改めて考えよう。がんて何?
今回の特集では、皆さんが「がん」と実際に出合うであろう流れに沿って、説明していきたいと思います。最初は検査です。
がんの検査は、一般にX線やMRIなどの「画像検査」、あるいは直接目視する「内視鏡検査」などで大まかな見当をつけておき、最終的には細胞を採り出して顕微鏡で眺める「病理検査」を行って確定します。確定後は、がんのタイプと進行度を検討し、治療方針を定めます。
なぜこのような流れで検査を行うのかは、がん細胞が持っている特異な性質を知れば合点がいきます。以下のようなことです。
■自律的に成長する
■浸潤、転移する
少し言葉が抽象的ですので、説明します。
まず、最初の「自律的に成長」は、頼んでもいないのに体の栄養を使って勝手に増殖しとどまるところを知らない、ということです。
人間の体には約60兆個の細胞があります。それらが生まれてから何度も分裂をしているうちに遺伝子のコピーミスが起き、増殖を制御する機構の働かないものが現れてしまったのです。
コピーミス自体は、誰でも毎日何千何万という単位で起こしていますが、大抵は細胞が死んでしまったり免疫に退治されたりして大事に至りません。しかし1個でも免疫をすり抜けて生き残ると、やがてがんとなって出現します。年を取ると、それだけコピーミスの回数が増え、また免疫も弱ってくるので、発症率が上がるというわけです。
がん細胞が栄養を奪い取る結果、患者はやせ衰え体力を失います(「悪液質」と言います)。また生存に必須な臓器の細胞と入れ替わったり圧迫したりするので、やがて臓器不全をひき起こします。
話を戻しますと、(固形)がんは、画像検査をした時、本来あるはずのない部分に細胞の塊の「影」が写ることになります。あるいは内視鏡検査をした時に、出っ張ったり、凹んだりしていることになります。このがん細胞の塊が腫瘍です。
ちなみに、腫瘍細胞がその場(原発巣と言います)にとどまっており、臓器外に惨みだしたり千切れて移動したり(この現象が浸潤・転移です)する性質をもたない場合、「がん」とは呼ばす「良性腫瘍」と言います。ただし、良性といっても場所によっては命に関わります。
その場にとどまる細胞なのか、浸潤・転移する細胞なのか見極めるには、問題の細胞とその周囲を採取して、核分裂している細胞がどの程度あるか、周辺との境界が明確かなどを観察します。これが「病理検査」です。最近の内視鏡検査は、検査と同時に細胞採取や腫瘍摘出まで行ってしまうこともあります。
がんの種類によっては開腹しないと病理検査できないことがあり、その場合は画像だけで診断を決定します。画像検査の中にはX線(CT含む)、MRI、PETといろいろな方法がありますが、それぞれに長所短所があり、これだけ受けていれば見逃しはないというようなものは、残念ながらありません。