子どものかかりつけ医を探せ! ~吹田編⑤

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2017年04月21日 13:15

■子どものかかりつけ医を探せ! シリーズ 吹田編     

保健師が訪問時に「どこのクリニックでもスタッフさんが予防接種の要領を分かっておられるので、受ける順番やスケジュールはクリニックと相談して決めていったらいいですよ。受けると決めたら、まずは電話してみてください」というようなことを言っていたので、まずは電話してみることにした。

Aクリニックに電話し、子どもが2か月になるため予防接種を受けたいと告げた。4種類の同時接種を受けたいと言うと「少々お待ちください」と、あちらで相談している様子が伝わってきた。

あれ、同時接種ダメなのかな? 小児科医の間ではだいぶ広まってきていると聞いていたけど。

しばらく後、電話口に戻ってきた受付の方から「申し訳ないのですが、当院では同時接種はせず、一度に2本までということになっています。それでもよいでしょうか」と言われた。

えー、そうなんだ。まあ、そういう考え方の先生なのだろう・・・。でも2本って、どういう基準なんだろう。

私は「もし相性が合わなければ変えたらいい」という子育てサロンの母親の言葉も思い出し、「分かりました。それでは2種類お願いします」と言って、ヒブと肺炎球菌の予約をした。


そして予防接種当日。

その日、私は体調が悪く、友人が付き添って一緒に来てくれていた。

受付に入ると、子どもはほとんどおらず、高齢者が多かったことを覚えている。受付の方は優しく、待合室も明るい雰囲気だった。

よかった、いい感じ・・・。

息子の名前が呼ばれたので、抱きかかえて診察室に入る。初めての予防接種なので、私もとても緊張していた。自分の注射もイヤだが、生まれて2か月の子どもに針を刺されるというのは、予防接種の必要性を頭で分かっていても、やはり気持ちのいいものではない。

診察室に通され、看護師から診察用のベッドに息子を寝かせるよう言われたので、その通りにする。しばらくして院長の女医がベッドサイドに現れ、舌を鳴らして子どもの注意を引き付けながら診察をする。

この人も母親だったのかな。やっぱり女医だと心強いかも…。

子どもの診察は特に問題ない様子。そして院長は看護師に予防接種を指示した。

え? 先生が打ってくれるわけじゃないんだ。

私は知人の小児科医が「予防接種は自分で打つようにしている」と話していたのが印象に残っていた。その理由は失念したが、彼なりのポリシーがあり、子どもを、診療や予防接種を大切に思っているからこそそうしているのだという話だった。私はそれを聞いたときに、それなら予防接種は自分ですると考える主治医がいいなと思っていたし、子どもの予防接種は主治医が打ってくれるものだと思い込んでいた。

しかし、ここでは看護師が打つようだ。

まあ、考え方の違いはあるよな。

そして院長が私に4種の同時接種をしない理由について、「もし何か副作用があった時に、4種類だとどれが原因か追跡できないので、うちでは4種類の同時接種はしていません」と言った。

え? どういう意味? そもそも副反応の追跡ってそんなにはっきりできるものなの? 2種類なら追跡できるということ? 意味が分からないし、そういう理由で2種類にするという意味も、分からない。

私は院長の言葉を理解できなかったため、確かめたいと思った。

しかし、ここで色々質問したら面倒くさいモンスター母親だと思われそう、そう思われたくない、という思いが咄嗟に働いたのも事実。

色々考えているうちに看護師は着々と予防接種の準備を進めていた。

そして次の瞬間、衝撃の言葉を看護師が放ったのだ。


看護師はベッドに寝転がって笑っている息子を見ながら

「可哀そうに。これから何が起こるのかも知らないで」

と言ったのだ!!

私はあまりに驚いて動けなくなった。

ちょっと待って・・・、この看護師、何言ってるの・・・。

私は何か言いかけそうになったが、やはり「面倒な母親だと思われたくない」という思いの方が勝ってしまい、そのまま動けずにいた。

そして、看護師は息子の腕に予防接種をした。

息子は初めての予防接種を受けて、1,2秒後に顔を真っ赤にして大泣きを始めた。

痛いよね、痛いよね、と息子を思いつつも、それにしても、今の「可哀そうに」とか、「これから何が起こるのかも知らないで」って言葉は何なんだろう!? と私の頭は混乱していた。

「もう終わりなので、受付でお待ちください」と看護師に言われた。

大泣きしている息子を抱きかかえ、服を着させて、診察室を出た。

院長と顔を合わせることはなかった。


待ってくれていた友人が「泣き声が聞こえたよ~」と声をかけてくれた。私は友人のところに戻れてほっとしながら、「大変だった」というようなことを言ったと思う。

そしてクリニックを出て、帰路についた。


帰宅後、ふつふつと様々な思いが湧いてきた。

院長の同時接種についての考え方についても疑問だったが、それより衝撃だったのが、看護師の「可哀そうに」という言葉だった。

どの母親も、予防接種の必要性を頭で理解していても、自分の子どもに針を刺されることは感覚的に嫌なものだと思う。子どもは痛くて大泣きするし、嫌がるし、受けなくてすむならその方がいいに決まっている。だから母親は多分、どこかで少なからず子どもに対して「可哀そうに」と思っていると思う。それでも、今後かかる可能性のある致命的な病気を避けるために、自分の感情を抑えて予防接種を受けさせるのだ。「可哀そうなんじゃない。予防接種は、親からの子どもの未来へのプレゼントなんだ」と。

そうやって、沸き起こる感情的なモヤモヤを乗り越えて、産後の体調も育児も大変な中で一生懸命に医療機関を探し、いざ初めての予防接種だと勇気と緊張を抱えてやってくるというのに、そこでかけられる言葉が「可哀そうに」では、勇気も何も一気に萎えてしまうではないか。

これを聞いた時に、「やっぱり予防接種って可哀そうなことなんだ! やめたほうがいいんだ!」と思い直す母親がいたら、どう責任をとるんだろう。もしくは、罪悪感にさいなまれ、「痛いことをしてごめんなさい」と思う母親だっているかもしれない。

おまけに「これから何が起こるのかも知らないで」って、魔女が子どもを生贄にでもするようなイメージが湧いてしまう。この看護師は、よっぽど予防接種が恐ろしく、痛いものだと思っているのだろうか。どうしてこんな脅しのような言葉を赤子に投げかけるのだろうか。子どもには言葉は通じないと思っているのだろうか?

この看護師は、予防接種の重要性と、母親の気持ちを一体どう考えているのだろうか。


この時点で、もうこのクリニックに行くのはやめようと思った。

院長の考え方もよく分からないが、確かめる気も起らない。そもそも予防接種を受ける子どもに「可哀そうに」と声をかける看護師がいるクリニックには、もう二度と足を運びたくない。


こうして、初めての子どものクリニック選びは、失敗に終わった。


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