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改めて考えよう。がんて何?

放っておいたらいけないの?

 がんと診断された場合、冒頭は真っ白になって、医師に言われるまま、すぐ治療スケジュールを立てる場合も多いと思います。しかし、一歩立ち止まって考えてみましょう。診断を受けるまで気づかなかったということは、それまで特に実害はなかったということですよね。それなのに、なぜすぐに治療しないといけないのでしょうか。
 もちろん、放置した方がよいなどと言うつもりはありません。なぜすぐ治療した方がよいのか、その理由を再確認しましょうということです。
 最初にコピーミスを起こした1個のがん細胞が、肉眼で確認できる直径1cmほどの腫瘍に育つまで、大体10年かかると言われています。その直径1cmの腫瘍の中には、がん細胞がおよそ10億個も含まれています。
 このような腫瘍は、免疫が排除できなかったからそこまで育ってしまったわけで、医学的治療なしに治る確率は限りなくゼロに近いです。また、がん細胞は1個が2個、2個が4個と倍々で増えます(コラム参照)。1cmになってから命に関わる大きさになるまで、数年しかかかりません。すぐに症状が出てきますし、転移する確率も上がります。
 この「転移」というのがよく勘違いされる点ですが、がん細胞が単純に他の臓器へ移動しただけでは転移とは言いません。移動先の臓器に根を下ろし、再び肉眼で見えるところまで育って初めて「転移」です。
 ちなみに固形がんの移動する経路は、直接浸潤、血管経由、リンパ管経由の3通りがあります。一般に、がんは、原発巣に留まる「限局」→近くのリンパ節への「転移」→近くの臓器への「転移」→遠くの臓器への「転移」という段階を踏んで広がります。この段階を、がんごとに分けたのが「ステージ」(コラム参照)です。
 後で詳しく説明しますけれど、ステージ初期ならば根治をめざすことができるものも、ステージ後期には共存・延命へ目標を下げなければなりません。たいていの場合、自覚症状が出るのはステージ後期で、根治をめざすのが難しくなります。現実に治癒率もどんどん下がっていきます。
 治療開始は早ければ早いほどよいことになります。だから、「すぐに治療しましょう」と医師は言うわけです。
 ただし若干の例外はあるものの、治療開始が1ヵ月ほど遅れたからといって、状態が急激に悪くなるというものではありません。がん治療は始めたが最後、治療前の状態へ戻すのは不可能です。後悔しないよう、必要な情報を集め、よく考えてから治療を始めることをお勧めします。

3回分裂するとがんは倍になる。  腫瘍の大きさは、一般に長径の長さで表現します。腫瘍は、タテ・ヨコ・高さの3次元で成長しますので、腫瘍が倍の大きさになるということは、2×2×2=8と、がん細胞の数が8倍になったことを意味します。途中で死ぬ細胞がないとすると、分裂が3回行われれば腫瘍の大きさは倍になります。  一つ10ミクロン程度の細胞が、肉眼で確認できる1cmの腫瘍になるには、30回近い分裂が必要ですが、1cmまで育ったものは10回程度の分裂で10cmになってしまいます。
ステージ・部位によって治療法が異なります。  がんと一口に言っても、その発生した部位や進行の度合いによって性格がまったく異なり、対処法も変える必要があります。  一方、がんは、医療界が克服すべき大きな課題として世界中で研究が進められています。A治療法よりB治療法の方が成績が良いといった研究成果を世界中で共有するには、治療の前提となる進行度を共通の尺度で測らなければなりません。その共通の尺度が「ステージ」でIV期まであります。  初期のころは部位によってバラバラの基準ですが、遠隔転移していると、ほぼ共通してIV期として扱われます。

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