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高齢化は悪いことではない 2周目の人生も緩やかに現役で

江崎 はい、分かります。

梅村 これまで杜氏は、生涯酒造りに取り組んでもせいぜい40回か50回しか日本酒を造れなかったのですね。ところが今は1年間で2千例くらいの試行ができるそうです。やり方を工夫すれば2千どころか多分無尽蔵に試行できるのです。そうすると、今までの人が40回か50回やって、「俺の経験上は屋根を藁にして......」とか言っていたものが、実は最善じゃありませんでしたね、ということが分かったりするのです。

江崎 そうなるでしょうね。

梅村 旧来の世界で生きてきて指導的立場になった方たちからしたら、正直ちょっと屈辱もあると思うんですよ。

江崎 それはあると思います。

梅村 職人さんだったら、そのプライドも大切にしてあげないといけない。だけど医療に関して言えば、人の命に関わることだから、国民とか受益者のことを考えて、そろそろそこを脱していかないといけないんじゃないかなと思いますね。それが、ヘルスケア産業ということの一つの概念になるのかなと思ったりもしました。

江崎 そうですね。地域包括ケアの話が出ましたけれど、厚労省からゲタを預けられた自治体も実際のところ何をしたらよいのか分かっていません。その辺りも医療サービスを見直すきっかけになるのではないかと考えています。

良い社会を次の世代へ

梅村 医療の実質をどこに置くかですよね。ちょっと違った話をしますと、僕はネット上にお墓を作ったらいいな、と思っているんですよ。

江崎 バーチャルなお墓ですか?

梅村 はい。ネット上のお墓に、生きている時のお祖父ちゃんの言葉とか映像とかこんなことをやったというのを全部入れておいて、IDを入れたらお祖父ちゃんが子や孫たちに言いたかったことが見られる。「シンドイ時はこうしたらいい」とか、後生へのアドバイスなども入れておくのです。

江崎 なるほど。

梅村 でも、これ多分、仏教界とか旧来の宗教の人たちは邪道だと言うでしょう。「お墓に行って、お花を活けて掃除して、先祖との交流が深まるんだ」と。言いたいことは分かるんです。でも、ウチの子どもとか今の人からすると、それがお墓に行かない原因になっている場合も少なくないんです。

江崎 おっしゃる通り。

梅村 本来、何のために墓参りに行くかと言ったら、自分のルーツを知って、自分の生き方を見つめ直す、ご先祖様に対して感謝する。これが原点なわけでしょ。その原点を大事にするんだったら、ネットでもいいじゃないかと思うんです。もちろん、実際に墓へ行きたい人は行ったらいいんですよ。

江崎 今のお話を聞いて、日本で初めてラジオで落語を流した話を思い出しました。

梅村 どんな話ですか?

江崎 昔、ある落語家がラジオで落語を流そうとした時、落語界の重鎮たちから大反対を受けたそうです。ラジオで落語が聴けるなら寄席に客が足を運ばなくなる、というのです。しかし、その落語家が破門を覚悟でゲリラ的にラジオで落語を流したら、翌日から寄席が満杯になったそうです。それまで落語を聴いたことのなかった人たちが、落語とはこんなに面白いものかと知り、本物を見たいと寄席に足を運んだそうです。
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