子どものかかりつけ医を探せ! ~吹田編⑥

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2017年04月24日 12:04

■子どものかかりつけ医を探せ! シリーズ 吹田編      

前回は書きながら当時のことをまざまざと思い出したため、ちょっとエキサイトしてしまった。

トンデモ医療機関をディスるのが目的のブログではなく、あくまで一般市民がかかりつけ医を探すことの大変さを綴るものなので、前回の経験を踏まえて思うことを書いておきたい。

結局トンデモクリニックにかかることになってしまったわけだが、なぜそうなったか。

ひとえに、情報がなかったことに尽きる。

そのクリニックにした決め手は、子育て中の母親の意見とホームページ上の優し気な文言だった。当時、2か月の子どもを抱えて産後うつに陥っていた私は、まず同じ立場にある母親の集まる場に出かけ、「心強い」「安心」と感じる意見を選んだ。具体的なクリニック名も出され勧められたが、それよりも、「何かあった時に駆け込める」という安心感の方を選んだ。それは、私が子どもの育児に昼夜問わず不安を抱えていたからだと思う。遠く離れた名医より、近くのかかりやすい医師の方がいざとなった時に心強いと感じたのだ。

そしてその意見を元に近隣のクリニックを挙げ、ホームページを見て、そこで「心強い」「安心」と感じさせてくれる文言を載せているクリニックを選んだ。今思えば、医療機関のホームページづくりなんて、業者の方にある程度のひな型があるし、文言までこだわって自分ですべて書くという医師もいるが、業者に任せてしまうという医師もいるだろう。これまで医療業界にいて、そんなことは十分分かっていたつもりだったが、その時はそういうことを忘れていたというより、そこに目をつぶりたいという気持ちの方が大きく働いたような気がする。

なんとなくいい感じのするクリニックのホームページがあり、優し気な言葉が並んでいる。悪い気はしない。ほかのクリニックはホームページがなかったり、あっても小児科には強くなさそうだ、それならここを選んだ方が楽なのではないか。このホームページにケチをつけようとすればいくらでもつけられるが、そうすればほかの材料で比較しなければいけない。しかしその材料がない。それなら雰囲気のいいホームページのあるクリニックでいいのではないか。雰囲気のいいホームページをつくろう、というぐらいの思いはあるのだろうから。

その時の頭の中は、こういう流れだった気がする。

母親の言葉とホームページで決めた、というより、ほかに比較材料がないから、それぐらい漠然としたものでしか選べなかったということだ。

どう見ても、こんなに情報が少ない中で、自分のかかりたい医師とまともに出会えるとは思えない。

もし出会えたら、相当幸運だ。

馴染みのある地域で知り合いも多ければ、いろんな口コミを聞くことができるから、もっと探しやすいと思う。しかし、新しい地域で情報のない中でかかりつけ医を探すとしたら、今回の私の状況と、そう大差ないのではないか。私の場合は子育てサロンに出かけられたが、それすらできず、医療機関一覧表の中から漠然と決める(決めなければいけない)人もいるだろう。

もう少し他の、しっかりした情報が欲しい。

その地域に馴染みがあろうがなかろうが、どこにいても誰であっても、簡単に得られる情報が。

しかし医療機関の広告規制が阻んでいてそうはいかないのが、私が経験した現実だ。

国が進める地域包括ケアの要はかかりつけ医だ。地域包括ケアの話は、かかりつけ医がいることが大前提だし、いない人は話にならないような感じさえする。

かかりつけ医を選びたくても選べない。

こんな現実をそのままにして、地域包括ケアなどできるのだろうか? 形の上ではできるかもしれないが、市民の心の中には「もしかしたらほかにもっといい先生が近くにいるかもしれないのに…」というモヤモヤが渦巻いたままかもしれない。それで、看取りまで行われるとしたら…?


国がこの大事な部分をすっ飛ばしているのは、現状が何とかなっているからだと思う。
いい医師だろうが、悪徳医師だろうが、望む医療だろうがそうでなかろうが、とりあえず地域のどこかに医師はいるわけだから、そこに行けば、相性どうあれ、表面上はかかりつけ医ということにできる。「こんな主治医にかかりたい。こんな医療を受けたい」という気持ちの部分はとりあえず無視すればいい。本当にそう思うなら、ある程度の経済力と体力、サポートする人がいるなら、勝手に変えるだろうから。それがないなら我慢しろ、といった辺りではないか。

結局は弱者にツケ回しされているのではないかと思う。

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