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特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高齢化は悪いことではない 2周目の人生も緩やかに現役で

江崎 確かにそうした議論はよく聞きます。しかし問題は、客が減るかどうかを心配しているうちに、船が沈んでしまう可能性もあるということです。今後患者や要介護者が厚労省の想定通りに増え続け、これを現行の医療制度や介護制度のままで対応し、その追加費用をすべて消費税で賄うとした場合、消費税は20%を大きく超える水準になると言われています。消費税を8%から10%に引き上げることでも、あれだけ議論した挙句2年半先延ばししたばかりなのに、数年後に20%を超える消費税増税が受け容れられるとは思えません。そうすると欧州のように、一部の患者の保険適用を制限することになり、自動的に混合診療に移行せざるを得なくなります。

梅村 それはそうかもしれません。

江崎 医療機関では、3時間待ち3分診療と言われるように、患者が目の前に来た時だけしか診られず、次に病院に来るまでほとんどフォローができていません。本来、医療にとって「予防」は重要テーマなのですが、診療報酬が十分ではないこともあり、なかなか進まないのが実態です。

梅村 そうですね。

江崎 医師会の幹部の方々にお話をうかがってみると、現状の問題点については極めて正確に分析しておられます。ただ、全国の医療現場では日々の治療活動に精一杯で、現状をいかに維持するかに関心が向いてしまうため、どうしても当面の課題である椅子やテーブルの並べ替えの議論に終始してしまうともおっしゃっていました。

梅村 そうなんですか。

アートからサイエンスへ

江崎 現在、医師会の先生方と議論しているのは、できるだけ早い段階から医療サービスを提供しようということです。人は40歳を超えると何がしか健康上の問題が出てきます。しかし、法律で定められている特定健康診査を対象者の半分以下しか受診していません。仮にすべての未受診者が特定検診を受け、現状と同じ比率で有病者が見つかったと仮定すると、実に470万人近い方々が新たに病院に行かなければならないことになります。もちろん都会と田舎とでは状況が異なるという問題はあるにせよ、国全体で見たら、明らかに患者数は多過ぎる状況になります。

梅村 医療サービスがなくなるのではないかという心配はないということですね。

江崎 ただ、そのためには、医療関係者の方々にも、仕事の仕方を改めていただく必要があります。従来の医療は、担当医師の1人完結型のサービスでした。チーム医療という言葉はありますが、あくまで医師とそれを支えるサポート体制の話です。また、大きな病院では、疾患ごとに患者を振り分けて、医師は自分の専門領域のみを見るスタイルになっています。今後複数の疾患を持つ高齢の患者が増えてくると、複数の医師や医療機関の間で診療データを交換しながら、継続的に1人の患者をフォローする必要が出てきます。

梅村 それ、以前から言われているスタイルですが、なかなか進まないですよね。
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