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谷村新司さんから言葉の贈り物  「忘れないもの」~ハート・リング通信㉔

ハート・リング運動専務理事 早田雅美
12月6日に開催する予定の認知症フォーラムで、シンガーソングライターの谷村詩織さんが、「ハート・リング運動」応援ライブを行ってくださる予定です。今回、お父様の谷村新司さんからも、認知症やその不安を抱える皆さんへの応援メッセージをいただくことができました。
 「忘れてしまうものは忘れていい」

 それは常々私が思っていることです。歳を重ねると共に人は自然にそうなってゆく、それでいいと思うのです。身体が万全だったあの頃と決して比べない、それが大切な心の持ち方だと思います。

 いろんなことを忘れてゆく中で決して消えないものがあります。それは「歌」です。子どもの頃に覚えた言葉とメロディーは「歌」となって細胞の中に生き続けているのです。

 私は今、東京音楽大学で若い生徒たちに、「音楽と言葉の力」を伝える授業を続けています。一つのメロディーに言葉が合わさった時に、それは「歌」という不思議な力を持ったものに変化して、その歌は聴いた瞬間にすべての記憶を甦らせてくれるのです。だからこそ言葉を「紡つむぐ」人には「心がけ」が必要だと感じています。歌を聴いてくれる人がどう感じるか、を思い描きながら歌にしてゆく、それが創る人・・・の礼儀だと思っています。

 「ありがとう」は、有難いことへの感謝の気持ち、「いただきます」は糧になってくれる食物たちのいのち・・・をいただくことへの感謝の気持ちを込めた言葉です。大切な言葉が持っているやさしい・・・・響きには「誰かを幸せにする力」が隠されています。

 そして音もまた大切な役割を持っています。「ソの音」は心臓を司り、「ラの音」は人間の声の音です。そして太陽と心臓は共に「ソの音」、宇宙と声は共に「ラの音」とつながっています。太陽と星々はソとラで出来ていて、それを「ソラ」=「空」と表現しているのは日本語だけなのです。

 美しい日本の言葉と美しいメロディーから生まれる日本語の「歌」には特別な力が宿っています。大好きだった歌に包まれているだけで、人は皆「幸せ」を感じることができるんですよね。声を合わせて一緒に歌うと、きっと不思議なことが起きて、とても素敵な時間になることでしょう。

 かつて車椅子の母の背中を見ながら、よく一緒に歌いました。歌っている時の母はいつも穏やかな表情をしていました。それは子どもの頃に見ていた優しい母の表情そのものでした。

 大切な人が好きだった歌を一緒に口ずさんでみませんか。
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