含む魚介類や肉類と、キュウリやメロンなどのウリ科の果実を一緒に食べるようにする、というのがやはり王道のようです。サプリメントは、それだけで即効的な効果を期待するのでなく、忙しくてバランスのよい食事が全くとれない、と言った時のみ、あくまで補助的な意味で、容量を必ず守って利用するようにしましょう。

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