日本でも大人気の除草剤 実は農家を疲弊させる?!

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2017年07月18日 07:49

去る7月7日、米カリフォルニア州では、同国のグローバルな農薬・種子企業モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」の有効成分「グリホサート」が、正式に発がん性物質リストに加えられました。前回の経緯の確認に引き続き、今回は、同剤の普及が私たちの生活と環境に与える影響について見ておきたいと思います。

グリホサートで枯れない遺伝子組み換え作物


前回も確認した通り、グリホサートは、あらゆる植物を根から完全に枯らす作用があります。では、それがもし畑の雑草にも使えたら…農家にとっては毎年あるいは一年中の悩みの種を、とても簡単にラクに解消できることになりますよね。ただ、それは一見あり得ないこと。なぜなら、“あらゆる植物”に効果がある薬剤ですから、当然、雑草だけでなく当の野菜や穀物まで枯らしてしまうに違いない、はずなのです…。


しかしながら、モンサント社のホームページにはこんな説明が…(!) 

農耕地用除草剤
ラウンドアップ農耕地用除草剤やその他の製品は、農地の雑草を持続的かつ効果的に防除するために利用されています。ラウンドアップ・レディー作物に使用することで、生産者は燃料を節約し、農地の耕起を減らし、除草剤の使用量を削減することができます。


なにやら「ラウンドアップ・レディー作物」というものに使えばよい、とのこと。


初めて聞いたので、同社ホームページその他を調べたところ、以下のことが分かりました。

●ラウンドアップ・レディー作物(Roundup Ready®作物)とは、モンサント社の遺伝子組み換え技術によって生み出されたラウンドアップ(グリホサート)耐性の作物である。1996年にラウンドアップ耐性大豆が開発されたのが最初。
http://web.mit.edu/demoscience/Monsanto/about.html


●グリホサート耐性“製品”(作物の種子)は次の通り。

・アルファルファ
Genuity® Roundup Ready® Alfalfa

・キャノーラ(菜種)
Roundup Ready® Canola

・トウモロコシ6種
Genuity® DroughtGard® Hybrids
Genuity® SmartStax® RIB Complete®
Genuity® VT Triple PRO® RIB Complete®
Genuity® VT Double PRO® RIB Complete®
Genuity® VT Double PRO®
Genuity® VT Triple PRO®

・綿花2種
Roundup Ready® Flex
Bollgard II® with Roundup Ready® Flex

・大豆
Roundup Ready 2 Yield® Soybean

・てんさい
Genuity® Roundup Ready®
※ラウンドアップ耐性小麦は開発中。
http://www.monsantoglobal.com/global/jp/products/pages/agricultural-seeds.aspx


●モンサント社は、グリホサート耐性作物は、農家に雑草コントロールの負担軽減という恩恵をもたらしたとしている。

例)グリホサート耐性てんさいについての記述(引用):
2008年以前、米国とカナダの生産者はいくつかの異なる除草剤を使って雑草を防除し、テンサイの収量を維持していました。その後、モンサント・カンパニーがGenuity® Roundup Ready®テンサイの提供を開始したことで、テンサイ生産者はRoundup®ブランドの農耕地用除草剤を用いて広範囲な雑草を防除できるようになり、雑草の害を減少させ、他の除草剤の利用を減らして栽培できるようになりました。このため、ラウンドアップ・レディー・テンサイは、史上最も急速に普及した遺伝子組換え作物となりました。


なるほど、なるほど・・・。


実際、このラウンドアップ(グリホサート)耐性作物が導入された1996年以降、グリホサートの使用量は15倍に跳ね上がりました。1974年から2014年までの40年間に米国で使用された全グリホサートは、その3分の2が最後の10年間に使われ、また世界での使用料の72%を占めていたことが、研究で明らかになっています。
https://enveurope.springeropen.com/articles/10.1186/s12302-016-0070-0


さて、私はここまで調べてきて、とても複雑な気持ちになりました。一消費者として、そのような“特殊な”作物を口にするのは、安全性がある程度示されている、あるいは危険性がある程度しっかり否定されているとしても、気味が悪くて仕方がない、というのが正直な感想です。しかし、確かにラウンドアップとラウンドアップ耐性作物を組み合わせれば、農家の手間は大幅に削減されるに違いありません。農家の立場に置かれれば、両者の登場は大歓迎すべき出来事だったのだろう、と思いました。


「ターミネーター種子」を買わされ続ける農家


ところが、そんなに世の中甘くないようです。モンサント社は当然、営利企業であって、純粋に農家のためだけに、ボランティアで商品開発をしているわけではありません。そこにはきちんと計算がありました・・・。


※かつて、農家は、前年に収穫した作物の中で出来の良いものから種子を取り、あるいは穀物であれば出来のよいものを種子として、翌年に使用します。そうして毎年、再生産を繰り返していくわけですから、そこに新たなコストはかかりませんでした。しかしながら近年、農家は品種改良された種子を購入して栽培するのが一般的になっています(特に日本などの先進国ではそれが普通です)。通常、交配された種子は初代(F1)はいいとこどりをして生まれてくるために優良種となりますが、F1同士を掛け合わせても良い性質が現れるとは限りません。そこで農家は毎年種子を購入する必要があるのです。※

※この段落は2017年8月3日に修正しました。


ラウンドアップ耐性作物は、その代表例と言われます。ラウンドアップを使用している農家は、毎年、モンサント社(あるいはライセンス料を払って種子を作り、販売している会社)から、ラウンドアップ耐性作物の種を買い続けなければなりません。そうやって一たび除草剤とその耐性作物を抱き合わせのようにして購入させてしまえば、それから半永久的に農家はその縛りから逃れられなくなり、毎年、両者を買い続けなければならなくなります。モンサント社が潤い続ける仕組みがそこで確立し、その面積は拡がっていく一方というわけです。


「でも、それでもなお農家の利益につながるならいいじゃない」という意見もあるでしょう。ところが英国土壌協会(イギリスのオーガニック認証機関)は、以下のように指摘しています。

●遺伝子組み換え作物の業界は数十年にわたり、彼らの技術によって収穫増と栄養価の向上が図れる、国際的な飢餓さえ解決できる、と約束してきた。しかし実際には、一例たりとも、商業的に実行可能な例を示せていない。

●病虫害耐性や、干ばつ、洪水、塩害への耐久性については、遺伝子組み換え以外の技術で、より迅速かつ費用効率よく実現可能である。遺伝子組み換え技術は、そこに近づいてさえいない。

●モンサント社のグリホサートは、耐性作物(ラウンドアップ・レディーシリーズ)の導入以来うなぎ上りで、世界一の除草剤となったが、一方で耐性作物は「スーパー雑草」と呼ばれるグリホサート抵抗性雑草を生み出し、その高額な”軍拡競争“に農家は足元を取られ、結局のところ勝者は化学企業だけとなっている。

●一たび野に放たれた遺伝子組み換え(グリホサート耐性)作物は、決してじっと大人しくしていてはくれず、非遺伝子組み換え農家の作物を汚染し、彼らに経済損失をもたらすことになる。


「スーパー雑草」対策の見通し立たず


さらっと「スーパー雑草」という言葉が出てきました。抗生物質の濫用による耐性菌や、タミフル濫用による耐性インフルエンザウイルスと同様に、既にラウンドアップの多用から生まれたグリホサート抵抗性の雑草が、実はラウンドアップ耐性作物が導入された当初から問題になっているのです。つまり最初に報告されたのが1996年、以来これまでに、日本を含む世界各国で、37種類の抵抗性雑草が確認されています。
http://www.weedscience.org/Summary/MOA.aspx?MOAID=12


米オーガニックセンターの2009年11月の報告では、1996年から2008年までの13年間に、遺伝子組み換え作物の72%が除草剤耐性作物となりました。企業側は当初、遺伝子組み換え作物の農薬使用量を減らすと主張し、宣伝していましたが、その通りに進んだのは大目に見ても最初の数年だけ、微減にとどまりました。抵抗性雑草の出現で、グリホサートの単位あたり使用量は、その後年々増えて行ったのです(グラフ:主要3種=トウモロコシ、綿実、大豆)。効かないから増やす、という悪循環が生じているのが分かります。
https://www.organic-center.org/reportfiles/13Years20091126_ExSumFrontMatter.pdf


ラウンドアップ耐性作物の収穫量が期待ほどではなく、一方で、抵抗性雑草の防除は困難で難しくコストもかかるため、それによって成長を妨げられてさらに収穫量は減少してしまい、農家はコスト回収しきれないのですね。


これに対し、モンサント社では、「『スーパー雑草』のどこが『スーパー』なのか」「抵抗性は今に始まった問題ではない」とした上で、他の除草剤企業と共同で調査を行い、対策をウェブで公表しています。そこでは、一般的なリスク事項として「同系除草剤の継続使用」「同じ除草対策に依存した単一作物の継続栽培」「薬剤以外の除草対策の欠如」などを確認した上で、「統合的雑草管理」(薬剤使用、焼畑や機械による除草、天敵となる虫や病原体による駆除)や、「除草剤の混合使用やローテーション」(複数の作用機序の薬剤を混ぜたり、順々に使用することで、1種類を長期使い続けるのを避ける)などが提案されていますが、その程度では、素人目にも決定打に欠けるのは否めません。
http://hracglobal.com/prevention-management/best-management-practices


それどころか、除草剤の混合使用は、抵抗性雑草の抵抗性の幅を広げるだけだとの指摘もあります。
http://www.the-scientist.com/?articles.view/articleNo/32108/title/Revenge-of-the-Weeds/


とはいえ、今のところEPAも、以下のような対処を「最善の道」として奨励しているにとどまっています。
https://www.epa.gov/pesticide-registration/slowing-and-combating-pest-resistance-pesticides#recommendations

●穀物を輪作とし、同種の除草剤を連続して使用する量を減らす。

●病原体や害虫を増やすような栄養源を減らす。

●農薬を使用する前に、できれば病害虫サンプルに科学的に実証された方法を導入し、穀物へのダメージについての経済的な見積もりを出す。

●病害虫が最も影響を受けやすいタイミングを見計らって薬剤を投入する。(すなわち、害虫の出現を待つか、病原体が繁殖しやすそうな天候になったら予防殺菌剤を投入する)

●農薬使用の前後に偵察を行い、正しく病原体を見極め、また効果的な病害虫制御が行われているか判断する。


前回見たように、種子・除草剤企業の宣伝を信じてグリホサートとその耐性作物を購入して使い始めた農家は、以降、毎シーズンセットで新たに購入し続けなければならないループにはまります。そこにこの「スーパー雑草」が襲い掛かり、思い描いていたほどの収穫は得られず、それどころかコストばかりが膨らんでいく・・・想像しても恐ろしいですが、現実に苦しんでいる人たちが大勢いるのです。


と、他人事のように言っていますが、日本でもつい先日、日本の農業や農作物の在り方を変えかねない法案が、多くの人が違うところに関心を寄せている間に衆議院の農林水産委員会で可決してしまいました。次回はそこを確認したいと思います。

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