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全国の施設を訪問し、歌い続ける 谷村詩織さんが伝える音楽のチカラ~ハート・リング通信㉙

ハート・リング運動専務理事 早田雅美
昨年12月のハート・リングフォーラムで、認知症に悩む人たちへの応援に『共生』などを熱唱してくださった谷村詩織さん。谷村新司さんを父に持つ詩織さんは、18歳からシンガーソングライターとして活躍を開始、多忙な音楽活動の中「共鳴ライブ」という名前で、全国各地の障害者施設、老人施設、幼稚園などを訪問し、音楽を届けています。その訪問数がなんと既に170カ所を超えたそうです。
 「障害者施設に行った時、何かの原因があって、傷つき心を閉ざしてしまった方が最後には、帰らないで......とすがりついてくださったことがあったり、ホスピスでは、ぐったりとして歌が聞こえているかすら分からない感じの50代くらいの男性の患者さんが、歌い終わった後、目に涙をいっぱいためてくださり、看護師さんと驚いたりした経験もあります。そうした一つひとつの経験やお会いした方のお顔を思い出すと、音楽の持つ理屈ではないチカラを実感します」

 詩織さんを「共鳴ライブ」に向けたきっかけは、イギリス留学中の体験でした。
 「イギリスでは、音楽をやっている人が施設を回るということが決して珍しくありません。デビューの翌年、新潟県長岡市の障害者施設で歌う機会をいただき、『赤とんぼ』や『上を向いて歩こう』など誰でも知っている歌も、一曲一曲心を込めて歌いました。普段は全くお喋りをしないという方が、楽しそうに、懐かしそうに私の歌を聞いてくれていました。職員の方も含めて、その場にいたみんなとつながることができて......。そうした実感が、音楽をやっていて良かったという気持ちと、私自身にもエネルギーを与えてくれました」

 認知症があるために、自分の気持ちをうまく表現できないと、自分の世界に引きこもってしまう方がたくさんいます。最近では、回想療法、音楽療法を積極的に進める施設や医療機関もあると言います。認知症そのものは完治できなくても、例えば音楽というチカラが、毎日に元気や感動を伝えられることを共鳴ライブが示してくれています。

 NHKをはじめとするTV番組からテーマ曲や挿入曲を依頼され、新曲やアルバムをリリースするなど、詩織さんの音楽活動は広がる一方ですが、どの曲にも共鳴ライブに見える詩織さんの人を思いやる優しさが込められています。

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